紙の本
帝王マイルス
2002/05/14 14:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
『マイルス・デイビス自叙伝』を読んだ。知っているジャズメンが次々に出てくるし、歴史のお勉強にもなるし、細部が面白くすぐに読めた。マイルスがますます好きになった。
ジョン・コルトレーンが修行僧のように女に見向きもしないのに、マイルスは演奏が終ると女のケツばかり追いかける。ヒップに決めてモテモテなのだが、フランシスという女性と恋に落ち、はじめて嫉妬の感情を知ったと。「クインシー・ジョーンズってハンサムね」の一言にキレて美しい彼女の顔に手を上げる。以来、二人疎遠になるまでフランシスはクインシーの名を決して口にしなかった。
パリのクラブでバド・パウエルに会ったときのこと。長い間離れ離れになっていた兄弟が再会したように抱き合って騒いだ。バド、よっぽどうれしかったのか会場備え付けのピアノを弾くことになった。最初は上手くこなしていたのに、途中からアレヨアレヨと乱れに乱れメチャクチャな演奏になった。その場に居合わせたものたちは仕方なく拍手を送る。
席に戻ってきたバドにマイルスは、
「バド、そんなに飲んだときは弾いちゃダメだ。わかるだろ」
バドは当時、分裂病がヒドくなっていた。
それにしても、当時ジャズメンがこれほどまでヤクに浸かっていたとは知らなかった。チャーリー・パーカーやビリー・ホリディがヤク中がもとで死んだのは有名な話だが、ずっとクリーンなミュージシャンはいないと言ってもいいくらいだ。
マイルスがコールドターキーになって薬を断ち切る姿は壮絶を極めるが、それをじっと見守る父親に打たれる。その父が、功成り名を遂げた息子に会いにニューヨークまで来る。特別な話もなく、一通の手紙を渡して帰っていった。毎日忙しく、中身を見ずに手紙をそのまま放っておいた。まもなく父の訃報がマイルスのもとへとどく。急いで帰って手紙を開けた。「おまえがこれを読む数日後に、私はもうこの世にいない。マイルス・デイビス。私のほこり」とだけあった。
怒りと憎しみ、音楽への情熱、つきあった女性への感謝、差別のこと、家族への思いやり。自分のダメさ加減の吐露もバランスよく読んでいて気持ちいい。頭にきている奴のことにしても、事実であっても、当人に障ると思われるところはちゃんと配慮している。
マイルス本人の人柄もさることながら、話をまとめたクインシー・トループ、訳者の中山康樹さんの愛情を感じる一冊だ。
紙の本
マイルス・デイビス自叙伝1
2000/07/10 00:27
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:大谷 能生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初に邦訳が出版された1990年当時、ジャズ・ファンのみならずミュージシャンの間でも大きな話題となった、ジャズの“帝王”マイルス・デイビスの自叙伝が文庫化された。
文庫版に新しく付けられた中山康樹と後藤雅洋の後書き対談によると、この自叙伝は、クインシー・トループがマイルスに対して行ったロング・インタビューを元にして作られているそうだ。
子供の頃から60を過ぎた現在までほぼリニアに語ってゆくマイルスの記憶は、驚くほど正確で、また詳細である。パーカーに演奏料をピンハネされてマックス・ローチとともに抗議しに行くとか、ミンガスはお喋りなやつで、車で移動しているあいだずっと議論をふっかけてきて困っただとか、ジャズの現場にいた人間でなければ語れないような話題がきめ細かな口調で語られてゆくさまはなんともスリリングだ。
20世紀という変動の時代を生き、演奏し、闘い抜いたマイルスの一生は、物語としても破格の面白さを持っている。また、「黒人」の眼から眺めた合衆国の文化・風俗史としても、この本は貴重なものだろう。内容にそれだけの厚みがある、実に読みがいのある「濃い」自伝だ。
(大谷 能生・ライター)
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泣く子も黙るマイルス自叙伝の第一巻。多くのJAZZメンに大きな衝撃を与える。冒頭でいきなり「俺を"伝説"と呼ばないでくれ。ただマイルス・デイビスと呼んでくれ」
ヒップな奴だけ呼んでくれ。
"ヒップ"であること、そして"クール"であることを求め続けたマイルスの1926年〜1957年12月が明らかになる!!
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今頃手に入れて読んでます。
訳は「聴け!」シリーズの中山さん。いや〜やはりこういう本は興味深いっすね!
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自己愛がユーモアに昇華した希有な作品。
各エピソードがとてつもなく面白いので、マイルスを知らない人でも楽しめるのではないでしょうか。
落ち込んでいる時、悩んでいる時、悲しい時。あらゆる場面での特効薬であり、人生が輝きに満ちている時はそれを加速させるターボにもなる。
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ずっと探してて、たまたま古本屋で購入
ずっとマイルスが喋り倒してるような語りで、
自身の生い立ちからNYなどストリートライフを
生々しく事細かに回想する
有名な仲間達が続々登場し、そして絡み合う
様が本当に生々しい バードという存在がまた
異様で巨大で圧倒される
この本を読むと、残ってるレコードというのは
その時々の断片であって、必ずしもその
アーティストを語るものではないのだな...と感じた
特に即興で吹き込むジャズレコードは尚更だが、
当時の空気を詰め込んだそれらから
当時の雰囲気を耳と想像力をもってして
形作るのがジャズを聴くことなのかも、と新たに考えた
?は早速新本で購入 ?の方が多分マイルスの
音楽の進化について語っているはず
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天才ジャズトランぺッターの自伝。
私は彼が亡くなってから彼の音楽を聴くようになったのだが、繊細で美しく哀愁漂う音…はたまたアグレッシブで激しい音…。どんな曲にもマイルス・デイビスは人の心を捉えるプレイをしている。
彼がは音楽家としては素晴らしい人だが、人としては尊敬できない。
そんなことまで詳細に書いてある。女、ドラッグに溺れてゆく彼があんなに素晴らしいプレイをするなんて、どうなっているんだ!!
彼の自伝を読むにあたって、黒人差別の本を先に読むことを薦める。
彼自体、黒人差別を受けまた黒人差別による事件で相当頭にきているようだった。白人がジャズをやることが受け入れられないと彼は思っているのではないのか、と読み取った。それはそういう事が背景にあるからだろう。
彼のようなトランペッターはこの先現れないだろう。
マイルス・デイビスは伝説になった!!
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興味深すぎ。
音楽、絵が好きな人なら何かしら感じるはず。
怖い部分もたくさんあり。
憧れる部分もたくさんあり。
普通で良かったと思う部分もたくさんあり。
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モダンジャズの帝王、
マイルスデイビスの自伝。
よく、村上春樹の小説を読んでいると、
日常、頭の中の言葉が村上春樹風に
なってしまうが、
この本を読んでいると、
頭の中の言葉が、ヒップでクールな、
マイルス風になる。
1950〜のジャズが好きな人は、
まず間違いなく読むべき。
出て来るミュージシャンの名前だけても、
興奮する。
また、例えばバードのエピソードひとつでも、
いかに滅茶苦茶で破天荒な天才だったかを、
知ることができる。
あの辺りのジャズミュージシャンの中で、
当時どんなことが内部で起こっていたのかを、
きちんと分かりやすく、中立的に、
話せそうな人といったら、考えてみれば、
マイルスデイビスが適役な気もする。
実際、話はとても面白いし、読んで得する本だ。
この本を作ってくれた人、
日本語に訳して出版してくれた人に、
スタンディングオベーションを送りたい。
マイルスには、つっぱって生きて来た人独特の、
色気を感じる。
ヒップでクールだ。
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読んでからかなり経ちますが、
とりあえず登場人物の大部分がド変態だってことは覚えています。
マイルス坊ちゃんもイヤイヤ言いながらも結局染まっていきますが。。
チャーリーパーカーのエピソードにドン引きしつつも、曲聴くとすんごいいいから困る。
読んで学んだこと
「若い人と一緒にいなきゃダメだ!」
えーとたしか、1967年くらいの、ウエィンショーターとかがいる一番いい時期とされてるころ、中学生坊やみたいなドラム奏者が現れたんだよな。
トニーウィリアムズという坊や。
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ジャズ初心者の私にはハードルが高かったが、多くの物を得られる内容だった。
マイルスの破天荒ぶりは凄まじいが、他の人たちもそれにまけじと破天荒。薬物中毒でどっぷりと薬にはまっているのに、演奏するとすばらしかったりするから不思議だ。精神も肉体もあまりにも健康だと逆につまらない物になってしまうのかもしれない。
登場人物が多くて情報を垂れ流しにした状態で読んだが、もっとジャズについての知識をレブルアップした状態で読んだら、今よりももっと面白く読むことが出来、多くのことを得ることができるだろう。
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音楽の話は抽象的でよくわからないところが多かったけど、40~60年代のアメリカの黒人文化のあらゆる側面を当事者の目線でとらえている、いわゆる"昔話"にあたるエピソードが面白かった。
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マイルスの自伝は数ある音楽家の自伝の中でも飛びぬけて興味深い。Jazzの歴史はマイノリティであった黒人が自我を成立させていく過程とリンクしているのだけれど、この時代にあって圧倒的な自信、独自のやりかたを貫いたマイルスの存在価値は圧倒的。マイルスがJazzを電気化させ、そこからFunkや新しい音楽も育っていった。抑制の効いた彼のトランペットの音は、今の時代でも緊張感を持って聞くことができるし、思考を深めてくれるような気がする。音楽への極端な突き詰め方や新しい手法を使ってスタイルをスタイルを更新し続ける姿勢がこの期に発展するHip Hopや様々なClub音楽に今なお影響を与えている。真のInnovatorであり芸術家。
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Jazzの帝王マイルスの自伝。上下巻纏めてのレビューです。
バードのような破天荒なジャズマンとの交流やクスリに溺れた自身を振り返ってみたり、フランスでのサルトル達との交流やジャンヌ・モローとの恋愛が語られる場面も印象的ですが、この人のライフヒストリーがそのままBebop以降のJazzの歴史とシンクロしており、自伝とは言いつつもjazzの進化がどうやって生まれたのかについても語られています。
この本を開くと、新しい音楽が生まれる瞬間はいつも刺激に溢れていると感じさせられます。
jazzをある程度聞いてから読むとさらに面白くなるのでこの本単品の評価で星4つです。
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ジャズやるならバイブル。イノベーションを生み出す経営哲学としても一級品だと思う。
とにかくレジェンドたちのはちゃめちゃエピソードもすごい。