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紙の本
自分勝手な親たちに翻弄されながらも、心ある人たちに支えられて自分さがしをしていく少女の家出の物語。苦境を救うのはユーモアだと教えてくれる。
2001/11/02 12:51
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投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
『心のおもむくままに』『うわの空で』などで人気が定着したタマーロは、ヤング・アダルトのイメージを代表する作家だ。日本でいうと湯本香樹実、森絵都、たつみや章、梨木香歩といった30〜40代の女性作家が活躍しているのと同様、欧米でも、その年代の女性作家たちがティーン・エイジャーやそのマインドをもつ人たちに向けてファンタジーを書きメッセージや生活観、世界観を提示しているという符号が私には興味深い。産業社会が来るところまで来て飽和状態になり、幸福追求のための合理化という価値観が通じなくなってきたこのとき、心ある作家たちが期待を寄せるのは、自分の姿を熱心にさがし求める中高校生のエネルギーに対してなのだ…などと考えてしまう。
この物語は8歳のマルティーナという少女の家出の話。旅に出て、自分を慣れない空間に置いてみたとき、自分やその周りの世界、あるいは日本というものを客観的に眺められるのと同じで、幼い子どもたちにとって家出は、一種の自分さがし、自分の発見という成長のための通過儀礼なのだと思う。
マルティーナは幸せな家庭生活を送っているわけではない。郊外のマンションの5階に住んでいる一家の生計を支えているのは掃除婦のママ。機械技師だったパパは、失業して気持ちが荒れている。年若い結婚で、大学に進学したいというママの夢、レーサーになりたいというパパの夢は、永遠の愛という夢にのみこまれてしまったけれど、結婚式の写真で二人の瞳はぴかぴか光っている。つまびらかにはされていないけれど、二人の結婚の裏には、どうやらマルティーナという存在があったようである。子どもの誕生は若い夫婦には「厄介ごと」だった。家事と育児の負担が言い争いの種とならないときはなくなってしまった。
汚れた部屋で満足な愛情をかけられずに成長したマルティーナにとって、希望の光は、宿題を手伝いに週2回通ってくることになった母方のおじいちゃん。物知りのおじいちゃんは新鮮なものの見方、常識を少しずらしてものの本質をとらえようとする姿勢を教えてくれる。ふたりはブリキ缶や花、シーツやモーターなどの物が話す言葉を聞こうとしたり、おじいちゃんが飼い主、マルティーナがトビアという名の犬になって遊んだりする。
世界への扉を開ける鍵をおじいちゃんの言葉から授かったマルティーナだが、突然おじいちゃんの訪問が途絶える。それと時を同じくして、パパとママの喧嘩は行きつくところまで行きついてしまい、二人が順に家を出て行く。別の道を見つけなくてはと考えたマルティーナも家を出ることにする。町をうろつき回り、警察に通報されそうになったマルティーナが隠れたのは、盛んな発酵作用で温かいゴミ箱のなか。翌朝、ゴミ回収で危ないところをホームレスの女性に助けられる。鉄橋の下のゴミの城で安心するのも束の間、警察がやってきて、逃げ出さなくてはいけなくなった。再び一人ぼっちになったマルティーナが、友達がほしいと強く願っていると、そこへ翼をもつ妖精が現れ…。
子どもを取り巻く現代の普遍的な問題を、暗くならないようユーモアという救いを頼りに綴ったファンタジーである。
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