紙の本
外資系での生活を描いた好著
2001/03/07 18:01
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投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は東京大学法学部からソロモンブラザースに就職した草分け。バブルがまだ始まる前に大蔵省の最終面接をドタキャンして外資に走ることは、相当の勇気がいったというか、ほとんど馬鹿な選択だったはず、当時としては。しかしそれが結果として大正解。明神氏率いるソロモン軍団はバブルの日本をしゃぶり尽くし巨万の富を稼ぎ出しますがその過程が筆者の筆力によって余すところ無く描かれています。外資で働くとはどういうことなのか、その実体を普通の目線で描いていて読んでいる内にあなたも外資系勤務を疑似体験したような錯覚に陥ること請け合い。バブル期のムードが肩ひじ張ることなく素直に描けている好著。
紙の本
金融取引で利益を得るのはあなたではない
2000/11/01 17:33
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投稿者:ナリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは面白い。ソロモン・ブラザーズでトレーダーとして活躍した著者が、その内実を余すところなく描いた手記。投資銀行を通して、金融の現実を教えてくれる。そこにあるのは、「金を稼ぐのが善」という、無駄な飾りを捨て去った単純な命題なのだ。それに向かって、馬車馬の如く走り続けるトレーダーたち。ここまで、資本の論理に正直だとかえって気持ちが良い。
紙の本
投資銀行の高収益は幻想か?
2001/06/03 06:31
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投稿者:さとう - この投稿者のレビュー一覧を見る
東大自慢から始まる何とも嫌みな本である。全体的にも自慢話が多く鼻につくかもしれない。だが、彼が優秀なトレーダーであったことは概ね事実であろう。なぜなら、投資銀行は優秀でなければ10年間も勤め上げることは出来ないからだ。その彼が10年間の体験を綴ったのだから面白くないわけがない。上述した部分さえ我慢できるのならばぜひ一読してほしい。
紙の本
証券会社は金を増やしてあげる特殊な力はそもそも持っていない、だって。その理由はこの本を読まないと...
2000/10/21 11:19
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投稿者:katokt - この投稿者のレビュー一覧を見る
基本的な考え方として「信義を重んずる金融業」(おもわず(笑)って文字を探すよね)なんて言ってながら後半ではバクチ打ちだなんて自認している自己欺瞞(なつかしい言葉)が文体にも表れちゃっている所もあるけど、内容はライアーズポーカーの日本版で楽しめる。金融商品の説明も噛み砕いてわかりやすい例で説明してくれてるし。詳しくは
紙の本
1999/10/25
2000/10/26 00:19
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投稿者:日経ビジネス - この投稿者のレビュー一覧を見る
東京大学法学部在学中に国家公務員上級試験に合格しながら、卒業と同時に米国投資銀行ソロモン・ブラザーズ・アジア証券(現日興ソロモン・スミス・バーニー証券)に入社した男がいた。その後96年までの約10年にわたり、彼は「ウォール街の王」とまで呼ばれた同社のトップトレーダーの1人として活躍。本書は、世界に先駆け金融市場を創造してきた米国投資銀行の最前線で巨万の富を稼ぎ出した著者の手記である。
伝説のトレーダー明神茂氏がアジア地区の最高経営責任者を務めるなど、日本にも地盤を築きつつあったソロモン・ブラザーズ。しかし、90年代半ばには金融再編の波に呑み込まれ「最強の証券会社」から一転してシティグループの中の証券子会社の一部分に吸収されてしまう。著者は、同社が敢行した大量人員整理などについて「米国的ではない。米国人にとっても驚くべきことだった」と回顧する。そうした体験は、現在、岐路に立つ多くの日本企業にとって少なからずの教訓を含んでいるとも語る。
金融取引の実態もさることながら、今は職を離れ悠々自適の生活という著者のユニークな人生観も興味深い。
Copyright (c)1998-2000 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.
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★どこまで昔話なのか★『巨大投資銀行』を読んだ直後で理解しやすかったのかもしれないが、実体験に基づくだけに小説のようには上滑りせずに身に迫ってきた。新入社員研究の様子や同期入社の松本大を見る視線に、著者の思いがにじみ出ている。ひとまわり上の世代だが、80年代後半に新卒で外資系証券に行くだけの勇気は自分にはなかったろう。すでに終わった話が描かれているが、いまも外資はそれなりに高給取りだ。稼げる仕事が面白いのかは、本を読んだだけでは分からなかった。
追記>会社のカネで大ばくちを打ち、もうかれば巨額の報酬を得る。モラルハザードをどう防ぐのか以前から気になっていたが、ソロモンの仕組みは著者によると極めて明解。自分より凄腕のトレーダーが上にいて、彼に説明できないポジションは取れない。確かに原始的だが、最も効率がいい。限られた規模でしか通用しにくいが。
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アメリカ投資銀行で巨万の富を稼いだ日本人トレーダーの手記。著者は東大法学部を卒業と同時にソロモン・ブラザーズ・アジア証券に入社し、トップトレーダーとして最前線で巨万の富を稼ぎ出した。その弱肉強食の投資金融の世界を語る。
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古きよき(?)時代の投資銀行。
Trader出身者の物語。
結局最後少しものがなしかったように、
お金があるからHappyというのは幻想。
あればあるだけ無駄なものに使ってしまうんですよね
とはいえホントにもっとお金あったらいいのに
って思うけども。
時代はかわりましたねぇ
こんなにTraderがぶいぶい言わせられる会社も少なくなったのでは?
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87年から97年までソロモンブラザーズに在籍した著者が、そこで見聞きしたことや自身の仕事を回顧する本。
こういった、インサイダーが書いた金融本に期待することは次の2つ:
①その時間、その場所にいた個々の人間が、何を感じ、何を考え、結果何をした連中であったか、をトータルな雰囲気として伝えること。つまりは、個の描写。
②集団(デスク/部門/企業/市場...etc)が、どのような内的プロセスで動作し、どのような力学で相互作用した結果、何が起こったか、を、全体を俯瞰する形で伝えること。つまりは、システムの描写。
本書は、①に力点が置かれている。その上、一人称の視点が強い。
よって、80年代後半から90年代後半のソロモンブラザーズ(主に日本法人)のストックデリバティブのトレーディングデスクで、個がどのような在り様であったか、を知りたい人は、本書を手に取ると良い。但し、具体的なトレード手法やその機微、組織のダイナミズム、業界/市場の必然的変移、といった事柄に興味を持っている人は、恐らく肩すかしを喰らうので、本書を手に取ってはいけない。
個人的には、①の描写として本書に記されている内容 ―つまり、千姿万態の動物が跋扈するジャングルのような80年代のソロモンブラザーズと、日本の中小オーナー企業の在り様を、足して2で割ったような感じ― は特に新鮮味がなかった。
一方で、②に関する記述も非常に少ないので(記述が少ない理由は恐らく下記記すように、大して複雑なことをやっていないから)、特に得るものがなかった。
よって、☆3つ。
尚、一つだけ新鮮味があった事項があったので、下に記す:
・ソロモン日本法人のアーブ・デスクは、大儲けはしていたが、取引の中身自体は全然大したことしていなかった。裏を返せば、当時の日本市場は凄まじいミスプライスの温床であったということ。
20年ほど経った今だから「大したことやってない」と感じるのかもしれないが。80年代のソロモンは諸種の金融イノベーションを引っ提げ、単なるブローカーからぶっちぎりの収益性を誇る「ウォール街の帝王」へとのし上がっていた。その「帝王」の収益のうち、一時40%以上が、明神氏率いる日本のアービトラージ部門によるものだったと言われている。同じく日本市場を相手にしていた日系金融機関は、どうやってそのような高収益を上げていたのかさっぱり見当がつかず、明神氏を「兜町の大明神」と呼び、畏怖していたとされる。
これだけ聞くと、「さぞや物凄く複雑でスマートなトレードをしていたのだろうな」と思うが、やっていたことは滅茶苦茶単純:
①当時、日本企業はワラント/転換社債(以下CB)を、将来コストを無視して輪転機のように捉え、市場をワラントとCBでジャブジャブにしていた。株価というものは絶対に上がるものという根拠のない確信を持っていた日本の機関投資家がこれを買いまくった結果、市場価格が理論価格よりもはるかに低くなった。ソロモンは原資産をショートして値下がりリスクをヘッジしつつ、CB/ワラントを買いまくり、満期が近付くにつれて価格が原資産に近��くのを待ち、十分高くなったところで売りさばいていた。
②当時、日本の機関投資家は利回りが低い日本国債に飽き飽きしており、高利回りに飢えていた。そこで、金利スワップにより、保有していた日本国債の固定金利をLIBOR連動の変動金利と交換しまくるようになった。結果、LIBOR連動型社債の利回りが下がり、日本国債とほぼ同等になるという、ありえない状態が発生した。ソロモンは、やはり満期が近付くにつれてLIBOR連動型社債の価格が本来あるべき水準に戻ることを期待し、国債をロング、社債をショートし、スプレッドが予想通り広がるにつれてポジションを手仕舞っていった。
主にやっていたのは、この2つだけ。
今の基準で考えると、明神氏率いるアービトラージ部門がすごいというより、日本市場が頭おかしいだけに見える。が、それは金融理論が当時よりはるかに浸透し、こんな単純な戦略では稼げない程度には市場が効率的になったから言えることなのだろう。
実際、本書には記述されていないが(全てが巧く行っていた90年代前半までの記述しかない^^;)、90年代中盤以降、案の定、上記の戦略が他社に真似された結果、ミスプライスは劇的に減り、収益機会が急速に消滅していった。さらには、株式持合いのため、市場で手に入るCB/ワラントの原資産が少ないにも関わらず各種金融機関がこれをダイナミックヘッジに利用したため、ボラティリティが劇的に低下しCB/ワラントの価値が急速に低下した。結果、裁定のために買ったCB/ワラントの価格は上がるどころか下がっていき、これまで利益を上げていたのと同じペースで損失を吐き出すようになった。
結局、98年に、合併したciti内部における組織改変の波に飲み込まれ、部門が閉鎖される頃には、これまで稼いだ利益の1/4を累積で吐き出していた。
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ソロモン・ブラザーズに10年間在籍していたトレーダーの回想録。一世を風靡したトレーダー集団「ソロモン」の当時の様子が著者のドライな視点を通して描かれている。その微妙な距離感を通して、「お金」を儲けるということに対する著者のスタンスや思想が透けて見える感じもある。
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●内容
・東大法から国1合格、大蔵省の面接に進むも、官庁の雰囲気を嫌って外資に飛び込んだ著者の体験記。
・20代から30代に掛けて、若い日々をすごしたソロモンの内情を語る。
●コメント
○マネー哲学。高級スーツを着るセールス部員と違い、ぼろぼろのトレー服を着るトレーダーたち。その違いは、マネーを生み出すトレーダーの金銭哲学にある。
(引用)
・私も、”You must love money”と、これも、品位に欠ける教えを授かった。2年前に入社した先輩が得意そうに、「それが、君のレッスン・ナンバー1」と言った。かつて自分が教わったことを教える立場になって嬉しいのだ。「ナンバー2は?」と聞いたら、まじめな顔をして少し考え、”Love it more”と答えた。
・誰しも金は欲しいものだが、堂々と「金が欲しい」ということは、卑しい人間だと思われるようで気が引ける。人の目を気にしていては相場には勝てない。金を崇める言葉を口にすることは、なによりも、周囲に流されない強い意志を養うために有効であったと思う。
・10万ドル単位の年収を貰っていても、擦り切れたコートを手放さず、スーパーの特売で買ったようなネクタイを平気でしている人間が大勢いた。…金そのものに絶対的な価値があって、それを愚かな装飾品と交換するのは馬鹿馬鹿しいとでもいうようであった。
○人生観。外資に限らず、この明るい割り切りがあればストレスの少ない人生を送れる。
(引用)
・そもそも、人並み外れて幸運でなければ、ウォールストリートで金を儲けることなどできはしない。
・誰も信じるな。意図的に騙そうとする取引相手、ちゃんと調べずにレポートを書いた調査部、うっかり指示を間違えたアシスタント。誰も、損の責任をかぶってはくれない。儲けるのも、損をするのもトレーダーだけだ。騙されるのは間抜け、大金のかかった大事な作業をアシスタントに任せるのは軽率、その咎めは自分が受ける。"
・打算のまったくない友情など、ソロモン・ブラザーズの中でなくとも、同性愛のようで薄気味悪い。