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Drop the bomb!! ソウル・ママの快読!ブラック・ミュージック講座 みんなのレビュー
- 泉山 真奈美 (著)
- 税込価格:1,540円(14pt)
- 出版社:ロッキング・オン
- 発行年月:2001.3
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紙の本
戦犯(みたいなもんだと思うの)
2001/05/06 03:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BOSSA - この投稿者のレビュー一覧を見る
読むほどに気分悪くて「買わなきゃよかった」と思う本なんだけどさ、泉山真奈美さんのナニがダメなのかハッキリしたのは、まあ、読んでよかったか。スッキリしたかな。
バイオグラフィが明らかになって、この人は青森のソウルオタク少女のまんまなのだ、ト。罪状は、この人がある時期に日本のヒップホップファンに与えた影響の大きさによる。要するに「なぜ我々は、対訳・解説者として泉山真奈美しか得られなかったのか」(ギャラか……)。
一、執拗で偏向したクール・モー・ディー支持
一、執拗で(以下略)BDP支持と手のひらを返すような不支持
一、ギャングスタ・ラップ不支持
一、ダンスフロアの現場への無知・無関心
……などと数え出すとキリがないが、これら偏見たっぷりのご意見により我々は音を聴く前にたっぷりと先入観を植え付けられた。おれが初めて目にした泉山批判は『ミュージック・マガジン』誌上でのECDの発言———泉山のギャングスタ・ラップへの過剰な(紹介者として明らかに不適切な)悪意を指摘するもの、であった。
おそらくご本人なりには中立を保って(目をつぶって)歌詞対訳なぞ引き受けておられるのだろうが(引き受けてくれなきゃいいのに!)漏らすコメントはことごとく自分の趣味・主観で凝り固まっているため、その訳業に対しても疑いを抱いてしまう。彼女が数少ないヒップホップの初期紹介者の一人だったことは、日本のファン(およびレコード会社)には不幸だったと言えるだろう。我々はどこか違和感を感じつつ、彼女の主観で塗り固められた文章を数多く読まされてきた。
幸いに、今や雑誌『ブラスト』ライター陣を始めとするヒップホップライターは数多く存在し(『ギャングスタ・ラヴ Vol.1』まで存在し)、自分のテイストに合う評者も選りどりであるような昨今だが、ホーント当時は泉山と藤田正さんと湯浅学さんと……数えるほどしかいなかった。その影響力の高さったら……結局、評者自身の好き嫌いをあるていど度外視して「ヒップホップミュージックの全体像」を見せてくれたのはECD編『ザ・パーフェクト・ビーツ』(ミュージックマガジン・96年7月・税抜き1465円)が初めてだったのではないか。ま、これはあくまで当時のおれのような、ディスコやクラブへ行かずにオウチでCD聴いてる「ファン」にとっての話ではあるけれど。
まあ「執拗」なギャングスタ・ラップ嫌悪の発言が、もしかすると現在の日本ヒップホップシーン主流の健全さ・ポジティブさに一役買ったのだとすれば、これはこれで結果として良かったのかもしれないが、でもモシあの頃の泉山真奈美の位置に、超エロ文体のタカコスタ・ロドリゲスとか高橋瑞穂とかがいたとしたらさー、日本のヒップホップは……今よりダメか、やっぱり。でもホントにそうかな?
結論としては「泉山さんが何かカンにさわってたヒトは読むと(立ち読みするには厚すぎるけど)、スッキリする本」なんじゃないだろか。
紙の本
ブラック・ミュージックばかりでなくブラック・スラング、カルチャーにまで精通する筆者ならではの文化評論
2001/06/15 22:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:杉田宏樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
フュージョン/ブラック専門誌の草分け的存在である「アドリブ」の連載および執筆後記「女王様のひとりごと」で音楽ファンに知られる泉山真奈美の評文集だ。自ら“女王様”と名乗るくらいだから、キャリアも長い大御所のイメージを抱いていた。ライター・デビューが85年というから、今年で16年。ポップス評論の世界では中堅、あるいは最も脂が乗ったコンディションにある、と言っていいかもしれない。そんな泉山は1963年生まれ。だからまだ30代後半。意外に若いじゃない。女王様のキャラはいいと思うけど、私より若いんだから、まだ大御所ぶらなくてもいいんじゃないの?それはともかく、生まれと育ちが青森県というのは、ちょっとビックリ。東京に比べれば、情報も、肝心のディスクも入手するのが容易ではない環境で、才能を磨くことは想像以上の困難がつきまとったはずだからだ。地元の三沢基地に出入りしたり、FENを熱心に聴いて英語力をつけたという経歴は、エリートっぽくなくて共感を抱く。ぼくも洋楽をカタカナにワーディングしたり、「アメリカン・トップ40」のケイシー・ケイスンのDJを真似て、本場の英語に親しんだ経験があるからだ。つまり今の時代ほど情報が溢れていなかったことが、意欲的/貪欲に吸収するという姿勢を生んだ。結果スキルが身についたのである。スラング辞典を完成させ、今後のライフワークにするとの覚悟も共感を覚える。本書の前半は、「泉山真奈美のDROP THE BOMB!!」と題した「BUZZ」98〜01年の連載原稿の再録。時代が時代だからメインはヒップ・ホップ系の話題で、ライムや歴史的背景に目配りした筆致に、筆者の個性がうかがえる。だが泉山の本領を実感できるのは、後半の「自選ライナーノーツ集」「1963-2000フェイヴァリット・アルバム」「3万字インタビュー」。ぼくの専門であるジャズでは、ライナーを単行本に再録するケースは、死後のアンソロジー的な企画が自然なので、本書は異色な感も否めないが、CD封入のブックレットから書籍に場所を移しても、それを想定したかのような文章だから違和感はない。「泉山真奈美女史のパーソナルな想い入れに満ち溢れた、リアルな38年間のブラック・ミュージックの軌跡を浮き彫りにした」第4章は、ギャグ・ネタを交えた著者の本音が炸裂。60〜70年代の2大フェイヴァリット・アーティストがマーヴィン・ゲイとマイケル・ジャクソンというのは、男のぼくにもわかる。建前抜き、ファン気質、経験主義丸出しの文章はいい。同業者なら誰でもこんな風に、しがらみないスタンスで文章を書きたいと思っているのではないだろうか。著者の経歴をインタビュー形式で明らかにする第5集のような手法は、最近では小川隆夫さんのジャズ本でも採用されていたが、著者の肉声が聞けるという点で、これは上手いやり方だ。人柄がわかる点でも。ブラック・ミュージックと世の中の動きを並列した年表を付記。これは泉山の前半生の総括と呼ぶべき、重厚な評論集である。 (bk1ブックナビゲーター:杉田宏樹/音楽評論家 2001.06.16)
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