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よいリストラ悪いリストラ 「所得格差の国」アメリカの活力 みんなのレビュー
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紙の本
IT分野での急速な技術進歩などによる経済的繁栄の陰で進行する,アメリカ社会の不平等化の状況を描き出す
2001/05/01 22:18
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投稿者:松本 厚治 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカの繁栄の裏側で進行している社会的不平等化を,精彩ある筆致で描き出す。生産性は着実に上昇し,経済は急速に拡大してきたにもかかわらず,実質平均時間給は2000年末までの四半世紀の間,低落を続けている。同じ期間,最も低い給与階層に属する人々の半数以上が給与を減らす半面,上の階層に昇る人々は激減し,階層の固定化が露わになっている。アメリカ経済の長所として,リストラの受け皿になる労働市場の柔軟性がよく語られるが,転職すると大幅に給与が下がるという現実がある。一般のホワイトカラーは人減らしにおびえているのに,CEO(最高経営責任者)など競争社会の勝者の報酬はどこ吹く風と高騰している。
もともと大きかったアメリカの階層間格差が,このようにさらに拡大している状況を,多くのデータをもとに詳細に分析。それが数字の羅列に終わっていないのは,アメリカに居住していた著者の経験や見聞の裏打ちがあるからで,説得力に富む内容である。
市場経済の徹底がアメリカ経済を活性化する一方,この種の問題が生まれているのは,なおざりにできないことである。このような結果となった背景として,本書はITを中心とする「急速な技術進歩の展開」を最有力説としてあげている。一応の観察ではあるが,それほど書き込まれているわけではなく,この点の分析は不十分である。
「ベンチャー企業がアメリカを救った」とする第7章は,1997年以降の事情を書き足したものだが,この認識は怪しくなっているし,90年代前半までの状況をもとに書かれた6章までの本体部分のトーンとややなじまない。内容の統一性という観点からは,ない方がよかった。
アメリカでも同種の視角に立って「ウィナー・テイク・オール」(一人勝ち)が書かれているが,本書も一面的な市場化・IT化信仰に一石を投ずるもので,一読の価値がある。読み易く,アメリカ経済の見落とされやすい影の一面に豊富なイメージを与えてくれる好著。
(C) ブックレビュー社 2000-2001
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