- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
2 件中 1 件~ 2 件を表示 |
紙の本
森鴎外の名作「舞姫」のヒロイン、エリスはユダヤ人とされる。彼女は何者だったのか。その謎解への試み。
2001/07/11 15:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:高橋洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治の文豪・森鴎外(1862−1922年)の処女作「舞姫」(1890年、明治23年発表)はドイツのベルリンに留学した若い官吏・太田豊太郎と、美しい踊り子エリスの悲恋を描いた傑作で、そこには、当時のベルリンでのユダヤ人問題が反映している。これまでのさまざまな比較文学的研究などの成果から、ヒロインのエリスはユダヤ人として造形されてはいないが、居住地など実際にはユダヤ人であることを推測されるサインがこの短編中の至るところに散りばめられていることが明らかになっている。そうした面を意識するならば、当時の封建的な環境に打ち負かされエリスとの愛を断念する主人公・豊太郎の内面だけでなく、当時ドイツに留学中であった鴎外を囲んでいた内外の状況も、この作品からかなり読み取ることが出来るのである。
荻原雄一・編『「舞姫」−エリス、ユダヤ人論−』は、このような視点から、「舞姫」を新たに読み解く多彩なアプローチからなる。構成は、第一部が「エリス、ユダヤ人論」で、荻原雄一「舞姫」再考、「エリス」再考、平井孝「鴎外と交錯した人々」など、第二部「エリ−ゼとは誰か?」では、金山重秀・成田俊隆「来日したエリ−ゼへの照明」など、第三部「ベルリンのユダヤ人」では、山下萬里「森鴎外「舞姫」の舞台−ベルリンのユダヤ人」、真杉秀樹「「エリス」の肖像−ドイツ女性の社会史からの照明」など。
森鴎外・森林太郎が、帝国陸軍の命を受け横浜を出発したのは1884年(明治17年)で、ベルリンに滞在したのは1887年から88年にかけてである。エリスの住まいのモデルとなったのはベルリンのクロスター通り97番地の鴎外の第二の下宿だということで、200年を超す歴史を持つユダヤ人の多い地域としてこの界隈は知られていたという。鴎外がヒロインのエリスとの出会いの場面に描いている「鎖したる寺門」がある「クロステル巷」は、そのクロスター通りをさすとされている。
エリスに声を掛けた官費留学生・豊太郎は、彼女の住まいに同行し、父親の葬儀の費用のために時計を貸し、二人は親しくなっていく。だが、それを目撃した留学生仲間に言いつけられて官職を失い、母親は自殺し、それをきっかけに、クロステル街のエリスの住まいに同棲する。結局、豊太郎は帰国を決意し、妊娠していたエリスはそれを知って、気がおかしくなる。ところが、鴎外が帰国した4日後、鴎外の家族の回想記などでは、小説のヒロインと同名のエリスという名のドイツ女性が鴎外を追って横浜に着き、彼女は35日間滞日して、帰国し、鴎外はその5か月後に結婚した。彼女の姓名も探索されて、エリ−ゼ・ヴァイゲルトないしはヴィーゲルトと判明している。このエリスつまりエリーゼとは何者であったのか。本書は、さまざまな角度からその謎解きを試みている。 (bk1ブックナビゲーター:高橋洋一/評論家 2001.07.12)
2 件中 1 件~ 2 件を表示 |