紙の本
新機軸による挑戦
2003/01/19 20:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:funabee - この投稿者のレビュー一覧を見る
43歳という若さでイギリスのリーダーに登りつめたトニー・ブレア首相が“教科書”として学び、その思想や政策の根本に据えたのが、社会学の権威である著者の提案する「第三の道」という考え方だ。自由競争ゆえにビジョンが定めづらい資本主義システムと、高福祉だが高負担な社会主義システムを超えて、安定と平等、繁栄がバランスよく保たれる新たな社会システムを提言してくれる。
ブレア首相も97年の就任から5年以上たち、新しい社会資本形成の仕組みとしてもてはやされたPFIの失敗が続いたり、鉄道民営化に苦悩するなど、マスコミ的には負の側面が強調されつつある。しかし、もはや「信念」の域に達した「第三の道」の考え方はいまも色あせることなく、数々の政策に垣間見られる。わが国の野党も似たような考え方を掲げながらも迷走しているのとは比較にならない。
もちろん、この考え方が正しいものであったかどうか、そして理想としたものが実現できたかどうかはまだ判断できない。しかし、「第三」という位置付けどおり、新機軸を提案したことは間違いない。まだまだ抽象的なこの考え方をいかに実践レベルまで落とし込むことができるか。それは私たち自身が考えるべきことなのだろう。
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既にネオリベ嫌いな人にとっては周知のことなので、そういう方は読む必要ないです。でも、「右翼と左翼の区別は今でも有効か」というセクションは非常に勉強になった。なるほどねと言わされました。
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「第三の道」におけるひとつのキーワードが「包含」と「排除」である。第三の道においては、できるだけ人々を社会から「排除」せず、そのメンバーとして「包含」することが重要であるというのである。
http://d.hatena.ne.jp/hachiro86/20070726#p1
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旧社会民主主義、新自由主義、そして第三の道。
旧社会民主主義:環境問題、グローバル化への視点を欠く、福祉国家の弊害
新自由主義:無限の経済発展、小さな政府、市場原理主義と保守主義の矛盾
5つのジレンマ
・グローバリゼーション:意思決定にグローバルな意味
・個人主義:社会的連帯を侵食しない
・左派と右派:社会民主主義は中道左派へ
・政治のあり方:下位政治の出現
・環境問題:環境配慮型の近代化、予防原則
グローバル時代に統治を適応させ、国家の権威を刷新する必要
地方分権、透明性、効率化、直接民主制、危機管理能力、上下双方向の民主化
政府と市民社会の協力関係、政府による市民社会の蘇生、新しい家族制度への適応
社会投資国家
平等を包含、不平等を排除
地域のイニシアチブを支援する形、ポジティブ・ウェルフェア(人的資本への投資)
コスモポリタン国家(敵ではなくリスクに直面)
国民が共有する価値観、国民にとって快適なアイデンティティーを必要とするが、両義性や文化的多様性をも進んで受け入れる用意がなくてはならない
国境を越える活動の増加→権力の上方拡大、下方拡大
→世界経済の規制、グローバルな不平等是正、環境リスクに必要
要約的なあとがき
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本書は世界的に有名なアンソニー・ギデンズという社会学者が書いた本で、ブレア政権の方針の軸となるような「第三の道」という考え方を体系的に記したものである。
「第三の道」といえば、簡単に言えば今特に経済の主流として新自由主義的イデオロギーと社会主義的イデオロギーという相反する考え方が有り、それをふまえて私たちが行くべき“道”についての模索である。この用語自体20世紀初頭から存在していたが、近年の動向(社会主義の崩壊、グローバリゼーションの進行など)を十分に考慮し、現代における「第三の道」についての提言を包括的におこなったのが本書である。
社会学者が書いた本では有るが、簡潔な言葉で分かりやすく書かれている上、一気に読めてしまう分量(約260P)である。気軽に読めるので、このような内容に興味が有るなら是非ご購読をお勧めします。
とても充実した内容であると思う。もちろん、全部納得いく内容かというと、そうではない。しかし彼の提言する意見というのは我々に新たな視点をもたらすという意味で、十分に読む価値のある本であるし、むしろこのような議論をする上では避けては通れない名著である。
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名著。
その後のイギリスの状況を見ると今からの好意的な評価は難しいけども、考えは簡潔かつ明快。
個人的には考えが非常に合った。
ただ、グローバリゼーションをポジティブに見過ぎている点は考える必要があるだろうけど。
でも最高評価。
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イギリス・ブレア政権のブレーンとして「第三の道」を提唱。
1997年から2003年までLSEの学長。
2004年に労働党貴族院議員となる。英国ニュー・レイバーの中道左派の政策ブレーンとして活躍。ブレア政権の「第三の道」路線を支えた。
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この本は10年以上前の本になりますが、「社会民主主義」、「新自由主義」、「右派」と「左派」、「グローバリゼーション」、「個人主義」など政治経済を学ぶ上で重要なキーワードをとてもわかりやすくまとめてあります。この本を読むと、新聞を読んだ時、本を読んだ時など、それまで以前に理解しやすくなると思います。
志學館大学 : 教員 宗 建郎
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【今日の一冊19
『第三の道-効率と公正の新たな同盟』】
今日は、「大雪」ですね。
政治的な課題は、雪のように、
降り積もり、いつの間にか、
大きな問題になっていく。
……
新自由主義は小さな政府を望ましいとし、
社会民主主義者は、少なくとも従来は、
大きな政府を志向してきた。
政府の再構築を目指すのが、
「第3の道」である。
「政府を敵」とする右派、
「政府が答え」とする左派の
双方を乗り越えようとする。
……
第3の道≒新しい社会民主主義
政治的には、「やや左」と読める。
ただ、こんな単純な二分法で分けられるのか?
いくつかの課題で、左右の主張と、
個人的な意見は相容れない。
単純な区分で言えば、「ねじれる」。
それにより、政治が「停滞」する。
「停滞」も、見方によっては、
物事を「慎重」にとらえた
試みと言えるかもしれない。
グローバリゼーションにより、
世界の経済はより密接になってきた。
個人は何を大事に生活をするのか?
社会は何を大事に政治を行うのか?
「第3の道」は、20世紀の終わりに、
時代の要請に応えるべく、
新しいコンセプトとして出てきた。
・グローバリゼーション
・個人生活の変貌
・自然と人間との関わり
等々、私たちが直面する大きな
変化の中で、市民一人ひとりが、
自ら道を切り開いてゆく営みを
支援することを目指す。
自由貿易は、経済発展の原動力となり得る。
しかし、市場の力は、社会と文化を
破壊しかねないから、自由貿易がもたらす
様々な帰結に対する監視を怠ってはならない。
平等と個人の自由は食い違いをきたしがちだが、
平等主義的な措置が、個人の自由の範囲を
拡大することもままあり得る。
第3の道の政治には、個人と共同体の関係を
再構築し、権利と義務のあり方を
見直すことが求められている。
……
「雪」はいつか溶ける。
政治的課題も、いずれ溶ける。
ただ、その政治的課題が
溶けてなくなるまでの
間にも、人間が死んでゆく。
それをどう解決するか?
コンセプトは大事だ。
でも、それで動かせなければ、
意味はない。
……
本書が書かれた時期よりも、
国家という形を持たない集団が、
テロを行い、その恐怖が世界を覆う。
社会をどう安定、活性化させるか?
富の再分配するか?
一人ひとりが、より良く生きるとは、
どういうことか?
単純な答えなどはない。
ドラッカーの言葉を借りるなら、
「石臼に鼻を押しつけながら
丘の上を見なければならない」
ということなのだろうか。
・今日のために明日犠牲になるもの。
・明日のために今日犠牲になるもの。
これらを時間軸を見ながら、
その��牲を最小限にとどめる。
「第3の道」は、
「権利には必ず責任が伴う」
「民主主義なくして権威なし」として、
新しい「平等」づくりをせまる。
今年は、参議院議員選挙もある。
一市民として、何ができるか、
どうあるべきか、を考えながら、
投票にのぞもうと思う。
……
#viewpoint
#communication
#resource
#アンソニー・ギデンズ
#佐和隆光
#松村さんにご紹介いただきました
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社会民主主義の公正。新自由主義の効率を合わせ持つ立場。福祉国家(大きな政府)でもなく、自由競争(小さな政府)でもない。最下層の人が排除されてはいけないし、最上層の人が除外されてもいけない。ギデンズ『第三の道』1998
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[出典]
経営リーダーのための社会システム論
宮台 真司, 野田 智義
P.174 アンソンニー・ギデンズ 「社会の構造化」からの発掘