紙の本
面白くないことはないんだけど…
2002/05/31 12:16
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投稿者:ひろぐう - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品はクーンツがリー・ニコルズという女性のペンネームで書いた5作品のうち唯一未訳だったもの。昨年(2001年)ようやく文庫化された。ニコルズ名義の他の4作は『闇の眼』『戦慄のシャドウファイア』『邪教集団トワイライトの襲撃』『雷鳴の館』で、うしろの3作などは僕の好きなクーンツ作品ベスト5に入るくらいだから、この作品に対する期待も大きかった。で、結論からいうとかなり期待はずれ。面白くないことはないんだけど、やはり『シャドウファイア』なんかを読んだ後では物足りない。というのもこのお話、全然ホラーではなくて、クーンツ作品中唯一の「まともな」スパイスリラー、しかも舞台はほとんどが日本の京都というユニークなもの。アイディアそのものはクーンツらしい派手なところもあるのだけれど、どうも違和感があって乗りきれなかった。その違和感の最大の原因は1995年に再版された際に、東西冷戦の終結という今の国際情勢に合わせて大幅に書き直されているところだろう。お話を後から継ぎはぎしたのが見え見えで、あまりにも作り物っぽくて不自然なのだ。その辺の作り物クサさを感じさせないのがクーンツのはずなんだけど…。
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D・クーンツが違う名義で書いていた昔の作品のリメイク。なんと、舞台が京都なんですねぇ。外国人からみると京都ってこんな感じなのねぇ、京都に行ったことあるんだ、なんて思ってたら、なんとクーンツは来日すらしたことないらしい。なのに、このリアル。てか、行って見なくてもリアルに書けなきゃ、作家じゃないだろ(笑)
クーンツは作の質にちょっとムラがあるので、これは異国性に振りまわされたかなって思う所があるが、最後までぐいぐいもっていく所はさすがだ。キャラクターも相変わらず魅力的。
某A社以外で頑張ってくれてるのは、創元だけだ。もっと頑張ってくれ!!
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個人的にはクーンツはサスペンスよりホラーの方が好き。関西に住んでいるので、京都の描写にはちょっと微笑んでしまったが、良かったのは良かった。
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これが、あの......(^_−)−☆✨、
古くは「ベストセラー小説の書き方」でも言及された、日本が舞台のサスペンス( ´ ▽ ` )ノ。
来たことないのに、よくここまで書けるもんだね( ´ ▽ ` )ノ。むしろ、在住経験のある作家の書いた「いちげんさん」の方がよっぽどキワモノ( ´ ▽ ` )ノ。
話としては、いかにもクーンツ( ´ ▽ ` )ノ。
が、ラスト(謎解き)の一切合切を敵役の告白で済ましちゃうとはなぁ......
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今回のクーンツは近年の作品の中では上位の部類に入る力作だと思う。
『ベストセラー小説の書き方』で日本を舞台にした作品を書いた件が述べられていたが本作がそれ。この作品を書くに当ってクーンツは京都への取材はせず、日本に関する膨大な資料と日本に詳しい知人への訊き込みで書いたというが、とても信じられないほどの緻密さである。
過分に日本人の礼儀正しさを賞賛しているような気がするが凡百の外国作品に見られる「日本人」=「ちょんまげ」というような荒唐無稽さは無く、当時日本に住んでいるクーンツの知人から日本に取材に行かずあれほどの物を書いたことが信じられないとの賛辞を頂いたそうだが、それも頷ける。しかも日本での話はおつまみ程度といったものではなく、全体の8割を占めるから、日本ファンに向けてのほんの手遊びで書いたものではない事は明らかである。登場する日本人名も佐藤とか鈴木とかありふれたものではなく、またかといってニツヅカとかマクラダとか本当にいるのかと首を傾げたくなるような奇妙なものでもなく、小説として十分特徴ある人物像が描け、しかも不自然ではない名前であることも驚き。
そして凝った日本料理についても日本人であるこちらが知らないような、もしくは食べたことないような高級な物だが実在する物として容易に想像できる物である事も更なる驚きであった。
通常ならばここまでだけでも4ツ星なのだが、今回はあの傑作『雷鳴の館』にも通ずるサプライズが最後に用意されており、飽きさせない。この最後に解る登場人物の相関関係の複雑さもよく練られて書かれているし、またシェルグリン議員がなぜ我が愛娘を洗脳させたのかが納得のいく説明で解決されることも素晴らしい。
クーンツの傑作『雷鳴の館』、『ウィスパーズ』、『ウォッチャーズ』、『邪教集団トワイライトの襲撃』に比べると物語力はやや劣るかもしれないが読者に真面目に向き合うクーンツの姿勢と複雑なプロットを見事に書き上げた豪腕を評して5ツ星とする。