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紙の本
自然との孤独な暮しをうたう句集と雑記、その解説
2001/01/27 03:15
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投稿者:格 - この投稿者のレビュー一覧を見る
酒と旅に期待したのだが、直接、それをうたったものはほとんどない。しかし、自然と孤独に暮らす『淋しさ』と人恋しさのようなものを十二分に感じることができる。そして、どことなくユーモアを感じる。
作者は明治18年生まれ。一高、東大をでて、30歳で東洋生命において課長にまでなるが、突然、課長を罷免されたことから辞職し、以後、放浪の生活を送るようになった人だ。そして、各地の寺などでの生活を送りながら、41歳(大正15年、1926年)の若さでなくなった。課長罷免の理由は明に書かれていないし、俳句にもそれはうかがわれないが、どうも『酒』が原因らしい。そうとう暴れるのだろうか。若くして亡くなった理由は、直接には肋膜炎ということだが、間接的にはやはり『酒』が原因なのかもしれない。
中学の頃から俳句を作り始めたらしいが、この句集の編者であり、放哉の句の師匠であり、また、友人であり、そして、ほぼ唯一の頼れる人であった荻原井泉水によれば、放浪の生活を送るようになってから、彼の俳句が光るようになってきたとのこと。そして、最後の1年もない小豆島で暮らすようになってから、いよいよ燦然たる光を発する様になったとのことである。たしかに、この解説を読む前に、面白いと思った句にマークしていたのだが、放浪前の句には一つもマークがなかった。では、そういう心境であれば、だれでもいい句を作れるかと言えば、やはり、井泉水によれば、そうではない。表現ができなければならないのだ。これは、俳句に限らず、すべての芸術に言えることであろう。でも、逆もまたそうで、能力さえあれば、何の不自由もない暮しをしている人に芸術を生み出せるか、いえば、それはできない、ということも言えるのではなかろうか。
少しだけ、句をあげておこう。
『淋しい寝る本がない』夜長、読む本がないくらい淋しいことはない。たまたまなのではない。ずっとなのだ。買う金がないからだ。寝るしかない。もしかすると、枕すらなく、そのかわりの本までないのかもしれない。
『臍に湯をかけて一人夜中の温泉である』バカ! おもしろい奴だ、という感じだが、あまりの寂しさに涙を誘われる。
『やせたからだを窓に置き船の汽笛』これ以上の淋しさの表現があろうか。放哉は、つらい旅を望んではいないのだ。静かにその場で死んでいくことを願っている。でも、この汽笛は、旅を、そして、まだ生きることをほんの少しだけ考えさせたのだろうか。
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