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紙の本
医療・介護に関心が高まる中,サービスの質が問われている。この命題に第一線の経済学者達が答えを探る
2000/11/23 00:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:高山 博 - この投稿者のレビュー一覧を見る
医療・福祉分野に関する分析は多方面から行われ,社会学,法律学,経済学などなど,斬り口はさまざまである。経済学的手法に特化した場合,大局的にとらえると,医療制度や福祉政策を産業としての枠組みで眺める。一方,ミクロ的視点では診療報酬,保険制度から数理的に分析したり,個別の医療法人,病院の事例のケーススタディーを行ったりする。いずれの領域からも多くの良書が刊行され,医療・介護(福祉)分野は多くの経済学者の興味の対象になっている。
本書ではマクロ的に,医療・介護の制度を概観し,従来あまり議論されなかった医療・福祉政策における「サービスの質」に焦点を当てる。また,医療分野などにおける「生産性」を定量的に評価する試みを行っている点で,斬新的である。
本書では,国立社会保障・人口問題研究所が平成8〜10年度に実施した研究プロジェクト「産業としての社会保障に関する研究」の成果をまとめている。プロジェクト名から連想するのは,厚生経済学の再構築であるが,内容はより実務的で,社会的な動向を盛り込んだ実証的研究。後述するが,第2章は経済分析のための手法を解説している。ここで記された内容を深く理解するには,厚生経済学を含めた経済学説史に精通しているに越したことはない。また,全要素生産性(以下,TFP)の解説を理解するには,経済学の基礎となる生産関数などをはじめとする理論に関する予備知識が必要となる。
実証研究を行ううえでは学問的基礎と社会全体を見据える目,さらには研究目的を明確化させなくてはならない。その意味で,本書はバランスが取れており,経済学の基礎的な考え方,応用研究に対する問題意識がはっきりしており,公的部門では馴染みが薄かった「サービスの質」を軸に据えて展開する。今後,この分野の研究を志す人にとっては模範となる書物であり,既に第一線の研究者にとっては参考になる面が大きい。また,経済学を専攻していなくても,医療・介護の問題を包括的にとらえるうえでも役立ち,政策担当者,医療法人などの経営層,さらにはこの問題に興味のある一般の人にも一読を勧めたい。
内容が多岐にわたり,本書は13人の専門家が執筆している。11章から成り,まず,介護サービス産業の全体像を消費者(利用者),生産者(供給者)の動向を踏まえ,各種統計資料を盛り込んで概観。2章ではTFPの理論を解説するが,複数の投入要素を考慮するには供給の状態や使用器具の劣化などを考慮する必要がある。産業連関分析や品質工学などの視点を含めた総合的なTFPの理論構築が求められる。3,4章は公的介護保険導入の経済効果,福祉政策における政府の役割を,5,6章で医療機関の再編成や経済的側面,7,8,9章は市場メカニズムを視野に入れた分析を,10章でディスクロージャー,最終章では資源配分に関する分析を行う。経済的視点で,医療・介護産業を総合的に論じる。
(C) ブッククレビュー社 2000
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