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紙の本
ラッコの観察記録
2001/09/14 10:17
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岡埜謙一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ラッコの実物を見たことがなくても、名前はほとんどの人が知っている。むしろ一度も見たことのない人のほうが少ないくらいだろう。いまやパンダやコアラと並んで、日本人に極めてなじみ深い動物になった。数ではパンダやコアラよりはるかに多い。本書の舞台になった鳥羽水館にラッコがやってきたのは1983年というから、もうじき20年になり、現在では日本各地の水族館や動物園にラッコが増えている。本書によると、全国28の施設に95頭ものラッコがいるそうだ。私は鳥羽水族館には一度も行ったことがないが、東京・池袋のサンシャイン水族館にはずいぶん通ったものだ。テレビや写真でその姿はよく知ってはいたが、石で貝を割るあのラッコの仕草を実際に見たときには、感激と同時にその大きさに驚いたものだ。あの可愛い姿や仕草から、小さい動物というイメージがなんとなくあったからだ。名前と毛皮の色だけは子どものときから知っていた。私の祖母がラッコの襟巻きを持っていたからだ。戦前に買ったものだそうで、毛皮の柔らかい手触りはいまでもよく覚えている。しかしどんな動物かということは、祖母も知らなかった。あの素晴らしい毛皮が、日本近海にいたラッコに災いをもたらしたわけだ。
本書は1983年、鳥羽水族館にラッコが来た当時の飼育記録をあらたに再現したもので、受け入れ現場の当惑や混乱、驚きが生き生きと描かれている。著者の中村さんは、当時広報担当の企画室を設立した直後で、ラッコの宣伝にかけずり回っている。いまでは信じられない話だが、当時ラッコの名前を知っている人はほとんどいなかったらしい。日本で初めてラッコを飼育したのは鳥羽水族館だと思っていたら、そうではなかった。静岡県の伊豆三津シーパラダイスが1年早かったということを本書で知った。さて本書では、ラッコの習性や詳しい生態(あくまでも鳥羽水族館での)がたくさんの写真入りで紹介されている。おなじみ石を使った貝割りから、ラッコのいたずら、子育てまで、大人が読んでも子どもが読んでも楽しい話が詰まっている。専門的で難しい話は一切なし。なんといっても面白いのは、毛皮をたるませて、そこにお気に入りの石や餌になる貝などをしまいこんでおくというポケットの話だ。あの石を普段どうしているのか疑問だったが、本書を読んで眼からウロコが落ちた。子育ての詳細な観察記録もたいへん興味を引く。本書に書かれていることはすべて、現場でいつもラッコに対峙している人でなければわからないことばかりだ。観客としてたとえ何回通ったところで、ラッコはそのすべてを見せてくれるわけではないのだから。その見られない部分を本書で補うといい。私も本書を読んでまたラッコを見に行きたくなった。
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