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紙の本
世界のニナガワが語る『子連れ狼』
2002/12/30 13:38
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:uwasano - この投稿者のレビュー一覧を見る
『子連れ狼』(小池一夫・作/小島剛夕・画)は、1970(昭和45)年9月より1976(昭和51)年4月までの7年間にわたり、「漫画アクション」に連載された劇画である。この劇画は、複数回、映画化・テレビドラマ化され、単行本も版を変えて複数回出版されている。1995年から1996年に道草文庫(小池書院)により全28巻で文庫化された時、解説を書いたのは演出家の蜷川幸雄氏だった。その解説をまとめ、原作者の小池一夫氏との対談を収録したのが本書である。
『子連れ狼』は次のような話である。公儀介錯人・拝一刀は、裏柳生総帥・柳生烈堂の陰謀により、その地位を失う。一刀は、一子・大五郎を連れた刺客「子連れ狼」となる。烈堂は、探索方の黒鍬一族、裏柳生の配下(烈堂の子どもたち)、全国にひそむ「草」(忍びの者たち)等を動員し、一刀父子を狙う。一刀は襲いかかる敵をことごとく斬り、黒鍬も裏柳生も滅ぼす。そして烈堂との最終決戦に挑む…
人の生き死に、親子愛、権力闘争。子連れ狼から受けとれるメッセージは、古今東西で物語の基本となる、人類の原初的テーマと言える。蜷川氏の愛する物語はシェイクスピア作品、『青の炎』(貴志祐介著)等、どこか原初的な共通点がある。若山富三郎氏から「おまえたちの演劇は、哲学的でわからない」と言われたアングラ演劇から、商業演劇・テレビ・映画の世界へ進出した蜷川氏だが、物語の主題は変わらないようだ。
主題とともに重要なのは、物語の情報量である。「劇画体験というのは、大変なエネルギーを必要とする」というのが蜷川氏の言葉だが、『子連れ狼』に限らず、小池一夫・小島剛夕コンビの作品は、読むと疲れるものが多い。時代物で言葉が古いせいもあるのだろうが、練り上げられたセリフ、巧みな画、現実と虚構の折り合い、どれも膨大な情報で融合されている。このレベルの時代劇画はなかなか成立しないが、時代漫画専門誌も登場しているし、『バガボンド』井上雄彦著(講談社モーニングKC)のブームもあるので、時代漫画ブーム復活もありうるだろう。
その他、現実と虚構の絡み合いを楽しむためには歴史知識が必要だと思うが、この本でもなかなか面白い発見があった。「阿部怪異のキャラクターは金田龍之介さん」(小島剛夕氏の言葉)なのだが、テレビドラマで金田氏本人が阿部怪異を演じることになる。その演技は原作を超えたキャラクターという評判である。「拝一刀は実は“狼一頭”のもじり」であることや、「冥府魔道」「公儀介錯人」「表柳生裏柳生」は作者の造語であること、柳生烈堂は「柳生家系図の傍系に義仙烈堂の名で実在する」(柳生十兵衛三厳の末弟)など、勉強になる。
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