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20世紀最高峰のビザンツ史家の一人によるビザンツ帝国(東ローマ帝国)の通史。政治・経済・社会・文化の歴史が項目で区切られるのではなく、時代の流れに沿って著述されている。
本書のはじめでは原著刊行時までのビザンツ史の研究史も扱う。各章冒頭には原典解題がおかれて、史料批判や論拠、典拠が述べられている。
テマ制の起源などをはじめその見解が古くなってしまっているところもあるが、刊行時におけるビザンツ学の集大成ともいうべき一冊である。この本を基本として踏み出して、またこの本に立ち返るというビザンツ研究の土台といえる名著であることは間違いない。
訳文は明快でこの手のページ数の多い学術書としては読みやすい部類に入るだろう。このビザンツに関する最高峰の一冊を日本語で読めることはこの上ない幸福である。
にもかかわらず、2019年現在の状況では、絶版となっており、中古本も稀にしか出回らず、お目にかかっても非常に高い値がついている。今から入手するのは非常な困難を伴う。所蔵している図書館などで探すしかないだろう。再版が望まれる貴重な一冊である。