姉・美空ひばりの遺言 隠された愛と真実 みんなのレビュー

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投稿者：伊藤竜太　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　妹・勢津子が語る美空ひばりの姿。

　歌謡界のトップをひたすら走り続けた美空ひばりを、少女時代から死の病床まで見つめつづけていた妹。ただ身内というだけでなく、歌手美空ひばりを尊敬するひとりのファンとして、そして姉の遺志を継ぐ歌手として今、ひばりの歌を歌い続けている勢津子がつづる、姉の想い出。

　どんな歌もすぐに覚え、いつも明るく力強く、超人的な才能だけで生きていたように思われがちな美空ひばりだが、その実はたいへんな努力家で、人知れず何百遍も練習を重ね、人に見せぬ涙を心の内にかみしめて生きていたという。妹だからこそ知っている人間美空ひばりの素の姿を見て取れる。

　そんな姉から妹へのメッセージ……

「今日　涙して　明日　又　笑おうぞ
　いつまでも妹よ
　勢津子へ　　　　　　　美空ひばり」

　母親の大きな支えがあったからこそ、美空ひばりの歌は世に響きわたった。

　身内に対しても、誰に対してもいつも気遣いを忘れず、苦難に対してもひとつの不平をも言わずに耐えて乗り越えた美空ひばりが、ただひとり妹には病床で、わがままを洩らしたという。

　芸能界のトップを走り続けながら、ときには誹謗中傷を浴び、人には計り知れない苦労も多かった。そんな中で支えあい、力強く生き抜いた母と娘、姉と妹の想いが心に沁みる。

　美空ひばりの歌を永遠に心に刻んでいくために、この書を手にとってみてほしい。
（伊藤竜太・フリーライター）