紙の本
資料集として、または東海道新幹線の事典としての価値を評価すべきなのかも知れない。
2001/01/29 12:25
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投稿者:松本 典久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
須田寛氏は、東海旅客鉄道株式会社(JR東海)の初代代表取締役社長で、現在は同社の代表取締役会長を務めている。1954年、国鉄に入社して以来、主に営業面で活躍され、国鉄晩年には常務理事にも就任。鉄道一筋、特に新幹線については生き字引とも言える方である。
そんな経歴ゆえ、これまでにも新幹線関連の著作は多いが、これはJTBキャンブックスシリーズとして、写真や時刻表、新聞記事などふんだんな資料を一冊にまとめたものだ。
本書はカラーグラフをトップに、「通史」「ダイヤ」「車両」「営業制度」「車内サービス」「明日の新幹線」と6つの章によって構成されている。それぞれの章では、年代を追った精緻な解説がなされ、全体として新幹線の歩んできた道を的確に捉えることができる。
趣味的に興味深いのは、例えば、開業前の状況。カラーグラフでは、試運転中の試作編成(窓が六角形の車両もあった!)、そして新幹線の線路を走る阪急電車など、貴重な写真が盛りだくさん。新聞発表された車両構造図など、あまり露出されていない資料も多い。
ダイヤの変遷も面白い。例えば、開業当初は、「ひかり」「こだま」が1時間に1本ずつ運転されているだけで、所要時間も東京〜新大阪間で「ひかり」が4時間、「こだま」が5時間かかっていた。一方、現在では「のぞみ」も走り、所要時間も「のぞみ」で2時間30分となっている。これをどのような形で運行しているのか、時代を追ったパターンで解説。その仕組みになるほどと思わせる。
もっとも、専門的で、かつ非常に盛りだくさんな内容ゆえ、簡単に通読できるような本ではない。資料集として、または東海道新幹線の事典としての価値を評価すべきなのかも知れない。
家庭・実用・女性ジャンルの21世紀最初に読む本に選ばれました。
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内容はかなり充実しています。
特に、東海道新幹線黎明期に関する資料は?より詳しく書かれている。
でも、個人的に面白かったのはダイヤ史。開業当時の「1-1ダイヤ」から、増発していく過程を一つ一つ丁寧に書いている。
工事中の写真や、過去の時刻表、運賃案内、「ひかり」「のぞみ」の停車駅の変化などの資料も充実している。
割と歴史が浅いだけあって最初の「0系」から馴染みが深い車両なので、同シリーズのほかの本よりも若い人が楽しめる内容ではないだろうか。
ただしちょっと残念なところが・・・
・東海道新幹線に花を添えた「500系」に関する記事が殆どない。500系より後から出てきた「700系」については詳しく書かれているのに。
・この本が出たのが品川開業前だったので、品川開業による「のぞみ」中心ダイヤやのぞみ自由席などの最近の話題については扱っていない。
・他、山陽新幹線関連の話題は殆ど触れられていない。東海道の車両が山陽に流れていったりするといった要素もあるので、山陽関連の記事をもう少し増やして欲しかった。
ダイヤ史や車両についての解説は?にも書かれているので、とりあえず今読むなら?のほうがいいかもしれません。
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東海道新幹線が1964(昭和39)年に開業してから、今年で何と50年の節目であります。
それに因み本書をここで...といふのはこじつけでして、本当は別の理由があるのでした。
俳優の宇津井健さんが82歳で亡くなり、我が家で恒例の追悼上映をしました。初ッ端に鑑賞したのは、東映作品「新幹線大爆破」。これはパニック映画全盛の1975(昭和50)年に公開された作品であります。
当時はストや度重なる運賃値上げで国民の国鉄離れが加速し、新幹線が国鉄の唯一の希望であるといふ時代でした。その新幹線を爆破させる映画などとんでもない!と国鉄は制作に協力しませんでした。それが理由かどうか、国内での評判はサツパリで、豪華スタア競演の割には不遇な作品だつたと申せませう。(近年は再評価の流れがあるやうです)
主演は高倉健さんと宇津井健さん。宇津井さんといへば、かつての新東宝を代表するスタアでしたが、会社のエログロナンセンス路線のせいで、作品には恵まれませんでした。ワイヤーで吊られるスーパージャイアンツなんてのもやらされましたね。わたくしは好きだけど。
要するにその映画を観た勢ひで本書にたどり着いた、といふ訳。著者はJR東海の初代社長となつた須田寛さん。これ以上の適役はありますまい。
第一章は「東海道新幹線のあゆみ」で、コムパクトに概観します。
第二章は「ダイヤ」のあゆみ。「一・一ダイヤ」なんて今からは想像もつきませんね。
第三章は「車両」のあゆみ。個人的には100系は名車だつたと思ひます。JR西の500系は山陽新幹線といふことで、ここでは出番なし。
第四章は「きっぷ」にみる営業制度のあゆみ。懐かしいきつぷの写真の数々。涙が出さうです。
第五章は「サービス」のあゆみ。スピードアップに比例するやうに、ゆとり空間が減る傾向があるのは残念であります。時代と共に、求められるサービスが変化するのは承知してゐますが...
第六章は「あす」を拓く、といふタイトルで品川新駅と中央新幹線を扱つてゐます。前者は既に開業済ですが、後者はリニア中央新幹線として2027年の名古屋開業が予定されてゐます。本書の時点では「国の計画」として、財源方式や整備問題を推進すべきとなつてゐる。その後JR海はしびれを切らし、独自の資本で作ることになりましたが。
初版は古いですが、東海道新幹線の歴史を概観するには、悪くない本であります。続篇も出てゐるので、そちらもどうぞ。
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