紙の本
単純な判断の集積が知的にみえる理由とは!?
2002/07/14 14:21
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投稿者:sfこと古谷俊一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
個々のアリは目先のことに反応するだけに過ぎないのに、アリの巣全体としては(完全とはいえないものの)巧妙に機能するのはなぜか。管理者なしの労働配分システムの実態を、著者の長年の実験と観察により分析しています。
全体としては散漫な感もありますが、実際に研究しつづけたプロセスや考え、回り道やいかに工夫したかを示しているため、読みやすく研究を理解しやすくなっていると思います。
必然的な物理過程による変化と、複雑な情報構造を含まない接触信号が組み立てていく全体行動。アリコロニーの数量的変化が振る舞いにもたらす質的変化。複雑系としてのアリの巣のシステムについて、いろいろと知ることができます。アリが仕事をしているのを眺めていた幼児のころを思い起こしながら読んでみると、なお楽しめます。
紙の本
研究心を問う著
2001/07/07 22:40
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投稿者:もとますた - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書において特筆すべきは、その飽くなき研究心と、乱暴ともいえる方法論である。こういう分野に「フィールドワーク」という言葉が適切なのかはわからないが、本書においてはまさに「フィールド」での仕事に他ならない。
ものごとへの関心というものは、行動になって結実するのであろう。書かれている内容は研究途上とも言えるし、専門外の人が具体的な事実から得られるものはあまりないとも思うが、本書で示される熱い研究心に学ぶところもまた、多いのではなかろうか。
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タイトルは「アリはどう働くのか」の方がいいのかもしれませんね。「なぜ働くのか」に関しては遺伝子の観点から有力な見解が出ていたと思うのですが(半倍数体説・・・という名前だったような気がします)、それについては触れられてなかったように思います。でも、読み物としてはおもしろかったです。呑気なアリの行動にちょっと笑ってしまいました。アリに興味のある方は読んで損はないと思いますよ。
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これもネットで紹介されていて興味が湧いて取り寄せた本。でも、あんまり…文章にひっぱられない、というか、昆虫、野外研究の人にはおもしろいのだろうけど…ってかんじかな(というほど読んでないんだけど。いま確認したら60ページで止まってた。笑)。
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図書館から借りました
学術書。
アリの生態本。
筆者はアリゾナ砂漠でアリを追跡している学者さん。
やることがダイナミック。
コロニー(巣)の生態を知るために、アリの巣をぶっ壊し、全部のアリを捕まえて数を確認する等々やってのける。結婚飛翔するアリを捕まえるために、二百もの罠を仕掛ける。(ちなみに、飛翔日は人間のしれるところではないので、何週間も罠がベストな状態で作動できるように設置しなきゃならないという)
巣の年齢が好戦的かどうかを決める手がかりとなるが、アリの世界にカーストはなく、知恵や経験を伝達するわけでもないのに、この差がどうして生まれるのかはわからないまま。
作者はこの本が書かれたあとも、アリゾナでアリを観察していることだろう。
地道な観察こそが、真理にたどり着く、という当たり前だが得難い教訓をくれる。
二年も三年も四年も、じっくりと張り付いてアリの巣を観察するような情熱は何かを生み出せるのだろうな。
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訳者はテレビのバラエティーでも有名な池田清彦氏。この本自体はそこそこ古く、もう14年も前に刊行されたもの。
アリがどのようにコロニーを形成するのか、どのように管理されているのか(と言うか、実は「管理されていないにも関わらずなぜ役割分担ができるのか」なのだが)、どのように意思疎通をしているのかについて、「この本を著した時点で」判明したことを厳密な観察をもとに細かく書いています。この観察作業を創造するだけでも、著者がどれだけアリの行動の解明に心血を注いでいるかが分かります。
また、研究者の著作となると「ある程度、結論が出た状態のもの」であり、分かっていない部分はボカしたりうまく回避したりするものが多いという印象がありますが、この本は割合はっきりと「ここはまだ分からない」と書いてくれてます。そういう正直さはむしろ好きです。
個人的には、アリが交尾のために巣を旅立つときの神秘性が面白かったです。こういうのを読んでしまうと、ありきたりの表現ながら「自然ってすげぇな」と思ってしまいます。
この本が出てから14年。著者の研究も進んでいることでしょう。新たに判明したことを再び本に起こしてくれることを期待しています。
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読書録「アリはなぜ、ちゃんと働くのか」4
著者 デボラ・ゴードン
訳 池田清彦、池田正子
出版 新潮OH!文庫
p214より引用
“ アリの仕事はそのアリの最近の遭遇の経
験に依存する。塚ハタラキアリに多く接触す
るほど、塚作業が多く行われるようになる。
あまり働いているように見えず、歩いていた
り立っていたりするアリたちが塚ハタラキア
リにほとんど出会わなければ、歩き回り続け
る。”
目次より抜粋引用
“風景のリズム
アリ社会の成長
アリコロニーの森
アリ社会の中で
アリの通路のネットワーク”
生物学者である著者による、アリの生態を
記した一冊。
アリコロニーの観察からそれから見られる
アリの生態の不思議さまで、著者自らアリ塚
に挑み実験と調査を繰り返した顛末が記され
ています。
上記の引用は、実験室でのアリの仕事配分
の、野外現場との違いを記した項での一節。
周りの仕事の影響を受けて、自分の仕事が決
まるという部分が強いのでしょうか。外から
受ける情報が少ない時代には、人間もこうい
う風に生き方が決定することが多かったので
しょうね。蛙の子は蛙といった感じに。
炎天下でアリの巣を掘り返したり、巣のア
リの数を全て数えたりと、文章を読んでいる
だけでその労力が思われます。
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