- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
銀河帝国の弘法も筆の誤り みんなのレビュー
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
豪華珍品駄洒落のフルコースディナー。
2004/07/17 13:04
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:らせん - この投稿者のレビュー一覧を見る
人類が宇宙へ乗り出し、銀河にあまねく<人類圏>を構成して繁栄を極める遠い未来のお話と言えば、ジャンルはSFで決まりですが、これはただのSFじゃあない。世にも稀な“ダジャレSF短編集”です。SFにダジャレのスパイスを効かせたから“ダジャレSF短編集”なのではなく、ダジャレの風味を最大限に賞味するため、SFを素材に調理したとしか言えない本末転倒ぶりで、全編これダジャレのてんこ盛り。料理としてはゲテモノの部類に入り、好き嫌いの激しい方には全く口に合わないであろうことが予想されますが、珍品中の珍品だけに見方を変えれば“至高のメニュー”のひとつとも言えるでしょう(笑)
本書のメニューは5編の短編と、各話末についた5人の作家によるシェフ“田中啓文批判”の解説と、巻末デザートの“人類圏興亡史年表”までのフルコースで、全部読めば胸焼けすること間違いなし。
レシピを少し紹介しますと、第1話の「脳光速 サイモン・ライト二世号、最後の航海」は、銀河辺境から現れて人類を急襲する、謎の精神生命体ファントムに対抗するため、宇宙船サイモン・ライト二世号が対ファントムの切り札である1000人分の脳を積んで出撃する話。タイトルからして思いっきり脱力もの。しかしお馬鹿な題の割に中身はグロいです。ちなみにサイモン・ライトとは、SFの名作『キャプテン・フューチャー』に出てくる生きた脳みそのことです。うげげ…この船名がこの話の全てを表してますね。
第2話の「銀河帝国の弘法も筆の誤り」は「ブラックホールの中に仏はおるか。そもさん…」—人類が遭遇した異星人とのファーストコンタクトはなぜか禅問答だった。人類の存亡がかかったこの問答に、高野山の奥で眠る伝説の高僧空海が呼び起こされた!という話。異星人がなぜ禅問答? 根本的な不可思議を全く無視して話を進める作者の豪腕ぶりには脱帽するしかないです。
第3話の「火星のナンシー・ゴードン」は宇宙警察に追われた泥棒ナンシー・ゴードンが不時着した火星には、なぜか彼女を慕い、彼女の訪問を待ちこがれていたらしいロボットの集団がいた。巧妙に巧妙に伏線が張られた話で、文中の“グォバス”や“タバール・ザッカー”“イドゥン”“クァン・グーン”と言った、意味不明の言葉の意味がわかった時、読者は笑うか怒りに燃えるかのどちらかでしょう。
第4話の「嘔吐した宇宙飛行士」は初の宇宙遊泳訓練の前にピザの大食い競争に出て、身体いっぱいにピザを溜め込んだ宇宙飛行士李・バイアが、宇宙服の中でゲロゲロゲロって話。とにかく汚いとにかくグロい。そして宇多田ヒカル(笑) このダジャレが10年後20年後にも通用するかたいへん興味深いです。
最後の1編「銀河を駆ける呪詛 あるいは味噌汁とカレーライスについて」は、<人類圏>に突如として現れた知的生命体<人喰い>の来襲に備え、<人類圏>は防衛手段として銀河全体に超光速通信ネットワークを確立したのだが…。残忍な<人喰い>に無惨に食い尽くされる人類の終末。ただひとつのダジャレのために、壮大な前フリで人類を破滅させてしまう田中啓文の恐ろしさを読者は目の当たりにすることでしょう。
私としてはこの本を人に薦めていいのか良くないのか、ちょっと測りかねるのですが、話の種にはなることとは思います。興味がおありの方はご一読を。ただし本書がゲテモノであることだけはもう一度明記しておきます。あとは知〜らないっと。
紙の本
返品不可
2001/02/18 23:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kokol - この投稿者のレビュー一覧を見る
いや、すごい題名だ。この題名で本が出るってことがまず驚き。
内容はというと、羊頭ならぬ「狗頭を掲げて狗肉を売る」ってな感じの実に書名どうりの作品が並び、まこと対処に困りそうな短編集。しかも短編ごとに解説付で、さながら「田中啓文ファンブック」。いや、こういうの、大好きですが。
そもそも、SFとどうしようもないアホ話というのはどっか下のほうで不可分になっているらしい。星新一・小松左京あたりのSF第一世代のアホ話というのは今でも語り草になっているほどだ。本書でついでに捧げられちゃってるアシモフにしたって、駄洒落オチの短編なんか結構書いている。そういう意味で、これは立派にSFの魂を受け継いだ小説なのだ。
しかもしかも、SFの醍醐味といえば、切れ味鋭いワンアイデアの短編だっ、と考えている人は私も含めて中々に多いはず。しからば、この究極のワンアイデア(だよな?)で書かれた短編集、どうして非難できましょう。
……なんか書いてて徒労感だけ増えたと思うのは気のせいか。あえて小難しく考えなくとも、読んで単純に笑うのが平和な読み方だと思うし。
(ある意味)SF第一世代の聖杯を受け継いだこの作品。万人にお勧めは出来ないけど、アホな話が好きな人は是非買いましょう。
ただし返品不可。