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「西洋音楽史」が面白かったので。オペラも伝統芸能のようにすごく「型」が決められた芸術だったみたい。20070203
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オペラというとんでもない金食い虫が、いかにしてスポンサーを王侯貴族からブルジョワ、さらには一般大衆へとシフトしていくかという変遷とともに、「芸術」としてその「作者」が神のいない時代の神として君臨するまでの物語として、要領よくまとめられている。
映画との類似性がよく言及されるのもわかるが、著者は映画の知識には乏しいとみえて「ひまわり」をニーノ・ロータの作品と間違えたりしている
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歌つきの演劇なら、ミュージカルもあるいは能なんかもそうなのに、オペラをオペラだと言い切る要素ってなんだろう? と以前から思ってました。能とはさすがに違うだろうとは思えるけれど、オペレッタなんてものもあるし、オペラの定義がわからない。
そんな無知な私に親切な手引書でした。
オペラの個々の作品を解説したものではなく、オペラがいつごろどうした状況で生まれて発展し、現在はどんなふうに落ち着いているかという、一種の歴史書。
その歴史についても、作品の作り方や特徴だけではなく、オペラが生まれ上演された時代の空気を中心に書いてくれているので、私のようなオペラの素養がない人ばかりじゃなくて、オペラ愛好家の方にとっても新鮮な知識を提供してくれる本ではないかなと思います。
とりあえず、オペラってこんなものという雰囲気はつかみました。
映画や小説に出てくるオペラ劇場の貴賓席やボックス席ってなんであんな舞台の見づらい場所にあるんだ?という疑問が解決されたのが個人的には一番嬉しかったポイントですね。
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現・京都大学人文科学研究所准教授の岡田暁生による、西洋オペラ通史。2001年度サントリー学芸賞(芸術・文化部門)授賞。
【構成】
はじめに 「オペラ」の定義を兼ねて
第一章 バロック・オペラへの一瞥、または、オペラを見る前に
1 オペラ芸術の土台としてのバロック・オペラ
2 「モーツァルト以前のオペラ史」のあら筋
3 オペラの三つの根本性格
第二章 モーツァルトと音楽喜劇、または、オペラの近代ここに始まる
1 オペラ・ブッファの勃興
2 モーツァルトとオペラの「人間化」
3 女、女、女-モーツァルトとエロス
第三章 グランド・オペラ、または、ブルジョアたちのヴェルサイユ
1 革命・ナポレオン・王政復古の時代
2 七月王政とグランド・オペラ
3 グランド・オペラの経営戦略
第四章 「国民オペラ」という神話
1 国民オペラの成立
2 「国民オペラ」のいかがわしき正体
3 そしてオペラは海を行く
第五章 あらゆる価値の反転、または、ワーグナー以降
1 リヒャルト・ワーグナーの欺瞞と偉大さ
2 オペラの芸術作品化
本書は、著者が冒頭に述べているように、オペラ作品を年代毎に解説するようなものではない。評者である私自身、オペラ作品に接することがほとんど無いため、作品の内容を説明されても、それが具体的な楽曲と結びつくことはほとんど無い。しかし、それでもオペラ作品ではなく、オペラ作品を受容する文化的・歴史的背景に目を向ける本書では全く苦にならないのである。
バロックに源を発するオペラは、王侯貴族からの莫大な出資を背景にした絢爛豪華な消費スペクタクルであった。型どおりの筋に型どおりの音楽がつけられた作品が数多く制作され、オペラを楽しむ貴族階級にとっては、作品の内容そのものよりも、劇場内で「社交」を展開することにこそ意味のあったのである。
18世紀末にフランスで起こった劇的な革命の前後から、オペラとオペラ劇場の歴史は転回する。革命以前から著しい衰退を見せていた封建的権威者達は、もはやかつて絶対主義王政の時代のごとき享楽に大金を投じる力を持たなくなった。そして、モーツァルトという人間劇としてオペラを描く天才が現れた頃から、オペラ劇場の主役が貴族階級から市民階級とりわけブルジョワ階級に移り変わっていく。
革命以後のフランスで人気を博した「グランド・オペラ」では興業的側面が強調されるようになったが、それでも新たな成金ブルジョワがかつての貴族階級のまねごとをするための社交場であることには変わりがなかった。
このブルジョワ的オペラが、19世紀半ばの「国民国家」形成期の「国民オペラ」の成立を経て、さらに観客の裾野を広げていく。ここにおよんでオペラ劇場にはかつてのような「社交場」としての雰囲気は大きく薄れ、一般市民が作品を楽しむ場としての性格が強くなった。そして、ワーグナーが出るに及んで、バイロイトに象徴されるような襟を正して作品鑑賞をする場としての劇場、私語など挟まずに作曲者の作り上げた音響を静かに聞き入れる観客が成立したのであった。
ある種のスノビズムが漂うオペラ劇場という場に焦点を充てた本書の視点は、オペラ作品を知らなくても18~19世紀のヨーロッパ文化の一端を垣間見ることができる
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[ 内容 ]
オペラ―この総合芸術は特定の時代、地域、社会階層、そしてそれらが醸し出す特有の雰囲気ときわめて密接に結びついている。
オペラはどのように勃興し、隆盛をきわめ、そして衰退したのか。
それを解く鍵は、貴族社会の残照と市民社会の熱気とが奇跡的に融合していた十九世紀の劇場という「場」にある。
本書は、あまたの作品と、その上演・受容形態をとりあげながら「オペラ的な場」の興亡をたどる野心的な試みである。
[ 目次 ]
第1章 バロック・オペラへの一瞥、または、オペラを見る前に
第2章 モーツァルトと音楽喜劇、または、オペラの近代ここに始まる
第3章 グランド・オペラ、または、ブルジョアたちのヴェルサイユ
第4章 「国民オペラ」という神話
第5章 あらゆる価値の反転、または、ワーグナー以降
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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オペラが王侯の祝典の一形式として誕生し、フランス革命以後は徐々に一般に開かれた民主的な娯楽になり、十九世紀末から二十世紀初頭になると近代的な意味での、芸術へと変貌していく。そして第一次世界大戦以後は、映画にその地位を奪われていった。
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「オペラ」という空間が、それぞれの時代の人たちによってどういう使われ方をしていたか、どういう場だったかについて焦点をあてている本。したがって作品集ではなく、逆にオペラを知らない私のような人間でも楽しく読み進めることが出来た。
「オペラ」、あるいは舞台・演劇の類は、舞台の前面に客席があって、俳優と観客が向かい合う…という構図をイメージしがちだが、初期のオペラには実はそういうものはなく、側面のボックス席こそが貴賓席であったという。つまり、貴族にとってはオペラは鑑賞するものでなく、社交の場であったということらしい。
こういう視座というのは、「当時の人が実際にどう使っていたか」を理解しないと得られない知見だと思われる。得てして歴史というのは過去を過度に美化するか、逆に現在の視点から見下ろすように批難するかに分かれがちだが、この本はその辺がクールで好感が持てる。なかなか面白い。
万事、背景や歴史を知っておくと正当さや深みが醸し出せるのではないでしょうか。
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ストイックなバッハ、交響曲系列のクラシック音楽とはひと味違う、華やかでバカバカしいオペラ文化を学べた。
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平坂書房で購入する。著者は、「西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 」等の著書で著名な京都大学の先生です。再読です。僕にとって、オペラと言えば、「オペラ座の怪人」ではなく、「オペラの怪人」です。オールナイトニッポンの2部での伊集院光さんのキャッチフレーズでした。普通に話せばいいのに、歌にして、意味なく美声を張り上げるキャラクターでした。僕は、このキャラクターが大好きでした。伊集院さんの人気があがってくると、このキャラクターを封印します。当然の選択ですが、残念です。このキャラクターは、オペラに関するイメージです。これは、僕だけのイメージではなく、世間一般のイメージだと思います。この新書によると、20世紀に入ると、このイメージは、ヨーロッパでも同様なようです。本来、オペラに入ってくるべき人材が、映画業界に行ってしまったことが最大の問題のようです。特に、ジョン・ウイリアムスは残念だと指摘している。
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音楽学者の岡田暁生氏が17世紀から19世紀にかけてのオペラの歴史をまとめたもの。いわゆる有名作品の見どころや内容解説、有名な作曲家紹介ありきのオペラ史ではなく、オペラ劇場という「場」の歴史を辿ることに主眼が置かれており、当時の社会情勢や風俗などを絡めてオペラ史やオペラ作品の成り立ちが解説がされており、とても面白く読めました。モーツァルトの先見性と良くも悪くもワーグナーの影響力の大きさを再確認しました。音楽史の本ですが、広くヨーロッパ史などに興味がある人にもおすすめ出来ます。
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2013年はジュゼッペ・ヴェルディとリヒャルト・ヴァーグナーの生誕200周年にあたることから、再読しました。ヴェルディのオペラはイタリア統一運動(リソルジメント)の精神的支柱のひとつとされ、「Viva! VERDI!(ヴェルディ万歳!)」に「イタリア国王ヴィットリオ・エマヌエレ(II世)万歳!」の頭文字を重ねていた、という記述は、例えば中公文庫旧版の『世界の歴史』にも描かれていた有名なエピソードでしたが、同じ中公文庫に収められた新版『世界の歴史22近代ヨーロッパの情熱と苦悩』では、そうした記述は見当たりません。また、比較的新しいヴェルディの評伝小畑恒夫『作曲家◎人と作品 ヴェルディ』(音楽の友社、2004年)でも、そうしたヴェルディとリソルジメントとの直接的な関係は注意深く疑問が出されています。本書第四章「「国民オペラ」という神話」ではこうした疑問に納得ある回答を示しています(実際、小畑氏の本はこの部分を参照しているとのこと)。現在でもこうした指摘がある一方で、「ヴェルディ神話」は健在のようではありますが。。。
本書全体については、著者は前書きでオペラの定義を、1)絶対王政(バロック)時代が始まる十七世紀に、2)中欧ヨーロッパのカトリック文化圏において、3)宮廷文化として誕生し、4)フランス革命以後は、新しく台頭してきたブルジョア階級と結合し、5)十九世紀にその黄金時代を迎え、6)第一次世界大戦後の二十世紀大衆社会の到来とともに歴史的使命をおえたところの、7)音楽劇の一ジャンル、と明示しています。
そのうえで、オペラとその受容の歴史をたどる本書は、単なる音楽史の領域を超えて、ヨーロッパ社会文化史のコアの部分を照射する刺激的な論考となっています。巻末の参考文献やディスク紹介も参考になります。
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オペラの歴史、これからを書いた極めて良質、簡潔なオペラ論。バロックオペラに始まり、モーツアルト・ロッシーニのオペラの笑いの違い、フランス・グランド・オペラ、そしてヴェルディがムッソリーニに、ワーグナーがヒトラーに利用されることになった国民オペラの幻想!オペラのライバルとなった映画の影響、2つの大戦を経て、ロマンを求めるオペラが時代遅れとなり、ニヒルな方向にならざるをえず、変質していかざるをえなかった歴史。この結果、オペラは19世紀を象徴する文化になったが、今後はどうなるのか?欧州そして世界の文化論でもあります。
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20140830読了
オペラの成り立ち。おもしろい!蔵書。●昨年夏に読み終わった新書。レビュー書かないとと思いながらそのままになっていたらあっという間にもう翌年になってしまった。
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とても読み応えのある好著。オペラという芸術形態を歴史的な背景のなかでとらえなおし、その社会的な役割の変遷をたどる。そもそも宮廷文化として誕生したオペラが、19世紀市民社会のなかで貴族に憧れる市民のための豪華な娯楽として黄金期を迎え、そのなかで国民オペラや異国オペラなどが誕生。やがてワーグナーが現れてオペラは娯楽でなく文化財へ。しかし第1次大戦後はそれまでの価値がすべて崩壊し、新しい試みは行われているけれどももうオペラとはいえなくなっているのではないかと。この流れが、具体例をあげつつ詳しく説明されていて説得力がある。
オペラを芸術として礼讃するのではなく、批判的に考察しているので、時にかなり辛らつな意見も出てくるが、まさにそういう「ツッコミどころ」こそがオペラのおもしろさだと思っているので、私は楽しんで読んだ。巻末の文献の手引きもとても役立ちそう。
でも最後のCD・LDガイドは…この本が出たのは2001年だけど、その段階でまだLDって存命だったっけか…?
あーあと忘れてはいけないのが、どちらかといえばマイナーな存在である作曲家数名に特に光があてられていること。ケルビーニやスポンティーニは過小評価されているそうだ。そしてマイヤベーアの存在感がこの本では非常に大きい。マイヤベーア!改めて聞いてみなくてはと思った次第。
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・ロココ時代の喜劇オペラ
→ブッファとセリアの合体、「人間劇としての喜劇」(サリエリ『まず音楽、そして言葉』…『カプリッチョ 』のモデル)
・パリは「19世紀オペラ史の首都」
…政権の交代とともに音楽様式が交代
「救出オペラ」(『フィデリオ』もその影響を受ける)→ロッシーニの「他愛ない笑い」の純化による喜劇オペラ→グランドオペラ(イタリア座のオペラ通)
・「国民オペラ」…『魔弾の射手』(香辛料としての国民色?)→異国オペラと紙一重
・社交→作品鑑賞→解釈鑑賞