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東海道新幹線が1964(昭和39)年に開業してから、今年で何と50年の節目であります。
それに因み本書をここで...といふのはこじつけでして、本当は別の理由があるのでした。
俳優の宇津井健さんが82歳で亡くなり、我が家で恒例の追悼上映をしました。初ッ端に鑑賞したのは、東映作品「新幹線大爆破」。これはパニック映画全盛の1975(昭和50)年に公開された作品であります。
当時はストや度重なる運賃値上げで国民の国鉄離れが加速し、新幹線が国鉄の唯一の希望であるといふ時代でした。その新幹線を爆破させる映画などとんでもない!と国鉄は制作に協力しませんでした。それが理由かどうか、国内での評判はサツパリで、豪華スタア競演の割には不遇な作品だつたと申せませう。(近年は再評価の流れがあるやうです)
主演は高倉健さんと宇津井健さん。宇津井さんといへば、かつての新東宝を代表するスタアでしたが、会社のエログロナンセンス路線のせいで、作品には恵まれませんでした。ワイヤーで吊られるスーパージャイアンツなんてのもやらされましたね。わたくしは好きだけど。
要するにその映画を観た勢ひで本書にたどり着いた、といふ訳。著者はJR東海の初代社長となつた須田寛さん。これ以上の適役はありますまい。
第一章は「東海道新幹線のあゆみ」で、コムパクトに概観します。
第二章は「ダイヤ」のあゆみ。「一・一ダイヤ」なんて今からは想像もつきませんね。
第三章は「車両」のあゆみ。個人的には100系は名車だつたと思ひます。JR西の500系は山陽新幹線といふことで、ここでは出番なし。
第四章は「きっぷ」にみる営業制度のあゆみ。懐かしいきつぷの写真の数々。涙が出さうです。
第五章は「サービス」のあゆみ。スピードアップに比例するやうに、ゆとり空間が減る傾向があるのは残念であります。時代と共に、求められるサービスが変化するのは承知してゐますが...
第六章は「あす」を拓く、といふタイトルで品川新駅と中央新幹線を扱つてゐます。前者は既に開業済ですが、後者はリニア中央新幹線として2027年の名古屋開業が予定されてゐます。本書の時点では「国の計画」として、財源方式や整備問題を推進すべきとなつてゐる。その後JR海はしびれを切らし、独自の資本で作ることになりましたが。
初版は古いですが、東海道新幹線の歴史を概観するには、悪くない本であります。続篇も出てゐるので、そちらもどうぞ。
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