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紙の本
18歳からの、政党と選挙を考えるための基本書
2009/08/29 23:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
《本書の狙いは、政党と選挙に関する新しい研究動向を平易に説明し、現段階における政党研究および選挙研究の水準を示すことである。》
18歳のみなさんでなくても、もっと大人の人でも、いざ「政党とはなんなのか」(定義付け)とか「政党の機能・構造はどうなっているのか」と聞かれて、すらすら答えられる人は多くないと思う。
だけど、それは恥ずかしいことじゃない。学者だって《政党を定義することはそれほど容易ではない。》といっている。イギリスの政治学者のウェアは、こういっているんだ。《政党とは何かを定義しようとすることは、象とは何かを定義することと似ている。》
これまで多くの政治学者が定義付けをしてきた。でも、どの定義を使っても、各国の政党のなかにはその定義にあわないものが存在し、また、定義にはあうのに政党でない組織が存在するそうだ。
どうだろう? 18歳のみなさんのなかから、「よーし、ワタシが・ボクが、精確な政党の定義を編みだしてやる」と意欲を燃やす人がでてこないかな?
ちなみに、サルトーリが提案した最小限定義は、《政党とは、選挙において提示される公式のラベルによって識別され、選挙をつうじて候補者を公職に就けることができる政治団体である。》となっている。この定義だと、これ以上はいじくりにくいかもしれないが、さらに拡張した標準クラスの定義なら、なおも洗練させる余地があるだろうね。
選挙については、デュヴェルジェの法則が有名とされているけど、周囲の人に「デュヴェルジェって知ってる?」て聞いてみてよ。こんな舌をかみそうな人のことなんて、知らない人が大半だろう。だけど、その内容《小選挙区制は2大政党制をもたらし、比例代表制は多党制をもたらす》なら、かなりの人がハハーンとうなずくんじゃないだろうか。でも、この法則だってすべての国について、きれいに当てはまるわけじゃあないんだ。
18歳のみなさんの出番はここにもあるよ。
日本には国会に議席のある政党は7つあるよね。あっ「改革クラブ」を入れると8つかな(最近のはのぞく)。ここで、政党システムをはかる指標がなにかあると便利なんだよね。すなおに政党の数をカウントするだけだと、都合がわるいことがある。どういうばあいかというと、極小政党が多数あるときで、政党数をただ足していくだけだと極端な多党制ということになってしまうんだ。
政党システムのことを考える際に重要なのは、政党の規模と配置になる。悪いけど極小政党の存在はあまり意味がないんだ(ごめん!)。
そこで、政党の規模を考慮にいれた有効政党数という指標が使われるようになってきた。各政党の得票率か議席率のどちらかを自乗して合計した値の逆数であらわすんだ。詳しいことは読んでみてね。
政党と選挙の研究領野はまだまだ広くて深い。本書は、基礎から中級の入り口レベルまでカバーしている。記述を刷新してほしいところが一部にあるけど、この分野のスタンダードとして、いまでも手にする価値のある教科書だ。
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