紙の本
サイバラに匹敵するカルトAV女優
2004/02/16 01:18
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:高島K史 - この投稿者のレビュー一覧を見る
朝日新聞だったか、西原理恵子の「できるかなv3」の書評がでた時、サイバラに唯一対抗できる作家として卯月妙子の名前があがっていた。しかし朝日新聞の書評欄の読者で、卯月妙子が何者なのか知る人は何割なのだろうか。
卯月妙子は「ヒジョーに貧乏な家庭の主婦をやるかたわら、企画モノをやって」いる「流しのAV女優」である、らしい。というのも私はそのビデオを見たことがない。彼女「の出ているビデオは『アダルトショップ』にしか」ないらしいからである。
これはその卯月妙子がAV業界の裏をネタにしたショートギャグエッセイである。
それにしても濃い。濃すぎる。このひと、その世界では「ウンコの卯月」と言われているなどという話をはじめ、とんでもないことをやってやってやりまくっている。SMやスカトロといった、遠い世界の出来事が、あたりまえのように「仕事」として繰り広げられる。私は飯島愛の「プラトニックセックス」で、AV業界の裏見たり、とか思っていたけれど、いやいや、企画モノの裏って……比べもに鳴らないくらい劣悪だ。
絵柄はコミカルで小さいコマに絵と文字がびっしりで、すこし読みにくい。エロいシーンは一般的な意味合いではあまりエロくなく、なんていうか、ほとんど気持ち悪い。でも読んでしまう。仕事や私生活の上での辛い出来事を、自らを痛めつけるようにネタにして無理矢理笑いにしてしまっている、このパワーに圧倒されるのだと思う。そう、圧倒的だ。
どう言う風に圧倒的か色々ここに紹介したいのだが、削除されちゃうとヤなので、それは本書を読んでいただきたい。でもご飯を食べながら読まない方が良いと思う。
ところで、後半には出産の話が載っている。生命誕生の喜び、なんてまったく感じられない、やる気のない妊婦・卯月は、看護婦も助産婦もいない夜の病院でひとり奮闘する。読んでいて、まじめに子供を産め!!と思いつつ、あぁ、やっぱり子供産むのってそんなに痛いんだ……、と感じたのが印象的だった。数ある出産漫画にも痛い痛いって描いてあるけれど、これは本当に痛いってことが伝わってきた。この人の絵柄はコミカルであるけれども、そのぶん、痛み、憎しみ、辛さ、などが非常にデフォルメされた形で投げ付けられるのだ。
最後には旦那さんの自殺の話が載っている。卯月妙子はそれをあまりにあっけらかんとネタにしている。あまりにも痛すぎる。なぜ、ここまで??と思う。
ここまでくるともうこれは笑いではない。説明のつかない強烈な怒りと憎しみがべたべたと画面に塗りたくられているように思える。それは笑いにひっくり返すことのできないほどの怒りと憎しみ、そして絶望なのだ。そしてこの漫画のなかで卯月妙子は崩壊してしまっている。
そして私はこの本をもう開くことができなくなっている。
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出版社からのオススメ
2003/02/05 03:32
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投稿者:太田出版 - この投稿者のレビュー一覧を見る
伝説的カルトAV女優、銀座ホステス、にしてヒジョーに貧乏な家庭の主婦、1児の母・卯月さんの過激な主婦生活! 『マンガ・エロティクス』連載にプラス100枚の壮絶コミック・エッセイ!!
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AV女優でだめんずで未亡人。
息子さんがどのようなオトナになるのか激しく心配ですが、ぶっちゃけ他人の子供なので楽しみでもあります。
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陰鬱ぶってるガキどもは、これを読めばいい。親の保護下にいる癖に、ナルってる姿を見せられるのは気持ち悪い。本当の絶望を知らないガキどもは、この人の「自虐さ」を理解できないことだろう。そう、人生とは「ギャグ」なのだ。
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アーティストの旦那が借金まみれで、スカトロもののAV女優になった腐女子の奥さんによる実話マンガです。
旦那さんは自殺未遂して植物状態になった後、亡くなったようです。
なんか頭イっちゃってる方が描かれているようなので、ちょっと説明不足で読みにくいところがありますわね。
それにしても、ものすごい内容です。
でも、この方、別に旦那さんと出逢う前からヘンタイではあったみたいね。
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底辺AV女優卯月妙子が自信の壮絶な生活をギャグタッチで描いたもの凄いマンガ。卯月妙子は子持ちの主婦でありながら、勤労意欲ゼロのニ−ト旦那の借金と自分の煩悩のために、21歳にしてAV女優となる。元々はキャプ翼あたりの王道少年マンガから入ったやおい畑の同人作家だったが、近所の書店のエロ本ラインナップの影響(尻を触らせるだけでいくらでも読ませてもらえたらしい)か、中学の頃には処女でありながら、肛門にカルピスの栓をハメ、陰核にクリップを挟んだ状態で登校するなど、常軌を逸した性生活を送っていた。そうした性向が女優になって開花したのか、「何がハードなのかわからないので言ってください」というくらいに、何でもアリのたがの外れたプレイを繰り返す。初めてのAV出演で放尿飲尿を体験すると、雑誌で見かけたスカトロ写真に「天の啓示」を受け、メーカーに自らスカトロプレイを持ち掛ける。そうしていつしか一般的なアブノーマルプレイをやりつくした卯月は、今度は自分で企画を出し、ADまでしないと仕事をもらえないAV女優の底辺、「企画モノ」女優になっていく。残飯を道端にばら撒いてそれを犬食いしたり、街頭を歩く男性に浣腸をしてもらって脱糞風景を見てもらったり、ミミズを食べながらフェラチオを行う「ミミズ千匹」など、その「企画」は凄絶を極めていく。そして一方プライベートでも性欲にあかして、男性や女性と不倫を繰り返す有様(夫は夫で公然と不倫)。唯一大切に扱っていたと思われた一人息子の三歳児シゲルにさえ、「レイプってなに?」と聞かれると「おとこのひとがいっぱいでおんなのひとがひとりのおしごとよ。」と説明してしまう。もはや彼女の世界に「不貞」という言葉は存在しないように見える。このマンガを読んでいると、性倒錯した「マニア」の人々が、かえってピュアに思えてくるから不思議である。卯月は、企画モノ女優の傍ら、SM雑誌やレディコミなどに、文章やマンガの仕事も並行して行い、どうにか金を工面していくが、駄目夫が片っ端から使い切ってしまい、借金は一向に減らない。巻の終盤では、旦那がやりたいことをやる金がないのを苦に、アーティスティック(自称)な自殺を遂げ(実際には中途半端に死ねず、1年半も植物状態が続く)、あろうことか卯月はその死にいく様を遺言に従ってカメラに収めている。植物状態で入院中も、円形脱毛症になりながら待合室でSM誌の原稿やマニア雑誌の漫画を描き続ける。こんな破茶滅茶な生活を送っている彼女の漫画には、悲壮感のかけらもない。自身も幕間のエッセイで「ホントに嫌だったらとっくにやめてるっつーの。オホホホホ。」と述懐している。どうなってんだろうかこの人のアタマは。とにかく同じ日本の東京に生きているはずなのに、ここまでの異世界を生きている人はそうはいない気がする。
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「人間仮免中」が壮絶で感動ものだったので著者の過去に興味が…こちらもギャグコメディで描かれているが内容はいろんな意味で凄かった。最初の主人はあれだけど、ボビーと出会えて良かったしこれからは穏やかに暮らして欲しい。まあ、無理なんだろうけど。いつの間にかAmazonで7000円に、売るかな。
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絵柄は「クレヨンしんちゃん」風。ギャグマンガとしてのキレは月並み。しかし卯月妙子の人生に圧倒される。「あしたのジョー」の「ノーガード戦法」みたいな人生だ。しかも何か目指すものがあってやっているわけではないので、「戦法」ですらない。ノーガード人生。それを読者にしっかり伝えているだけでこの本は読む価値があるし、そうでなくても、一度読み始めたら最後まで読んでしまう何かがある。因みに公立図書館で予約して借りて読んだが、これが公立図書館にあることにはちょっと驚いた。
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卯月妙子のデビュー作。伝説のAV女優である著者が描いた、自らのAVデビューとその後の日々。描かれていることは信じられないほど過激だが、著者の性格と絵柄のせいで、「ギャグ漫画」として読めてしまう。ぜひ再販すべき、必読の作品
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卯月妙子さんのぶっとび具合がすごすぎて・・・卯月さんを取り巻く人々も大分ぶっ飛んでますが。
ここまでオールオッケーな方は珍しいと思います。幼少から統合失調症を患って相当な生きづらさもあるんだろうと思うと常時カタルシスな感じもわからなくもない気がします。何度も読み返したくなる漫画。
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「人間仮免中」を読み、卯月妙子という人を知りたいと思って図書館で借りました。
・・・が、私のような凡人には分かりませんでした。ただ、徐々に壊れていったのではなく、元々ぶっとんだ人なんだと分かりびっくりしたような、ちょっと安心したような。
この夫婦に子供がいなければ、また違った感想なのかもしれないけど、どうしてもシゲルを思うと胸が痛いです。