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貸金庫
キューティ
ぼくになることを
繭
百光年ダイアリー
誘拐
放浪者の軌道
ミトコンドリア・イヴ
無限の暗殺者
イェユーカ
祈りの海
解説 瀬名秀明
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イーガン作品は美しいです。深い余韻が残ります。短編集なので読みやすいけど、SF初心者には少しきついかもです。
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SF短編集。SFではあるけどメインテーマはアイデンティティかな。
とにかく巧みなアイディアに驚かされるけど、ちょっと取っつきづらい文章なのでハードSFに慣れてる人向けかも。そこを乗り越えれば面白いよ!
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初イーガン。難しいけど面白かった。表題作「祈りの海」がすごい。科学と宗教の折り合いはいつの時代もつきにくいんでしょうね…。「貸金庫」「キューティ」も印象深かったです。
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90年代以降では最高のハードSF作家のひとり、としてその筋ではつとに名高い作家の短編集です。90年代以降のSFは短編集の拾い読みぐらいしか体験したことのない鴨、どんだけトンガった作風なんだろうと心してページを開いたら、意外にも淡々として優等生風のイメージでちょっと拍子抜けしましたヽ( ´ー`)ノ最新の科学理論を生身の人間の日常レベルに溶け込ませて新たな視点を提供するのが、この人の作品の特徴のようです。科学理論なくして物語が成立しない点では明らかにハードSFでありつつも、物語の主眼はあくまでも人間ドラマ。がちがちのSFというよりも、昔ながらのアイデア・ストーリーといった方がしっくり来るかもしれません。
もう一つの特徴は、収められている短編のほぼ全てが「アイデンティティ」をテーマとしていること。冒頭の「観測される自己」とは、解説文を寄せている瀬名秀明氏がイーガンSFの共通テーマとして挙げている言葉です。実に言い得て妙な表現です。ストーリーの終盤でも明確なオチはなく、読者を突き放して考えさせるようなラストが多いです。イーガン本人のテーマでもあるんでしょうか。
鴨的に印象に残った作品は、「キューティ」「繭」「放浪者の軌道」「無限の暗殺者」あたりかなぁ。「キューティ」の主人公の気色悪さはSF史上に残るかもしれない(^_^;「繭」は「こういう視点でもSFが書けるんだ」という新鮮な驚き、「放浪者の軌道」は世にはびこる宗教の本質を突いた鋭さがそれぞれ印象的でした。「無限の暗殺者」はよくある多元宇宙ものではあるんですが、ここまで多元宇宙をダイナミックに描いた作品はなかなかないと思います。
でも何よりもインパクトがあったのは、登場する男性キャラの壮絶なまでの情けなさですね(笑)偶然の一致なのかイーガンが狙ってるのか、何故か女に振り回されて(しかも惚れ込んだ女でもなくただ惰性で付き合っている程度の女ヽ( ´ー`)ノ)自分では「やばい」と自覚しつつもずるずると自滅していくパターンの主人公が何と多いことか。ひょっとしてイーガン自身もそうなのかヽ( ´ー`)ノ人間ドラマに重きを置いている分、この情けなさがまたイヤにリアリティがあって尾を引くんですよ。最たる者が、「キューティ」の主人公です。ここまでくると、情けないのを通り越して腹立ってきますね。
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イーガンさんの短編です。
キューティを読むたび、
肉体は弱いもので魂だげ不滅だ
っていう某映画の台詞が頭に浮かぶ。
しかしながら、人間というやつは魂だけでは触れ合えなくてイレモノも必要なんです。
だから貸し金庫の主人公は自分自身について彷徨い続ける。
この人の物語からはプラトニック過ぎるというか、バカ正直すぎるものが詰まっている。数学者のさだめなのかな?
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いまSFを読み漁っているけど、
グレッグイーガンの作品が一番いい気がする。
抵抗なく読めて、いろいろなことを考えさせられる。
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進みすぎたテクノロジーと、それに置いていかれた人の精神を取り扱う、イーガンならではのセンスが光る短編集。
あらすじを語ること自体がネタバレになってしまうので、実にもどかしいのですが…。
短編集の一話一話の密度が濃く、どれも考えさせられます。
「ぼくになることを」を読んだショックは相当なものでしたし、
「貸金庫」は今まで読んだSF小説の中で一番ほろりと来ました。
紙面には、幾何学や量子力学の話題がばらばら出てくるので、一見読みづらいと思うかもしれませんが、そんなのは雰囲気作りの装飾です。本質はもっと分かりやすくて、不可解なところにあります。最初は苦痛に感じるかもしれませんが、是非読み通してみてください。
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しあわせの理由に先立つ短編集。楽しみにしていた作品だ。
なかなか面白い「貸金庫」、人口赤ちゃんの話「キューティ」、脳のスイッチを描くディック風の「ぼくになることを」、発想は面白いがイマイチの「繭」、未来日記がテーマだがひねりが見られない「百光年ダイアリー」、脳のコピーを題材として面白いのだがオチガイマイチの「誘拐」、意味不明の「放浪者の軌道」、わからないでもないが乗り切れない「ミトコンドリア・イヴ」、ほとんど読み飛ばしてしまった「無限の暗殺者」、同様に読み飛ばした「イェユーカ」、表題作かつ中編並みの分量を誇るものの感性には訴えない「祈りの海」。
どうも私はイーガンとは相性が悪いようだ。
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短編集。
どれも人のアイデンティティを問うような作品で、アイデアは素晴らしく、雰囲気も良いです。
最初はとても楽しく読んでいたのですが、どれも同じようなテーマ、展開、結末でだんだん飽きてきてしまいました。
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2011年12月26日読了。23日に挙げた2編の短編はイーガンの中では「やさしめ」の内容か?ハードといってもいいほどのSFなのだが、読み終わると「人間とはなんだろう?人間の認識とは、なんとはかないものなのだろう?人間が拠って立つことのできる前提とは、一体何なんだろう?」など、答えの出ない問題を延々と考えさせられてしまう。とにかく面白い。
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2011年12月23日読書中。読み終わっていない本は基本的に登録しない主義だが、あまりに面白いのでつい。「キューティー」「ぼくになることを」難しすぎない内容だが、どこまでも奥行きが深く面白い。激しく興奮中。
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ハードSFの大家グレッグ・イーガンの11の短編を収録した本書は、文中の言葉を借りるならば、「きみがきみであること」「自分が何者であるか」、すなわちアイデンティティを共通したテーマに据えている。
SFの手法でアイデンティティを語る作品としては、個人的にはロボットを題材にした作品が多い印象を受けるのだけど、本書においてはそれに依存することなく、多彩な視点からアイデンティティを捉えている。
ヒューゴー賞/ローカス賞を受賞した表題作もさることながら、次の2作品が特に素晴らしかった。
・『ぼくになることを』
衰退する脳を排出し、その代わりに衰えることを知らない"宝石”を移植することが一般化した未来社会。"宝石”を移植しても、その人物の思考は従前までと何も変わらない(移植するまでの間、脳と"宝石”は常にシンクロナイズされているからだ)。だけど、脳のない人間は、果たして"人間"と呼べるのだろうか…
"宝石”の移植を頑なに拒む主人公の顛末。それが、とにかく割りきれなくて、心に刻まれるほど気色悪い。
・『百光年ダイアリー』
未来には行けないが、知ることはできる社会。主人公をはじめとした一般市民は、"未来の自分が記した日記"により、将来を理解していた。"自分という存在"は、過去と未来の自分によって形作られる。そんな社会を甘受していた主人公だが、ある日、歯車が狂い始め…
アイデアとなにより展開が秀逸!これは面白かったなぁ。
全作品を通じて、とにかく後味は良くない。
心を覆い尽くすのは、不安。だけど一抹の希望が潜んでいることを否定できない。
そんな不透明な心境に陥るのだけど、でもアイデンティティを認識した時って確かにそんな気持ちかもね。決して爽快な気分じゃないと思うんだ。
そう考えると、微妙なセンチメントを表現してくるグレッグ・イーガンは、流石と言わざるを得ない。
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SFの短編集。
読み終わった感想は、なんだか、頭が筋肉痛になったような感じがする。頭の中の、普段使ったことのない部分を使った感じ。11の短編が収められているが、僕自身がこれまでほとんどSF小説を読んだことがないので、ついていくのが結構大変な感じがするのだ。
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(後半に若干ネタバレがあるので、”続きを読む”を押すときはご注意を)
難しくてわかりにくいところもあるけれど、それが投げかけてくるのは誰にも分かる大きな問い。それは「自分とはなにか?」というもの。当然というべきか、読んだ後の感動するというよりは考えさせられるお話が多いと感じました。ちょっと内容が難しくて、頭に入ってくるまでにかなり時間がかかりました。
以下、印象に残った話について、あれこれ考えずにあらすじ、疑問や感想を書いてみます。
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「貸金庫(The Safe-Deposit Box)」:様々な人を宿主にしながら生きる主人公。彼は宿主を演じる物真似役者。他人の人生のわずか数日を分け与えてもらいながら生きる彼の人生は、彼自身のものなのか?
「キューティ(The Cutie)」:妊娠から体験できる限りなくリアルな擬似的な赤ん坊「キューティ」。すごく乱暴にいえば、それは、限りなく人間に近くて、”人間”になる前に死ぬように出来ている人形(少なくとも法的には人間ではない)。キューティは人形なのか人間なのかという葛藤のすえに主人公がとった行動に納得がゆくか?
「繭(Cocoon)」:LEI社が開発したのは、母体の血に含まれるウィルスなどの汚染物質から胎児を守るバリアー。それは胎児をくるむ繭。けれどそれは、「なにが胎児に必要か」をLEI社が単独で判断できるということ。LEI社は同性愛に関わる性的ホルモンに干渉することで同性愛を完全に防げるものにした。その結果として生じる差異をもつ少数者の排除をどう考えるか?長期的な利害はともかく、胎児の生まれる権利をどう考えるか?
「百光年ダイアリー(The Hundred Light-Year Diary)」:よくわからなかった。時間逆転銀河を使って過去の自分へメッセージを送り、未来の自分からのメッセージを受け取る。つまり、人びとが未来を知っている世界。けれど、そのメッセージを見ても見なくても結局その通りになるし、それは回避できない。未来から逃げられない憂鬱感が残る。
「誘拐(A kidnapping)」:死のあとも自分が存在していられるように、仮想世界に自分のコピーを持つ時代。主人公は、仮想世界の妻を人質にとられて身代金を要求される。けれど現実の妻は無事だし、そもそも仮想世界を嫌う妻が仮想世界にいるのはおかしい。偽者であることは明らかなのに、主人公は偽者であっても仮想世界上の妻を失いたくない一心から犯人の要求に応じてしまう。
なぜ、仮想空間上の妻が現実世界の本人にどこまでも似ているのかという説明が面白いと思った。けっきょくのところ、他人を理解することとはそういうことではないか?
「ミトコンドリア・イヴ(Mitochondrial Eve)」:遺伝子から最初の人間を辿ろうとする試み。母系から伝わるミトコンドリアDNA(イブ)か、父系から伝わるY染色体(アダム)かという対立のあいだで、主人公の研究が導き出した答えは・・・。
今を生きる人類に共通する個体がいることは「ひとつの家族に属しているという深遠な気持ち(p. 262)」をもたらすといいつつ、主人公だって深遠な気持ちなんて全く感じていないし、結局はその見解を巡って大騒動に発展してしまう。おまけには双方ともそれぞれイブやアダムを想像で作り変えて美化するありさま。「自分が正しいと思ったことをするがいい、どうせそれは正しいんだから(p. 289)」にすべて要約されていると思った。
「イェユーカ(Yeyuka)」:血中の状態の把握と治療を瞬時に行う「指輪」が普及した時代。医者である主人公は執刀医が必要とされるウガンダへゆく。そこでは奇病のイェユーカが流行っていたが、じつはこの病気の対処法はすでにほとんど明らかになっている。
ソフトウェア会社がわざと非能率なプログラムを書くことでつねに新製品を売りつけるように、生命に対しても企業の利益のために「手の込んだ詐欺」が行われている。
「祈りの海(Oceanic)」:人類の子孫が住む惑星コヴナント。宗教的な神秘体験からベアトリスと出会い、奇跡を体験する。ところが実は・・・というお話。自分がそれまで奇跡だと”信じ続けてきた”ことが一瞬で崩壊し、無意味なものとなってしまう。信仰はそれ自体が自分の生きる価値と結びついていて、やがて信じること自体が生きる目的になってしまう。正しいと思ったことが正しいという考え方ととても似ていると思う。
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生命科学・時間・次元など幅広い分野を題材にしているSF短編集。全体的に暗いトーンで時おりゾクっとする怖さがあって面白かった。