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終幕の舞台がギリシアとなるのだが、まさにギリシア悲劇に重なる内容だ。1970年当時の時代背景を盛り込んでメッセージを放ちながら、男女の関係、生き方を描いている。しかもそれらがストーリーに自然に配置されている。“脱皮”というモチーフが最後まで貫かれており見事だ。
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男性は手に入らない女性を時に追いかけたくなるのでしょうね。
主役の女性は常に勝ち続け、成功の道を歩きつづける。
その陰で追いかける男性たちはどん底へ転落していく。しかし皆恨めない・・
愛というより、執着というべきか・・
主役の女性が実家へ帰り、母(?)と会話するシーンは強烈です。強烈過ぎます。
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タイトルに引かれて購入した手塚作品。どこにでもいそうな田舎の娘が上京し、女優や演出家、デザイナーや小説家などの他人の才能を吸収し、「脱皮」していくストーリー。しかし、昆虫の「脱皮」は大人になるためのイニシエーションであるのに対し、主人公は「脱皮」したとしても成長しません。最後の方で語られますが、これは「脱皮」ではなく他人の「擬態」でした。そして彼女は唯一彼女自身の才能であった「擬態」の能力に彼女自身が流されていきます。いろいろと考えさせられる作品でした。
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人間誰もが多少なりとも持っている「人の知識や能力をコピーする」生きかたを誇張させ、主人公十村十枝子に演じさせた人間昆虫記。何にでもなれるが、本来の自己が伴わない主人公の巧妙さ、悪さ、そして悲しさをグロテスクな描写を交えつつ巧みに書き出しています。僕としては、あまり好きになれない手塚作品のひとつなのですが…。
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あなたは読んだ方ですか、読まされた方ですか?と、あとがきにも書いてある。これは間違いなく読まされてる方だった。なぜなら、主人公の人間の所作を模倣する生き方に何かしらの共感の念を抱いてしまったこと、そして一つのサスペンスドラマを見ているようで最後まで見なくては済まない状況になっていたこと。
決して良い生き方ではないだろうが、個性とは様々な影響を受けて形成されていくと思われる故に、非常に感慨深い作品でありました。久々に読みがいのあるマストな作品でした。
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主人公の生き様は動物として合理的だと思った。
社会の常識の範疇からは外れているが筋は通っている。
異常だと思いながらも回りの人間は彼女に翻弄される…
ここまでではないけれど現実にもそのような人は居る。
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まねたり盗んだりするのも人間の個性といえちゃうのかもしれないなと
考えさせられる作品。
人のためを思ってしていても、その人のためにならないこともあるんだよね…
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少し設定は粗いが、人間の変化・成長を昆虫にリンクさせた発想に、やる気を感じる。手塚さんはいつもそうだが、何気ない物語に世相や経済を少し絡め、ほのかな深みを創っている。何にでもなり、何をも盗む女、十村十枝子。元来、強い女性とは、このような人なのか。
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ドラマを観てて先が気になり原作を…人の才能を模倣して華麗に転身して生きる女の物語。十村と水野の対比させた描写がお見事。歪んだ病んでる社会をあの時代にこのような作品で表現していた著者に改めて感銘してしまう。最後の台詞と頁の寂寥感は圧巻ですね!
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エゴや欲望がひとりの女によって掻き乱され、堕ちぶれていく男たちの姿は滑稽で、同情する他はない。しかし一番同情すべき相手は、他人の才能を奪い取って成長する寄生虫のような十村十枝子だろう。女の変態質を鋭く描いた作品。
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何度も読み返してしまう一冊です。
大人向けの暗い手塚作品。
主人公の十枝子は他人の才能(文学、演出、写真など)を吸収しながら華々しく成長をしていく。彼女の個性が模倣であるため、他人を真似することでしか成長ができない。
裏では全てを吸いとられた果てに、命を絶ってしまったり。または愛してしまったが故に諦めたり。
ひどい主人公なのに私は嫌いになれなかった。無邪気な一面にやられてしまいました。
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都市版奇子といえる。
奇子は(正確には忘れたけど)農村における、美しすぎる女がその美しさのために世界を狂わせていく話だった。十村十枝子は都市社会においてそのような振る舞いをみせた。
奇子に比べてこじんまりとまとまったが(奇子がすさまじすぎるというのもあるけれど)、現代の「メディア・有名性・知的財産・才能」これらについて考えさせられる。
十村十枝子は極めて理想的に完璧な悪を演じているけれど、実際にはこんな人はまずいない。しかし、これに似た人は多い。つまり十村十枝子に似た振る舞いをそこそこする世界中の人々の悪をすべて吸い取って一カ所にまとめたら十村十枝子が発生しそうだ。
十村十枝子は、そういう、人まねをして、いやまあそれだけじゃなくて既存のすでに評価が安定した事柄のコピー(習得)が極めて上手なよくいる人々の究極に研ぎ澄まされた存在として描かれている。
十村十枝子っぽいひとってよくいるんですよ。
奇子を再読したくなってきた。
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ヒロインの十村十枝子は、交際する人物の才能をコピーしては、大きくなっていく様子を、昆虫の脱皮にとらえたミステリー。
才能を盗まれたオリジナルは破滅していき、時には殺され、秘密を知る者は死に追いやられるのだが、ヒロインには罪悪感が一切なく、颯爽としているのがおもしろい。
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手塚治虫がすごいのは、絵がうまいってだけでなくて、すばらしいストーリーテラーでもあるってとこだと思うんだけど、人間昆虫記もまさにそのとおりで。
イマジネーションの幅の広さと博識ぶり、この人の好奇心はとどまるところを知らないんだろうなっていうのが、この作品を読んだ感想。
「奇子」とか読んだ時も思ったけど、この人は女性の描き方、それも悪女になりきれていない女性を描くのがとても上手だと思う。
ストーリーの感想っていうより、作者への想い、みたいなレビューになってしまったけど、またいろいろ読み返してみようかな、手塚作品。
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憧れた職業の男性を模倣する(吸い取る)天才の女性・十村十四子。
女優、デザイナー、小説家、などなど。
彼女が多くの男を惑わし、破滅へと向かわせる話。
ただの悪女ものではなく、十四子自身が悩み苦しむさまが描かれているのがとてもよい。
田舎のひなびた家に「かあちゃん」の蝋人形を作り、裸でそれに甘えかかる姿や、うまく落とせない男を前に歯噛みする姿など。
したたかで強い反面、赤ん坊のように欠如を抱えた彼女の姿が新鮮だった。
だからこそ彼女の漏らす、
「私……さみしいわ……ふきとばされそう……」
という空しい言葉が生きてくる。
非常にリアルな手触りのある漫画だった。
手塚治虫の真骨頂は大人漫画だね。