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最盛期には、英国の中でもトップクラスの力を持っていたある貴族に
仕えていた執事が主人公の回想物語。
古き良き時代のイギリス、華やかな屋敷の風景から一転
戦争、そして主人の転落。
新しいアメリカ人の雇い主になじみきれず、
自身の執事能力の衰えを感じずにはいられずに、
人生の「夕暮れ」に近づいていることを実感する主人公。
淡い恋の回想と、ラストはありがちな話だったけど
なぜかどうしても切なかったです(;ω;)
スティーブンス(執事ってなんでみんなスティーブンスって言うんだろう)の
主人にたいする信頼とか、仕事に対する真剣さが
がちがちにまじめで堅苦しすぎるけど、そこが良い。
個人的に女中頭のミス・ケントンの人生が
今ならむしろ現代的なんじゃないかなぁと思いました。
仕事を続けるか、それとも引退するかのところとかが。。
カズオ・イシグロの本を立て続けに二冊読んで
なんとなくその雰囲気がわかってきました。
好きか、嫌いかでいうとあんまり好きではないけど;;
「日の名残り」は読みやすくておもしろかったです。
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ジェームス・アイボリー、アンソニー・ホプキンスで
映画化された『日の名残り』の原作。
映画はジェームス・アイボリーということもあり興味があったので、
原作を読んでみたのだけれど。
良品ということはよーくわかるのだけど、
『私をはなさないで』のイライラ再現…。
私はカズオ・イシグロはダメかもしれない。
でもこの作品の主人公は執事ということなので、
過剰に思える丁寧さと回りくどい表現も納得できるか…、と
一端了解するとじわじわと物語に入り込めて、
最後にはゆっくりとしたカタルシスが。
うーん、なるほど。
ただ良い作品と好みの作品は別なので★3つ。
『私をはなさないで』よりは好きかな。
ついでに言うと相変わらずハヤカワepi文庫はサイズが嫌いなので
購入予定はなく、
これも友人から借りたもの。
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イギリス人執事の話。
伝統に対する皮肉と哀愁が漂う雰囲気で、時代ものとしても真摯な感じです。
メイドさんと置物の向きについてケンカしたり、ご主人さまのためにジョークを練習する姿がすごい可愛い。キャストを見るかぎり映画も良さそうな感じ。
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内容:古きよき時代のイギリス。大邸宅には必ずと言っていいほど居た執事が昔を振り返りつつ、元女官長を尋ねる旅に出る。思い出と現在が入り混じりつつ、語られる。
感想:イギリス好きにはきっとたまらなく好きだと思われる世界観を元に描かれる風景と人々。
文句なしに雰囲気を味わうことが出来る。そこには居なかったはずの自分が
どこかノスタルジックな気持ちを味わうことが出来るのは、作者の描き出す世界が古きよきイギリスのイメージそのままだからだろうか。
映画もよかったけど、原作も好きです。
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息詰まるような完成度を誇る傑作。
政治から「紳士協定」が滅びていく時代の変遷の中、滅びいく出口のない世界に殉じ、自分の恋愛感情まで抑制してしまう男の悲劇。
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2009.9
過去のお屋敷でのユーモラスな出来事と
段々と明かされる現実。
とても綺麗な言葉で綴られた、
失われた時代の物語。
イシグロさんの本はいまのところ外れなし
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堪らない。すばらしい。読んでよかった傑作です。
近年あんなに泣いた本もない。原書も買いたいのですが、日本語になったときの美しさも捨てがたい。いつかまた、きっと読み返すと思います。
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<poka>
アキバでもはやっている「執事」の、古き良き英国のお話。
私のような日本人にはちょっと理解できない世界ですが、興味深く読めました。
ラストが印象的でした。
<だいこんまる>
アキバにいって「執事」体験してみよっかな。
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切ない。
解説の「つまらない男」云々の記述にちょっと反発を覚えるほど主人公に感情移入(?)してしまった。
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WW2直前のイギリス、貴族ダーリントン卿はベルサイユ体制に疑問を持ち、ナチスに利用されているとは知らずに親ドイツの立場で政治活動を行う。やがて戦争はおわり、ナチのシンパとして名誉を奪われ、失意のうちに卿は生涯を終える。残された広大な屋敷はアメリカの富豪が買い取る。
卿に忠実に使えていた執事がそれらの出来事を振り返りながら、昔淡い思いを抱いた女中頭に会いに行く。
…と、あらすじだけ読んだらめちゃめちゃツボにはまりそうな小説なのですが、読んでる最中、何か気持ち悪い、もやもや感がずっと付きまとっていました。ただ単にこの作者(訳者)の文体、そして主人公に共感しなかっただけかもしれませんが。
人は誰でも、当然、未来の事はわからない。
後から振り返ってみた時に、あれは誤りだった、もっと他のやり方があったと思っても、その時点では己の信じる正義に従うしかない。
でもその「過ち」が全て、悪い結果を生むわけではない。
「一日で一番いいときは夕暮れ」という台詞が救いになってると思う。
・・・それにしても、イギリスのツンデレのめんどくささ、はんぱない。
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「人生一度きり」ということをたまらなく痛感させられた。
イシグロさんらしい哀愁感漂うラストに思わずホロリ。
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作品全体に漂う、過ぎたものを惜しんで愛おしむ切なさ
ずっと抱いて来た信念と美学を揺るがす違和感がゆるやかにあらわになる過程…本当に上手い小説だなあ、と。
個人的なことと社会的なことがうまく絡み合って、さらに英国そしてヨーロッパの特性、「伝統」
伝統は歴史のこと。その歴史に含まれる悪。
ノスタルジーの空気でいっぱいでありながら、ノスタルジーそのものを本当に肯定すべきなのか?と問いかけて来る小説。すごいです。
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(2010/02/08読了)
09/6/14
積読
10/2/4
再読開始
序盤は、スティーヴンスの語り口が鼻について、なかなか読み進めなかった。
(『わたしを離さないで』を読んだ時もそうだった)
終盤は良かった。
「日の名残り」の「日」とは、大英帝国の過去の栄光であり、過ぎ去った人生の最良の時のことだろう。
旅の終りに「日の名残り」を見つめながら、スティーブンスは主人ダーリントン卿の過ち、そして自分自身の過ちを確認し涙する。
スティーブンスはこの時、60歳前後か?少なくとも、若くはないだろう。
人生の終りさえ意識し始めるであろうこの歳で、自分の信じてきたものの過ち、虚しさを認めるということは、どれ程の哀しみと切なさをもたらすのか。
通りがかりの男が、スティーブンスに語った言葉が全てを救ってくれるような気がする。
━━ 「(省略)いいかい、いつも後を振り向いていちゃいかんのだ。後ばかり向いているから、気が滅入るんだよ。何だって?昔ほどうまく仕事ができない?みんな同じさ。いつかは休む時が来るんだよ。(省略)そりゃ、あんたもわしも、必ずしももう若いとは言えんが、それでも前を向きつづけなくちゃいかん」
「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日で一番いい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。わしはそう思う。(省略)」(350頁)
日の名残りを見つめる時こそが最良の時なのだ、と言えるような人生を送れるだろうか。
2010/11/**
映画を観た。
ポプキンスは好きだが、スティーブンスのイメージとは違う気がする。あくまで個人的に。キャストよりも、ストーリーに問題がある。大事なところを端折るな。
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『私を離さないで』もよかったけど、これも、すごくよい。
読んでいる最中に感じる面白さという意味では、今のところ『日の名残り』の方が好きです。
自分が古びること、自分の存在意義が滅びてゆくこと、がテーマの小説、なのだと思います。
本当に行儀に適った小説です。
テーマとか主張とか、つい作者が登場人物の口やモノローグを借りて説明しはじめてしまう凡百の赤裸々な小説とは違い、
ただただ外堀を埋めることで確かに読者を見せたい景色の前まで運んでいく抑制の利いた筆致。
好きです。
今、主人公の父が『失くした宝石を探すように』あずまやの石段を下を向いて歩いているシーンを過ぎたところ。
比喩を使うと小説は腐敗するとかいうけれど、このカッコ付きの映像的な比喩は、響きました。
多分作者としては渾身の一撃というか入魂の一投なんやけど、冷静な提示の仕方で読者を醒めさせないのがさすがやなと思いました。
うーんおもしろい。しばらく楽しみます。
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『日の名残り』やっと読了。
最後、リトルコンプトンに着いてからの時間的な濃密さに、思わず緊張感でハァハァしました。
しかもラストの桟橋のシーンときたら、劇的な悟りとでも言うべき視界の開け方というか、わかってはいたけれど直視するかどうかを思案するために建てておいた堰が決壊したというか、
人が打撃を受けたとき、内部がいっきょに顕わになる感じ、それでも日常に踏みとどまるように働く保護本能とか、うますぎて頭垂れざるを得ませんです。
しかし丸谷才一の解説ってすごい含蓄あるけど、直截的で余韻も何もない(悪いといってるわけじゃなくて私が感傷的だということです)。
あらすじを3行でまとめる力業には恐れ入るけど本編読んだ直後に読むのでなかった(笑)。
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英国執事好き必読。執事という仕事に誇りをもって人生を捧げてきたスティーブンス。だけど時代が変わり、価値観も変わり…。淡々と語られる執事の心の動きに引き込まれます。翻訳の日本語の美しさや浮かぶ風景も素敵です。