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かつて講談社文庫や角川文庫から発売された仁木悦子氏による推理小説が、再度ハード本として収録されたシリーズ本。すでに亡くなられている仁木悦子氏の作品が、こうしてシリーズ本として出版されるのは、ファンにとって何より嬉しい企画。
本書は、副題の通り、ヤセでノッポの大学理学部(植物学専攻)の学生・雄太郎と、太めでチビの音大生(ピアノ専攻)・悦子の凸凹コンビが活躍する兄妹探偵シリーズ。
「棘のある樹」「黒いリボン」の他、単行本未発表の著者自伝小説「あおい壁」、著者の夫君となられた後藤安彦氏の回想文も収録されている。
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昭和に活躍された作家・仁木悦子さんの長編2作を収録した2冊目&ラスト。(短編集も同出版社から刊行済み。「仁木兄妹の探偵簿」①・②共にレビュー済み)
兄妹探偵の「棘のある樹」「黒いリボン」に加え、作者の自伝小説(性別を変えてある)「あおい壁」も収録してあります。
『棘のある樹』~冬・1月
大邸宅・水沢家に家主の留守中サボテンの世話をする条件で下宿している雄太郎・悦子兄妹。2人の(というか雄太郎の)探偵の腕前を頼み、尾永益冶という紳士が訪ねてきた。2ヶ月ほど前に車に轢かれかけ、何者かに川に落とされ、そしてつい最近は自宅周辺で不審な者が窺っており、命を狙われているのではないかと妻ともどもノイローゼになっているという。兄妹が快く協力を引き受けてくれたことに喜び、早速家に招こうと妻に電話をする尾永氏だったが、電話口に出た女中から取り乱した声で妻・多満子が殺されていると告げられる。大急ぎで駆けつけた邸宅には、ミシンに覆いかぶさるようにして息絶えた死体があった…
『黒いリボン』~春・4月
知人のバイオリン演奏会のチケットを友人らに売って歩いていた悦子は、偶然にも旧知の女性・絵美子に出会う。彼女は声楽科を卒業後、陶器会社社長の国近と結婚し、2歳の長男・直彦を連れていた。チケットを買ってくれたうえに、義妹・茂代や義弟・泰次郎、実姉・登美子にも勧めてくれるという申し出に喜んで国近邸に招かれた悦子だったが、そこで出会った主人・国近昌行の直彦に対しての余りにも冷たい態度に驚いてしまう。1歳の長女・マユミに対しての甘やかしぶりとは極端に違うのだ。戸惑いながらも話し込んでいたのだが、晩餐の頃合になって初めて、一人で遊んでいたはずの直彦の姿がないことに気付き、庭に「ブラックリボン」と署名入りで子供を誘拐したと告げる脅迫状が見つかった…。
仁木兄妹探偵シリーズの長篇は、全集①の2作と今回の2作、あわせて計4作品となります。ちょうど春夏秋冬になってるのは、当初は意図していなかったようですがラスト『黒いリボン』で合わせたそうで。確かにその方が座りがイイものね(笑)
私的には『棘のある樹』は、途中のロジックや伏線は非常に好みなんですが最終地点に納得がいけません…。確かにこっそり隠された伏線からの繋がりを考えると着地点はそこしかないんですが…あの「犯人の演技力が素晴らしかった」というのは…。心配していた態度も演技だったってことですか…orz
視点描写に限りがある以上仕方が無いんですが、その点がフェアじゃない!と叫ばせてください…(別に犯人当てはしてないんですけどね…)
逆に、少々本格ものっぽくない『黒いリボン』の方が私は楽しめました。誘拐がテーマですが、その後の展開がとてもいい。とんとんと話が進んでいくのでテンポが良く、引き込まれていきます。それとやはり、子供(&少女)の使い方が巧いですね…。
本格っぽくないと書きましたが、そこは仁木作品ですから伏線はしっかり貼ってあります。回収もちゃんとしてあるあたり、『日本のクリスティ』の評価は伊達じゃありませんよv
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『棘のある樹』
砧警部補が雄太郎に依頼人を紹介するとは。
雄太郎は警部補に色々隠しすぎ!悦子が怒るのも当然。
終わり方があんまり好きじゃない。犯人突き止めたからお咎めなしってこと?
『黒いリボン』
今回も雄太郎の隠しんぼは相変わらず…。でも、今回は理由があったからなぁ。
悦子がいつもより活躍したのも嬉しい。
関係ないけど、どうして“ブラック・リボン”にしたんだろう?
『あおい壁』
日本が障害者には生き辛い国だと再確認。
今は状況がどの位改善されてるんだろう。