天まであがれ！（秋田文庫） 2巻セット みんなのレビュー

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投稿者：mikako　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　少女漫画には珍しい時代劇です。新選組の沖田総司と土方歳三、そして総司に恋する少女・こよりを中心に時代の中のきらめく青春が描かれます。ストーリーは試衛館時代の総司とこよりの出会いから始まります。ふたりとも子供のような素直さで描かれていて、ふたりの恋もまっすぐに一途です。
　キャラクターの魅力が秀逸です。メインキャラクターはもちろんですが、彼らにとっては苦々しい存在、例えば目の上のこぶの芹沢鴨や意地悪なるり子にさえ、作者の愛情が感じられて悪感情が湧きません。総司に殺意を持つ風守（キラークイーン）は、ひときわ存在感があって非常に魅力的でした。
　時代的に込み入った内容がとても速いテンポで語られていますが、無理なく分かりやすいストーリー仕立てになっています。沢山の登場人物それぞれの個性がよく出されていて、その彼らの口から語られるセリフによってするすると状況がのみこめます。歳三の夢を語る場面はとても素敵です。
　新選組が舞台なので、ハッピーエンドというわけにはいきませんが、エピローグ部分の数ページが悲しい結末を静かに思い出に変えてくれます。