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この本で感じるべきは、色々な事を諦めながら、その愚かさ故に何かに期待してしまう人々の生活を、そんな世界にやってきたすべてを捨てたつもりになっている男の視線を通して描かれる世界観。擬似的にでも捨てる事の自由を感じられる。
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第119回直木賞受賞作品
寺島しのぶがブレイクしたきっかけになった主演映画の原作
(作者に直接『映画化したら出演したい』と、手紙を出したらしい)
主人公が30代のときの話なので、20~30代の人向けかな?
若くして世捨て人を気取っているとか、好きで落ちているとか思ってしまい、
(恋愛も男性目線だと思うし)
私にはあまりピンとは来ませんでしたが、
尼崎とか天王寺とか関西が舞台だし、
続きが気になってどんどん読んでしまう
映画化は彫眉が内田裕也というのはちょっと年取りすぎて違うような気がするけど、いつかテレビでもやるかな?
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ことばに魂が宿っている。
そうよ、人間ってこーゆーのよ。
綺麗な人間なんて居無いのよ。
共感する所が沢山有った。
出会えて嬉しい。
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私小説作家らしい、実体験を基盤に書かれた小説。
もし彼(著者)が、自分の生き様を、恥を、汚く見難い部分を、このような文章に書こうと思い立たなければ、彼は只の“人生の敗者”でしか無かっただろう。
何もかもを諦め、人の世の底でグズグズと生きる男の、その生への葛藤や言い訳や負い目が、痛い程ありありと伝わってくる。ここまで自分を追い込む事は、落ちて行くだけだと思えば容易そうで、しかし実際にはある種の“精魂”が必要なのではないだろうか。
この小説を介して覗き見た“小暗い人の世の底”は、常人には計り知る事の出来ない、凶暴な“生”が蠢いていた。
上辺だけでしか物事を判断出来ない、薄っぺらい意識では、読後何も得る物は無いかも知れない。
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平凡な人生を真面目に生きるというのも中々難しく、かといって牛馬の生活に身を置けるかと言えばそれも難しい。無目的な生に意味を見出せない場合、自分を苦しみの中へ陥れるのか、あるいはどうせ意味がないことだからと淡々と生きるのか。とか考えてしまうような面白い小説、共感がないと意味分からんかも。物語的には真新しいものでもないと思う。
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内容は
学歴もある30過ぎの男が会社を辞め
ボロアパートで臓物の串刺しをする仕事に就き
ヤクザや売春婦や彫師等の世界に接する中で
ヤクザに追われる女と心中を決めるという話だが
何せ、かなり古いそしてかなりキツイ昔の関西弁?で
関西に住むあたしでも最初読むのが厄介だったので
まーどうかなーそれも味のうちと捉えるのかどうか。
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世のドス黒い部分をかいま見させてくれる。私小説つーのかしらん。主人公の投げやり感にイライラさせられる。
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自分の道を踏み外し、生きる意味を失った主人公「生島」は作者車谷長吉の姿だったのか。
熱いという言葉を発することができるのは、火の中へ飛び込んだものだけ・・・。
自ら堕ちるのと堕ちてしまったのは違う。堕ちきることができないために「生命の言葉」を吐き出せないもどかしさややるせなさがにじみ出れば出るほど、この小説の「生命の言葉」が輝きを増していく気がした。
この情念深い小説は、私は好きです。
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凄まじい物語である。
この話はすでに10年以上前に書き上げられている。その年の直木賞を獲っている。
その後しばらくして、もう私小説は書かないと著者は宣言した。命を削るような話は最早書けないとも言った。当然だろう。
『漂流物』が、本命視されていたにもかかわらず芥川賞を逸したとき、この話は原稿用紙にして300枚ほどすでに出来上がっていたという。著者の奥さんは、コノ物語が完成した直後、夫はコノ作品で次の直木賞を獲る。と断言し吹聴して回ったという。身内の欲目、では断じてないと思う。彼女とて一級の詩人であるからではない、ある程度の読書人であれば、一読すればその「確信」が解る。
白洲正子が「十何年もまえに見っけたのは私なんだからねっ」と豪語したのは直木賞受賞の直後だから既に10年前だ。稀代の目利きが見出してから世間が認めるまで十数年を要したことになる。私のような凡人がその存在を発見したのが四半世紀後であっても恥ずかしいことではなかろう(でも、もっと早くに知っていたならもっとよかっただろうが)。
書くことに命を賭し、あるいは書くことで命を苛み、生きて狂ったか、あるいは狂って死した累々たる文豪たちの人生と作品との比較において、凄みの点で一歩も引けをとらず、むしろ凌駕するほどのものである。尚且つ今生き、書き続けている作家である。
そしてまた、世に出た後も、なぜか埋もれている存在でありつづけて見えるのは、この作家に一層凄みを加えている。
万人にお薦めできるものではない。それどころか万人に戸惑いと一種の嫌悪を抱かさずにはいられないこの作家と作品は、それ故にこそ紛うことなき逸品に違いない。稀代の目利きが見出し、第一級の文学賞を獲った作品だから、ではない。読むものがそれぞれ読んで感得するしかない凄みがある。
最後の文豪である。少なくとも私ひとりはそう確信する。
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きれいな話とか明るい話とか好きじゃないから良かった。破滅願望のある主人公になぜかいつも感情移入してしまう。登場人物の一人一人が濃い。彼らが言う一言一言が心に刺さる。最初から最後まですごく良かった。
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何度読んでも、何度も呼吸が苦しいほど、何かが迫ってくる。映画も見たし、赤目にも行ったし、駅の名前から街も思い浮かべるけど、それでも足りない。
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とにかく夢中になって読んだ。
ひたすらモツを串に刺す仕事をしている主人公のまわりで
なにやらいろいろな事が起こっている。
隣室で、階下で、町で。
やっぱり見どころはアヤちゃんと行動を共にするところで
一気に読むペースが上がった。
笑えないしむしろ気が沈みそうな作品だけどおもしろかった。
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出版当時、上司から勧められた本。
「死にたくなるぞー」「生きてんのイヤになるぞー」
とか言われた。
読んでみて、これは面白いのかもしれないけれど、好きではない、と思った。
見たくないところを見せつけられる感じ。
しかし文庫が出て、思わず購入。
ずぶずぶはまっていくような感じはあるけれど、やっぱり好きではない。
一歩間違えれば、自分もこうなるかもしれないという恐怖。
気持ちが落ちているときに読む本ではない。
私小説であると聞いて、ますます怖くなった。
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プ~ンと、生臭さいというか何とも言えない匂いがこちらまで漂ってきそうな小説でした。
こういう馴染みのない地域の馴染みのない人種の描写を読んで、少々面食らいながらも、全体的にきっちりまとまってる印象でした。
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じっとりとまとわりつくようで、でもどこかドライな昭和風の文体が不気味な余韻を残す。
舞台は昭和の終わりだが、今にも通じる社会の闇を描く。
「住む世界」について深く考えさせられた。登場人物たちは、その後どこへ向かったのだろう。