紙の本
人間はなぜ、こうも進歩しないのか
2003/10/07 08:33
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず、この本の帯から。「1932年、国際連盟がアインシュタインに依頼した。『人間にとって最も大事だと思われる問題をとりあげ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わしてください』とりあげた問題は、戦争。相手は、フロイトだった。」
これを読んで、この本に興味を持たない人はいないであろう。
アインシュタインのとりあげた問題とは、正確には、「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」であった。
1932年がどういう時代であったか。戦争の世紀と呼ばれる20世紀にあっても、とりわけ世界中で戦争の続く時代であった。日本においても、日清・日露戦争を経て、軍部の権力がますます大きくなっていく時代であった。そして、世界はこのときすでに、これまでにない帝国列強同士の世界的な戦争、「世界大戦」を経験していた。この平和を好む物理学者が、最も大事だと思われる問題に「戦争」をとりあげるのは当然といえば当然である。
さて、アインシュタインの問題提議に対し、アインシュタインよりも20以上歳の多いフロイトはなんと答えたか。これにより問題解決の糸口はつかめたのか。
この本は、自分を好戦的だと思う人、自分は絶対的な平和主義者だと思う人、すべてに読んで欲しい。読む人それぞれが、自分の中の平和を愛する心、いや、自分が持っていると信じている平和を愛する心をもう一度吟味して欲しい。フロイトの言う、「人間から攻撃的な性質を取り除くなど、できそうにもない」という言葉が大きく響く。過去の日本において、それまでは気の良い優しい普通のおじさん達が、中国で、アジアで、世界でも類のない残虐非道な侵略軍に変わっていった歴史の事実が何をものがたるか。日本人の国民性はある意味で現代も変わっていないことを思い知るべきである。
そしてもう一つ、現代の世界において、世界平和と称して、一国単独で軍事行動を起こし、「世界の警察」を自称する大国がある。この国の考え方の幼稚性・脆弱性を考えて欲しい。アインシュタインとフロイトが、まず最初に提案し、そしてあきらめざるをえなかった世界的な紛争解決機関の設立。国際的な課題に対して世界が強調し対処していく必要性。これらをを理解できないアメリカとブッシュ大統領は、すでにこの二人の学者により蔑まされているといえる。
結果的に、現在においても戦争は無くなっていない。この二人の学者が、この書簡を交わしたすぐ後、1933年と1938年にあいついでナチスの脅威からのがれるために亡命を余儀なくされていることには心が痛む。
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薄い本の半分しか書簡じゃありません。それでもわからなかったけど。もっとやりとりがあったらよかったのに。時代がそれをゆるさなかったんでしょうね。とりあえず、戦争はいやだ。
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『人間にとって最も大事だと思われる問題をとりあげ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わしてください』
この依頼にアインシュタインは『戦争』をとりあげ、フロイトに書簡を出した。
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フロイトの出したその答えに私が、ただただ納得してしまうのは、人というその種族・存在自体に半ば諦め、失望してしまっているからなのだろうか。
人と言う存在を内面から学問と言うアプローチで迫った人物が出した結論には、希望や明るい可能性は見当たらない。
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何が大事かって、当時の二大学者が語らったテーマが「戦争」であったってこと。
考え続けなければならないトピック。
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歴史的資料としては一級品だと思う。論考内容は興味深いものもあったが、一方で若干薄いという印象も抱いた。
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1932年、国際連盟が、物理学者アインシュタインに対し、「人間にとって最も大事だと思われる問題を取り上げ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」と依頼した。
アインシュタインは、「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」というテーマを選び、意見交換の相手として、精神分析学者フロイトを選んだ。
往復書簡と言うからには、フロイトの返事に対するアインシュタインからのさらなる返事、またこれに対するフロイトの返事・・・・を期待する。
ただ、本書では、アインシュタインからフロイトへ、フロイトからアインシュタインへの各1通の手紙が収録されているのみで、ちょっと予想外れではあった。
もっとも、フロイトがこのテーマを論ずるに当たり、持論であるエロスとタナトスに言及しないはずはなく、それを(当代一流の学者であるとはいえ)精神分析に明るくないアインシュタインにどのように説明するかには興味があった。そして、その説明は、たしかに分かりやすかった。
本書はドイツでナチスが急速に実権を掌握していく時代背景の中、いずれもその分野の第一人者として活躍していた学者であり、しかもユダヤ人であった両名が、戦争をどのように観察していたかを知る資料でもあるだろう。
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かの有名な科学者と心理学者の書簡。一つの真実だけどまだ少し違う気もする。なぜ戦争をするのか?戦争すると得な奴がいるから。
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アインシュタインとフロイトの往復書簡。
というだけに過ぎないか。肝心の「なぜ戦争をするのか?」に関して新しい見地を提供している印象は受けない。
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アインシュタインとフロイトの往復書簡。
しかも、内容は「戦争はなぜ起こるのか」というもの。
二人の名前と内容を聞くだけで、心が踊るような、そんな気持ちになってしまいました。
内容については読んでもらえば、ということでおいておくとして(薄いのですぐ読めます)、一番気になったのは、なぜこのような本が今まで世に出てこなかったのか、というところでした。
勘のいい人ならすぐに分かると思うのですが、二人ともユダヤ人の血統を持ち、
そして第一次、二次世界大戦の時代に生きています。
この往復書簡が交わされたのは、ちょうど二つの世界大戦の狭間の時代でした。
想像するに難くないのが、「なぜ戦争をするのか」というタイトルの本を書いている途中に戦争が起こってしまい、しかも迫害される側のユダヤ人の書いたものということで
うやむやになってしまっていたのではないでしょうか。
その意味では悲劇の書とも言えるかと思います。
それにしても、二人ともあの迫害を生き延びてきただけあり、先見の明は流石です。
ただ、解説で養老孟司先生も書いていますが、二人の温度差があるのは、詮索を避けるためにわざとなのか、知らずにそうなってしまったのか、は非常に気になるところでした。(本当のところは知る由も有りませんが)。
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ここまで偉すぎる二人がここまでシンプルな、誰でも考えるような命題を、誰でもわかるような表現で、葛藤し、迷走し、結果回答は得られず、そして沈黙してしまう。
知能とはなんなのだ。それがもっともショックだった。
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少数の権力欲をもった人たちと、金銭的な利益をおうグループが たくさんの国民をうごかし自己の欲望の道具にしている。 インテリも暗示にかかりやすく、破壊への衝動がそれを加速させる。 そもそも破壊への衝動は自分の身を守るための 本能的な機能のひとつで誰もがもっているのだからだ。 愛・エロスと同じベクトル上にあるのだろうか?
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1932年、国際連盟がアインシュタインに依頼した「人間にとって最も大事だと思われる問題をとりあげ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わして下さい」とりあげた問題は戦争、相手はフロイトだった。ちょうどナチス時代、二人はユダヤ人、だからこそ本気で考えていたテーマだろう。
こういう本を読みたかった、と思い、いろんなページで深く考えさせられた。ずっとなぜ人間は戦争を繰り返すんだろう、人間誰もがが陥りやすい心理状況があり、そこに問題があるのではないかと思っていたから。また読む前は、戦争は悲しいけど、人間の普遍的な問題で、なくならないとあきらめてたけど、二人の考えを聞いて、みんながそれを願い、二人の意見を参考にして頑張れば、戦争の終焉を迎えられるんじゃないかと、明るい未来が見えた気がした。
アインシュタインとフロイトの時代に、こんなに深く戦争について考えられていたのに、いまだに戦争をくりかえし、悩んでることに驚き残念に思う。時空を超えて二人の会話を聞けたようで、ほんといい経験ができたと思った。アインシュタインは最も大事だと思う問題に戦争をあげ、みんなの平和を考えてたんだなと思うと、ますます素敵な人だと思う。
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この本に、2人の巨人の名前を見て、怪獣大決戦のような空中戦を期待した。結果として、少しアテが外れた気持ちになった。
興味深い話もあるが、アインシュタインは「世紀の天才物理学者」として戦争をなくすことを議論しているのではない。むしろ、素朴に一人の人として、このテーマをフロイトに投げかけている。その謙虚さと、ある種の切実さにこそ心打たれるものがあった。フロイトの答えは、「専門外のことはわからない」と正直に答えているのが大筋だと思う。
自分の中の天才崇拝をよそに、2人の天才はもう少し地に足をつけていた。
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国際連盟から意見交換をするように提案されたアインシュタインが選んだテーマは「ヒトはなぜ戦争をするのか」。そして意見交換の相手として選んだのが、精神分析学の権威、フロイトである。本書はその往復書簡が収められている。
20世紀の天才・アインシュタインは、世界政府のような人間の心をうまく制御する仕組みを作れば、戦争を回避できるのではないかと考える。しかし、それは理想論かもしれない。では、戦争を生み出す人間の心を制御するにはどうすれば良いのか。こういった観点から、フロイトに書簡を送る。
人間の心を究めたフロイトの答えは、「文化を発展させること」。文化の発展に伴って人間の心を改革すれば、戦争を回避できる時代が来るに違いない。フロイトはそう答える。
しかし、ではどうやって人間の心を改革すれば良いのかという点については、その方途を示していない。その意味で、フロイトはアインシュタインの問いに答えきっていないように思える。