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紙の本
夢の空間
2002/06/30 08:26
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あおい - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリ作家が名探偵なんていうのはもう本当に使い古された設定なんだけど、少女漫画的な「超二重人格者」というそれ自体ではやっぱりお決まりでな〜んにも面白くない設定と組み合わせて「本格」ライトミステリーを書いてしまうんだからやはり北村薫のストーリングテリングの才はずば抜けている、といっても、北村薫は才よりも芸の人で、念入りにというより繊細に物語を登場人物の人生から汲み上げていく文章を読んでいると、そのミステリらしい文体に溺れることをきっぱり排した姿勢といい清廉な作家像が浮かび上がってきて、ああそうかだから愛の成就が夢の家(=空間)として、人格を越えて描かれるわけなのかと納得してしまうので、円紫師匠と私シリーズも私の結婚で終わるのかなあなんてことも思うのだが、だとすれば是非そこでは新婚旅行の船の上での密室モノをやって欲しいなんてことも思ったりするのであって、そういう《未練》を残すのが、優れた作家の証なのであります。
紙の本
遊び心溢れる手の込んだメッセージの伝え方。
2002/06/16 10:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:亀豆 - この投稿者のレビュー一覧を見る
もっと続いてくれても良かったのに…と思うがシリーズ最終巻。
3話収録されているのだが、最終話の「覆面作家の夢の家」が特に面白かった。
ドールハウス作り、という共通の趣味を持つ男女二人が、ダイイング・メッセージの話をしているうち、男の方が問題を出す、ということに。そこで送られてきたのは殺人現場のドールハウス。さてそのメッセージの意味とは? 千秋と岡部を含めた3人でその謎解きに挑む、というお話なのだが、殺人事件が起こって必死に捜査して…というサスペンスも面白いが、「殺人現場のドールハウスが示すメッセージを解く」なんていう遊び心いっぱいのお話も読んでいてすごく面白い。
しかも、誰もが解けるわけではない高度な謎。凝っている。
ダイイング・メッセージがあまり凝り過ぎていると、死んでしまう、という時にこんな事出来るわけがないと興がそがれてしまうことがあるが、このお話ではダイイング・メッセージという形をかりた謎解きであり、挑戦でもある、という面白い設定になっているため、凝っている部分が純粋に楽しめる。
ドールハウスに関する部分も「いつも何かに使えないか」と考えてしまうのだろう楽しさが伝わってきて好かった。
紙の本
心暖めたいときに
2001/01/19 12:35
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投稿者:松内ききょう - この投稿者のレビュー一覧を見る
内と外では性格の違うお嬢様千秋さんと、出版社の良介が次々と出会う事件。ご存じ覆面作家シリーズ第三段。暗号、ドールハウス、と魅力的な小道具を使った魅力的な謎もさることながら、ふと思い出しても優しい笑みがこぼれるような事件背景といい、ファン投票をしても票が割れて大変だろうと思うほど、誰をとっても魅力的な登場人物といい、著者の幸せ溢れる作風はこのシリーズで特に際だっている。千秋さんと良介の初々しくも微妙な関係を楽しむには、やはり『覆面作家は二人いる』、『覆面作家の愛の歌』から読むことをおすすめします。