紙の本
まるで黒い魔法のような
2009/04/04 21:30
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んでいる間の居心地の悪さ、読み終えた後味の悪さと、手塚治虫の問題作と言ってもいい作品。心がほっこりする、あたたかくなる、といった感情とは正反対の思いを抱かされる漫画ですが、一方で、主人公・結城美知夫の徹底した悪の魅力に引きつけられる側面もあります。メフィストフェレス的な「悪」の魔力、「悪」の微笑みのようなもの。そこに、妙に惹かれる雰囲気を感じる作品。
結城と賀来(がらい)神父とのホモセクシャルな関係、結城の「悪」に翻弄される賀来の葛藤と懊悩がまた、この作品を構成している太い柱のひとつとして、強く印象に残りましたね。
複雑・微妙な味のするエンディングの1コマにも、残り香のように後を引く余韻があります。
タイトルの「MW(ムウ)」とは、某大国が化学兵器として開発した猛毒ガスのこと。と同時に、MAN(男)とWOMAN(女)の呪縛を超えて、「悪」の化身として生まれ変わった結城美知夫のことを暗示しているのでしょう。その「悪」の存在を一方的に否定できないどころか、「悪」の誘惑、吸引力にある種の美しさを感じて引きつけられてしまう人間の不思議な側面。
手塚治虫のブラック・マジック、黒い魔法に魅せられたような、そんな妙味を感じた漫画です。
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何とも言えない破滅的、悪魔的な物語ではないでしょうか。MW「M]はman、「W」はwomanの意。主人公結城の悪魔性は現代の闇の化身か
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様々な困難に見回れた時、人は変化する。それを教訓により聖人のような人になるもの、そして攻撃的になるもの。結城はとんでもない男だ、だが、結城という男を作り上げたもの。
それこそが本当の悪なのだと思う。
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手塚治虫といえばアトムとかブラックジャックが思い浮かぶけど、こういう作品ももっと世に知られるべきだと思う。
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全2巻完結(文庫)あらすじ…は省くとして(面倒くさい)中々異色な作品でゴザイマシタ。ホモのかほりどころか、思い切りホモ。え?この時代から「薔薇族」ッテ言葉あったんだ?と変な感想もってしまったり。神父がミチオ(漢字忘れた)にずるずると着いていくのがイイワケがましく、所々で「ん?」と首を傾げたくなる矛盾を感じたのですが、それはそれだけミチオの魅力が凄まじいということなんだろうか?細かい所を突っ込むとキリが無いんですが、銀行家の娘に変装する設定。あれちょっと都合よいよね。そこまでソックリには出来ないと思うんだけど…知人の認識なんてあてにならんもんですな。ラストは定番な終わり方。兄が似すぎてるっちゅーのも都合よいかなぁ…双子だっけ?だったら分かるけど。
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好き嫌いが分かれそうな感じの話。
幼い頃、MWという毒ガスに脳を犯された結城、そしてその時を一緒に体験した賀来神父。
二人は同性愛の関係にあります。
結城は自分の計画(MWを手に入れ、世界中にそれを撒き世界を征服する)を成し遂げるためには手段は選ばない。
人を何のためらいもなく殺していく。
救いようのない話の流れですが、私は好きです。
ブラック・ジャックなどとはまた違う手塚先生の一面です。
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黒手塚作品の傑作のひとつ。どぎつい描写と結城の残虐性(よく言われている通り、結城は『MONSTER』のヨハンのモデルのような男です)が怖すぎの、いわゆるピカレスク作品です。若くして読んだらトラウマにすらなるのではないでしょうか。僕は中学生のときに地元の図書館から借りて読んだのですが、それはそれは衝撃でした。
救われない男たちの救われないドラマです。
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手塚作品の中でも5本の指に入る好きな作品。
ツボらない人には破天荒すぎる展開に『よくわからない』となる可能性もあるけれど、読めば読むほどに人間の心理と『心』と『カラダ』の求めるものの深さ、複雑さ、謎が膨れ上がる。残酷な殺人の数々がありながら、単なる恐怖やグロテスクでは終わらない手塚さんの作風は、作品としてではなく、読むものとして仕上げる情熱のたまものだと思う。
二次創作という手間なく、原作で『腐れる』ことができる濃密な内容に五ツ☆!
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手塚治虫こういうのも描くんだ〜と驚きの作品。一気に最後まで読めちゃいます。
手塚は絵柄からして美男子描けないと勝手に思っていたのですが(失敬だな)ミチオは美男子でした。ゴメン。
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火の鳥やブッダ、ブラックジャックやメルモなど、様々な手塚治虫作品を読みましたがこの人の才能の豊かさには心底驚かされた一冊です。文庫で2まで。私は衝撃を受けました。
人として譲れない線や信念、関係などを問い直したくなる作品です。
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玉木で映画化されるとのことで、1・2巻一気読み。
おもしろくて映画も大変楽しみです。
アマゾンで言われてるほどエグくなかったし、ラストもそんなに驚かなかった…私って何者
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品行方正なエリート銀行員でありながら、日常的に凶悪犯罪に手を染める結城美知夫。そんな結城を止めようとする神父の賀来。賀来がそこまで結城を庇い、更正させようとするのは、はたして結城が賀来の教会に入り浸るためだけなのだろうか…。テーマの重さ、ひとつひとつのエピソードの恐ろしさ、そして果てしない悲しみが畳み掛けるように描かれる。賀来の行動が釈然としないのだけど、でもやっぱり賀来の結城への感情は恋愛や友愛ではなく親や兄弟に近いものがあるんだろうな…。
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MWより奇子やったなぁ
何気なくストーリーを知ってただけに驚きも少なかったし、
二人の主人公どちらにしても感情移入がしずらい。
ベースにまともな世界があって、狂人が存在する違和感などを描いてるわけでもなく、
常識が通用してない世界で、狂人がすき放題やっとる。
読者の俺としては、誰目線で読めば良いのかわからなかった。
SFやろ。
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玉木宏&山田孝之主演で映画化、ということで読んでみました。
手塚作品は、読んだ後になんかこう、心に重いものをズシッと飲み込まされた気分になりますね。
小学生のときに「火の鳥」を読んで、なんだか怖くて怖くてしょうがなかったなあ…。
軽いトラウマだったりします。おおお…。
「B・J」は何度も繰り返し読みました。
ピノコに優しい黒男さんに夢中でしたねえ(苦笑)
そして今回のこの「MW」。
映画化ということがなければ読むことはなかったかもしれません。
「MAN」「WOMAN」の頭文字を合わせて「MW」ということだそうですが
まさに主人公・結城美知夫のことですね。
賀来(がらい)神父とのホモセクシャルな関係に目を奪われがちですが、
結城にとって、人間の中で唯一心の拠り所としているのが賀来ただ一人であり
賀来の前では表情も「女」へ変貌し、彼との繋がりを求めています。
神父の周りに女が現れると、逆に自分に夢中にさせて遠ざける、という強引な手段を使ったりして。
かなりの「悪女」ぶりを発揮してましたね〜。
そして、そんな彼との関係を断ち切りたいと思いつつ
彼に望まれると拒むことが出来ない賀来神父。
読んでいる側としては、それが不思議でした。
賀来神父は、結城のことを憎んでいるようにすら感じれるのに
気づくと、簡単に彼を受け入れているんですよね。
一度は結城を殺しに行ってるほどなのに、ですよ?
それでも二人は会うことを止めない。
それほどの絆が、15年前の事件によって結ばれていたということでしょうか。
『悪』に魅入られた人間・賀来神父の苦悩も見所ですが
やはり、目的のためには手段を選ばない結城の行く先が気になってしょうがないお話です。
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映画化で公開が近いので、原作漫画が平積みしてあって、つい買って読んでみました。結城役を玉木宏がするなら映画も観たいなぁと、根が単純なので製作会社の思うつぼな私です。中だるみが皆無、間髪入れずのストーリー展開で、やっぱり手塚治虫はすごいすごい!とその天才ぶりを目の当たりにしつつ、一巻巻末の花村萬月のエッセイ「二元論の罠を逃れて」も読めて、得した気分でした。あんた結局どうしたいんだ?という行動をとる神父の賀来が、人間くさくてよかったです。