紙の本
「自立」は男の目的か
2002/01/02 22:49
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投稿者:とーも - この投稿者のレビュー一覧を見る
橋本治流の、一種の人生論の本。テーマは「男の自立」というコトバだが、実際の主張は「自立は単なる出発点であり目的ではない、大事なことは自分の頭で考えて行動する一人前の人間になることだ」という、まあ要約すればひどくありふれた、陳腐にさえ聞こえる思想である。
彼のこの種の本は、いつも論理の飛躍がかなりひどい(結論が間違ってるというのではないのだが筋道がたどりにくいのだ)。しかし、この本はややていねいに一歩一歩進めながら書いているので、筋を見失うことはない。ま、そのぶん、あの天衣無縫な持ち味が薄いとも言えるが。
しかし、同じ人生論の本ならば、やはり「絵本・徒然草」などの方がはるかに充実していて良い出来かもしれない。かれは何といっても、古典文学の「鑑賞」がもっとも得意で面白いのだ。長いメロディーの創意には乏しいが、他人のメロディーを借りて複雑絢爛な織物を創り出す編曲家の才能に通じるところがあるのかもしれない。
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著者の体験をふまえて世の野郎共に「男とは?」をつらつら200ページも語っているが、
「自分のやるべきことへの覚悟」
「できないこと、わからないこと、知らないことを認めること」
「それらを当たり前にやって一人前になること」
男の生きる道とはそういうことのようです。
当たり前のことを当たり前にやるのって難しいよね。
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橋本治の本は、いつも目からウロコな記述ばっかでほんとビックリする。当たり前と思って見聞き逃してたことが、げっ本当だ、すごいってなる。このこと、なんで誰も言わなかったんだろ。って。
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「男の自立=家事を手伝う」になってしまう短慮を批判し、本当の「男の自立」とは何かを論じた本です。
「あんたは自立してない」と男を批判する女は、「じゃ、どうすればいいの?」と男がたずねると、往々にして、「男は威張っているだけで、私がするような家事をロクにできない」という答え方をしてしまいます。その結果、男が家事に精を出すようになったとしても、それは「息子に家事を手伝わせない母親への従属」から「夫に家事をさせる妻への従属」に代わっただけで、「男の自立」はどこにもないと著者は喝破します。
そこから、「大人」「子ども」「家庭」をめぐる長い議論を経て、「できない、わからない、知らない」を認めようとせず、自分を「ゴタイソーなもの」だと思い込んでしまうことの恥ずかしさに気づいて、責任を持った「一人前」の男になることこそが、本当の「男の自立」だ、という結論へと至ります。
ただ、冒頭で「「男の自立」は、女に好かれるのとは逆の方向にある」と言われているのを見ると、こうしたゴチャゴチャした議論が全部、「男の独りよがりにすぎない」と言われてしまうことへの予防線を張っているだけではないか、という疑問も感じてしまいます。もちろん、そうした非難を受けることも全部ひっくるめて、「一人前」になることが「男の自立」だ、というのが著者の議論なのかもしれませんが、これは、著者ほど強くない男にとってはかなり厳しい道なのではないでしょうか。「黙って家事でもやっとくか」というところでお茶を濁してしまう男の気持ちもよく分かるのですが。
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私が何回も定期的に読み返してしまう本です。
男はどう生きるべきか、という「生き方」に関しての本ですが、
「生き方」自体が、ほぼ死語となっている中で、
こういうテーマで書けること自体が凄いことです。
橋本治氏のような「知性」が、もっと日本にいたらいいのにと、
個人的には思いますが、後にも先にも、出てこないでしょう。
出版されたのは20年前以上も前ですが、
今見ても、全く遜色ありません。
また、氏の著作の多くは、今見ても、
なるほどな、思わせます。
『貧乏は正しい!』など、90年代初頭の作品で
もうすでに、資本主義は終わりましたと指摘していますから、
その慧眼には脱帽です。
20年以上の未来の世界並びに日本の姿を予測していた、、、、
嘘はったりではなく、自分の知性のみにたよって、、、
こんな芸当ができる人間がこの世界にいることが、
奇跡でなりません。
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仕事も含めて、「できないのは、わからないから」「わからないのは知らないから」と著者は説く。それは、人間関係も含めて。
素直にできない、わからない、知らないを認めて、一旦落ち着くことを提唱する。出来ないことを認めるとは、すぐに出来るようになきゃならないというのも違うと言う言説に、少し安心。
家庭も、会社も社会も、人間の作るもの、どこかにとっかかりがあると信じて、恐れず、逃避せずに、一人前への道を粛々と歩みましょう。