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欧米の市電には学ぶべき点が多くある
2001/04/24 15:16
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投稿者:小池滋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
都市に住む人にとって交通は切実な問題であり、しばしば頭痛の種である。スシ詰め、長距離通勤による時間と費用のロス、さては痴漢の横行、大気汚染、バリアフリーの理想はほど遠い、などなど。
すべての鉄道が高架が地下になり、すべてのプラットフォームに車両のドアに合わせたドアがつき、段差がなくなって車椅子でも自由に乗れる……だが、こんな夢みたいな話が実現するのはいつのことか。
もっと安上がりで、早く実現できるアイデアはないだろうか。ある。市内路面電車網の改善である……なんぞというと「そりゃ鉄道マニアのご冗談でしょう、いまさらチンチン電車なんて」と笑われるかもしれない。
この本は、そうした誤解を消すために大いに役立つに違いない。欧米の先進国の大小の都市では、とくにヨーロッパのいくつかの国の都市では、路面電車はもっとも新しい技術を駆使した交通システムとなっている。懐しいチンチン電車、下町の温かい人情、ノスタルジアなどなどを連想するわが国とは大違いなのだ。
もっとも日本でも、広島や熊本には低床(入口に段差がない)市内電車が走り、低床バスは各地で見られるようになったが、これらがお手本にしたのは欧米の市内交通システムであった。本書には国別、都市別の詳しい情報がびっしり詰まっている。
車両の構造とか路線団も興味深いが、もっと役に立つ教訓は、それぞれの都市が与えられた条件(あるいはハンディキャップ)をどのように活用しているか、である。
ヨーロッパの古い都市には狭い街路が多く残っているし、そこに市電が通っている。そこで電車と人間以外は全部通行禁止にする。乱暴に見えるかもしれないが、こうした「トランジットモール」では市電は格安か無料とする。市電は郊外まで直面し、そこの停留場は広い無料駐車スペースを持つ。こうすれば、無理して都心までマイカーを乗り入れる必要はなくなるだろう。
ドイツの都市で行われている運輸連合も、日本に参考になる制度である。国鉄、地下鉄、市内電車などが連合体を作り、複数の同心円ゾーン(例えば、東京なら山手線内をゾーン1、環7道路内をゾーン2というような)内は共通運賃にして、一枚のきっぷで自由に乗りかえもできる。
もちろん、そのためには国または地方自治体からの財政援助が必要だが、大気汚染や地球温暖化が防げ、都心部が活性化すると考えれば、充分もとをとったことになる。
日本は鉄道については世界トップを行っていると自負している人が多かろうが、都市公共交通については、残念ながらあまり偉そうなことは言えない、外国から学ぶべき点が多いことを、本書は教えてくれる。鉄道マニアではない一般の人に一読をおすすめしたい。 (bk1ブックナビゲーター:小池滋/英文学者 2001.04.25)
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