紙の本
ジャンヌ・ダルクのたどった道を歩く旅行エッセイ
2005/03/04 16:25
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投稿者:Yumikoit - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジャンヌダルクというと、私は過去に中公文庫か岩波のを読んでいると思うけれども、その時にはあまり古い史実なのか、なんというのか具体性に欠けるような読後感だった。
安彦良和氏も描いてるけれども、こちらもジャンヌ・ダルクそのものを描くのではなく、ジャンヌ・ダルクの世の後にまた新たに神の啓示を受けて現れたもう一人の少女を描く。それを導こうとしている霊ジャンヌ─というカタチを通じてジャンヌの信仰心を表現している。評価の分かれるところだろう。
藤本ひとみ氏は、この旅行を通して「ジャンヌ・ダルク暗殺」を書いたけれども、その中でジャンヌは ほっそりとした繊細な身体つきの少女ではなく、がっしりとした健康的な、それでいて思い込みが強くて融通の利かない、無垢な瞳の女性として書かれている。
どうしてそんな風に、著者はラ・ピュセル─ジャンヌ・ダルクを捉えたのか。
そういう表の小説には現れない「裏」ジャンヌ・ダルク考察が読めるのが本書である。
ジャンヌ・ダルクの「ダルク」という姓には、「ダルク」説と「ド・アルク」説(つまりジャンヌは貴族だった!)があるとか、ジャンヌの甲冑を元に体型を推測すると1メートル58センチの女偉丈夫だったとか。
ジャンヌが王太子をつれて通ったシャロンの町は、実はマリー・アントワネットとルイ16世の一行が革命期に脱出した折に、あまりに豚足が美味しいあまりについつい長居をしてしまって、それが元で捕まったとか。
これだけでも面白い。でも「ジャンヌ・ダルク暗殺」を読んで、またこれを読むと更に楽しめる1冊である。
>>>飼主日記-Yumikoit!?
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ジャンヌ・ダルクを伝説としてではなく、実在の人物として、取っ付きやすく分かりやすく紹介した本。舞台となっている土地の地理的関係や現在の街の様子なども、描かれており、知識が全くない状態からでも、イメージを膨らませやすい作品です。とりあえず、「ジャンヌ・ダルクの生涯はどんなものだったのだろう」とざっくりと知りたい人に、おすすめです。
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結局、宗教に利用されて殺されたジャンヌダルクに合掌。図解地図もあり分かり易かったです。著者も好感もてました
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戦う女性を語るときに、最も多く例えられる人物は、このジャンヌ・ダルクではなかろうか。「戦う聖女」のイメージは、本書を読む前からも決定的に存在していた。
イメージのままの知識というのもアリだとは思うが、一度は少しでも突っ込んで知っておこうと調達したのがこの図書館本。こういう動機と目的で読むには、最適の選択だったと思う。
まず、著者の藤本ひとみさんのキャラが面白すぎる。
本書の造りは、ジャンヌの誕生から、その短い生涯を駆け抜けるまでの史実を追っかけつつ、その史実に関りのある場所を、著者自身が実際に訪れてみて、どうのこうのと語る現地レポート的な要素も含まれている。カラーの写真も貼り付けられており、なかなか楽しい本だ。
その著者のレポートがなんとも、まるで著者自身の日記か個人ブログのような書きっぷりで、読者無視の個人的な感想あり、まったく本旨をわすれた脱線も頻発(笑)、定説の定まらない歴史事実などには著者自身の推理が力強く述べられたりと、ジャンヌ・ダルクの生涯を知るという面白さに加え、著者の奔放な語りも楽しめるという特典付きである。
しかし、著者は非常に研究熱心で(実際に現地を訪れ、現地の古文書をひもとくなど)、内容は信頼できるし、推論もけっこう鋭くついているんではと思う。
さてジャンヌ。ダルク。1412年1月6日、フランス・ドンレミに生まれた農夫の娘。当時は英仏百年戦争のさなか、13歳で神の声を聞き、弱冠16歳で剣を取る決意を固めた。
英軍に包囲されたオルレアン解放を始めとして、神がかり的に連戦連勝を治め、フランス王シャルル7世の戴冠に貢献するなど、まさに奇跡的な戦勝をフランス軍にもたらし続けたが、一敗地にまみれ囚われの身となってからは人生の趨勢が急転し、最後は火刑に処せられるという壮絶な終焉で人生の幕を閉じた。
神の声、すなわち若い彼女の心を突き動かしたものは何だったのか。ジャンヌの連戦連勝は、100%焦点の定まった強い確信と意思と実行によるものと感じられた。強い確信、強い意思は、周囲の条件をも味方に変えていくようだ。
しかしながら、戦いは一方の正義が他方の怨恨となる。ジャンヌの戦勝は、親英国派の屈辱となる。ジャンヌを火刑に処した裁判は、その裁判を執り行った親英派の司教ピエール・コオションの報復だったと言える。
それにしても、歴史の神がいるなら、「もう少し違った展開にできなかったのか」と文句をつけたいような結末であると感じる。