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これが本当に男性の作家の筆によるものなのかと驚きました。谷崎潤一郎の名前を知らなければ間違いなく女性の作家の作品だと思っていたところです。
大阪の裕福な家庭に住む四姉妹を、主に三女雪子の見合い話を中心として描いていますが、四季折々の日本の情景やあれこれと気をもむ次女幸子の細やかな情緒、雪子と対照的に描かれている四女妙子の華やかな恋愛模様なと、多くの読みどころがあります。阪神大水害についての貴重なレポートになっているのも興味深いところ。
当時の時代背景もあるのでしょうが、今の感覚ではさして不良娘だとも思えない妙子の扱いの悪さが不憫に思いました。
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3巻分まとめた文庫で、びっくりの分厚さなんだけど、毎日少しずつ、朝ドラでも見ている気持ちですいすい読んでしまった。三番目の雪子の縁談話が中心で、日常の些細なことや、大事件にハラハラしたり、ヤキモキしたり。華やかな事もあれば、戦争の匂いも少しする。こんなに長編なのに飽きさせないってすごい。
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そうとうな長さですが、話が面白かったのでページを気にせずに読み終わりました。しかし、挫折する人も多数いる模様。エピソードにおもしろさを感じられればはまるかと。
雪子がウサギの耳を片足でひょいと持ち上げたことを作文に書かれちゃう話がすごく好きです。
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夏の長編読書.初の谷崎潤一郎である.長い長い文章で文字のぎっしり詰まった900ページ超の文庫に書かれているのは,端的にいえば,旧家の姉妹におこる恋愛,結婚話である.それが徹底的に女性の視線,女性の思考回路で描かれている(ように私には思えると言った方が正確か).家庭の中の出来事を描いた小説であるにも関わらず,ここには不思議なことに,とんでもないスケールを感じさせるものがある.その根源が上方に脈々とつたわる女性の文化なのであろう.とんでもなく懐の深い小説.これだから読書はやめられない.
あとは雑感.
多分この小説は高校生が読んでも面白くないだろう.これを楽しむにはある程度,年を取ることも必要なのかなとも思った.
もう一つ.幸子の夫の貞之助の余裕がすばらしい.こういう夫になりたいが私には無理だろう.
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ストーリーの起伏や展開を楽しむという小説ではないと思う。蒔岡姉妹と起居を共にして、生活する時間そのものに入り込む体験をするのが醍醐味の小説。暮らしの時間自体を出来る限り写し取ったものと考えると、この長さの意味が分かる気がする。
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これ程までに繊細で美しい日本語の本は初めてな気がします。移り行く四季と些細でかけがえのない日常を眈々と。谷崎潤一郎作品の中でも卓越していると思った。なんとも形容しがたい心がふるふる悦ぶこの甘い読後感は何なのだろう。先日ちょうど御盆に、谷崎潤一郎のお墓参りをしてきました。同時代を生きることは出来なかったけれど、こうして同じ日本語を操る者として彼の此の本に出会えてよかった。
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素晴らしく清々しい一冊。終わりを意識する間もなく最後のページにたどり着いた。ゆるやかな時間の、循環していく流れを感じた。
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これは昔から思っていたことだけど、東京は男社会で、関西は女社会だと思うんです。京都しかり大阪しかり。女性は美しい。和服美人は言うまでもない。芸者さん舞妓さんといちゃいちゃランデブーしたいなあ。おっと、本音がつい出ちゃったぞ。男より女が好きな私でした。
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繊細な日本の美を上方の文化、風俗を加えて緻密に表現されている。四姉妹のうち次女の幸子を中心に大人の日々とその中での成長を描いている。
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初めて読んだ高校生の時は
上巻の途中で断念した。
淡々と日常を描いていくその良さがまだ分からなかった。
大学生の時、ふと思い出して読んだらはまった。
風景描写の美しさや特別なことがないようである、人物の心の微妙な変化の描き方が素晴らしい。
以来、何度も読み返してます。
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いつまでたっても美しい次女の雪子、自由奔放で我侭放題の三女の妙子、そしていつも妹たちを気にかけてる幸子。雪子の見合いを組んではダメになり、妙子が洪水でビルに取り残されたと聞いては、ドギマギしながら、いつも落ち着かない妹たちを心配している次女の幸子。この三姉妹は、日本の男なら一人はタイプなんじゃないか?と思わせる色っぽさをもっている。
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最近のお気に入り「細雪」です。
ネーミングに惹かれて読みました。上・中・下巻の読み応えたっぷりの本ですけど、本当にスラスラ読めます。あたしでも結構時間かかりましたけどw
昭和10年代の関西の上流社会の生活の模様を、谷崎潤一郎のとても読み易い文体が鮮明に伝えてくれます。所々難しい表現や単語もありますけど、巻末の注釈と照らし合わせながら読むとすっごく勉強になります。
文章がとても読み易いから、その当時の人々の生活をありありと想像できるのがとても楽しかった。
物語は大阪船場の由緒正しい蒔岡家の4人姉妹を中心に繰り広げられて行きます。
この4人姉妹のそれぞれの性格や個性がとっても魅力的でした。日本版若草物語?w
長女鶴子は本家の奥方として、また多くの子供の母として日々の生活に追われています。
だから手紙もすぐに返事を書けず(というより、書くのに時間がかかる?何度も何度も清書しないと気がすまないらしい)、またトラブルを好まない性格。夫と末の2姉妹が仲悪いので、いつもその関係を気にしてる、ある意味苦労性の女性。ていうか、この夫の性格が悪いのが問題なんだけどw
物語の途中、夫の転勤で東京に移住。東京-大阪間での次女との手紙のやりとりが、この物語の象徴的なポイントかな。
次女の幸子はこの作品の主人公とも言って良いと思います。
姉妹の中では「中あんちゃん」と呼ばれ、一番バランスの取れた性格。社交的だし明るいし、上品。それも姉妹のそれぞれの長所をバランス良く合わせた美人。夫もとっても優しい。憧れますw
子供は女の子が一人。鶴子が本家なら、こちらは分家の奥方という事になります。
いつも家族のトラブル解決のために奔走してますw
三女は雪子。雪の“き”を取って「きあんちゃん」と呼ばれています。
こちらは日本的美人で、一番おとなしい性格。超奥手。その割に、縁談をことごとく断る頑固な一面も見せます。風が吹けば倒れそうなくらい華奢に見えるのに、家族の中では病気一つしない一番の健康の持ち主だったりします。そのため、しばしば家族の病気の看病に駆り出されます。
この雪子の縁談がなかなかまとまらないのが、幸子の悩みの種。
最後に四女の妙子。大阪では末っ子を「こいさん」と呼ぶそうで、家族でもこの呼び名で呼ばれています。この子がいつもトラブルメーカー。
彼女は雪子と対照的に、派手で大胆な性格。雪子が東洋美人なら、彼女は少し欧米寄りの目鼻立ちのはっきりした美人。家族の中では、一番手先が器用なため、人形作りや洋裁で自立した生活を送っています。女は良妻賢母で貞淑な妻になる事が当然とされてきたこの時代で、彼女の「職業婦人」としての生き方はかなり異端視されています。それでも世の中の風潮なんて、まったく気にせず自分のやりたいように生きる妙子は、現代社会の走りともいえます。
また男性経験も一番豊富で、この奔放さが雪子の縁談の障害の一つになってしまっているのが蒔岡家の頭の痛い問題のひとつ。
この雪子と妙子は本家を嫌っているため、幸子の家に入り浸っています。この様子がとてもにぎやかでとても楽しそう。主にこの3姉妹の人間模様を主軸として物語はゆったりと展開されて行きますが、中でも雪子妙子の対照的な2人が物語の象徴とも言えると思います。
私は4姉妹の中ではやっぱり幸子が好き。いつも雪子妙子の問題で奔走している姿がとても頼もしく見えて、理想的なお姉ちゃん。私もこんな姉が欲しいと思ってしまいました。
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文庫ではなくかなり昔のハードカバーで読みました。
全編旧字体だったので、多少の読みにくさはあったものの、お話の雰囲気には合っていたと思います。
没落した大阪の名家に生まれた美しい4人姉妹の数年間が、美しい文章で綴られていくのですが、美しさの裏に隠された醜さ・・・といいますか、権高さや身勝手さ、そして優越感に裏打ちされた差別意識などが赤裸々に表れてまして、読んでいくうちに少々イラッとしたりもしたんですが、時代の違いもあるのかなーと。それにしても、どうしてこう女の気持ちが分かるんですかね、谷崎先生!
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ひとことでいうとお見合いの話だ。
戦前の格のある家の娘さんのお見合いの話を軸に進む。
いや、お見合いは進まない。家の格や性格やらで全然進まないのがイライラする。
でも、そういうのこそが小説なのかもしれないけど。
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おもしろい。忘れていた言葉と時代。娘が嫁いだばかりで身につまされる事が盛りだくさん。今の子には一蹴されそうなことだが、ほんとに何が仕合せなのやら。さきおとつい、郷愁病、西洋菓子、匙。互いの手紙のやり取りの文章の妙。みなさん、美しい日本語を大事にしましょう。谷崎は本当にスケベな人だ。「陰翳礼讃」がこの小説にも色濃く漂う。「痴人の愛」の臭いもする。