- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
紙の本
「官吏は人間の屑である」と言い放って,民間による九電力会社体制を築いた男の信念の強さがまぶしい
2001/01/31 18:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:野口 均 - この投稿者のレビュー一覧を見る
電力の鬼と言われた松永安左エ門の伝記である。明治,大正,昭和にかけてぼっ興する日本経済のど真ん中を自由奔放に押し歩いた生涯なので,面白くないはずがない。福沢諭吉,福沢桃介,武藤山治,小林一三,山下亀三郎,池田成彬,近衛文麿,吉田茂,池田勇人など同時代の政財界の大物たちも,松永の強烈な光りを浴びて躍動している。そして,これらの人物の活躍を通じて,日本経済の鼓動も生き生きと伝わってくる。
事実に基づいたノンフィクションで,人物を活写するのは難しいものだ。だが作者は松永だけでなく福沢桃介,小林一三,山下亀三郎,近衛文麿など多くの個性的な人物を,下手な小説では及びもつかないくらいに見事にそ生させた。
作者が,松永のような強い信念を持つ骨太な人物を歴史からよみがえらせた意図は明らかだ。プロローグで,あえて松永の発言が問題を引き起こした「長崎事件」を紹介している。松永は,軍部と官僚が結託して統制経済を押し進めた昭和12年,内務省の超エリート官僚でもある九州各県の知事がヒナ壇に居並ぶ前で,聴衆の中小企業経営者たちに向かって次のように言い放ったという。
「産業の振興はみなさんの発奮と努力が第一です。官庁の力に頼るなどは,もってのほかです。官吏は人間の屑だ。官庁に頼る考えを改めない限り,日本の発展は望めません」
松永のこの発言が,今日ほど身にしみる時代はないのではなかろうか。この発言のあと,松永は大蔵大臣就任を近衛文麿から要請されたにもかかわらず,統制経済が押し進められるのに反対して,引退してしまう。自説を曲げぬ勇気と鮮やかな出所進退,まさにタイトル通り「爽やかなる熱情」である。しかし,「官吏は人間の屑だ」をタイトルのどこかに入れた方が,多くの人に読んでもらえるだろう。それが,ちょっと残念だ。
(C) ブッククレビュー社 2000
1 件中 1 件~ 1 件を表示 |