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昭和色街美人帖 私の〈赤線時代〉 みんなのレビュー

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紙の本

満州生まれの引き揚げ者がずっと世渡りしながら眺めてきた「玄人」のオンナたちの写真集

2001/07/04 17:18

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:大月隆寛 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 いい本が出ると気持ちいい。広岡敬一だ。当年とってほぼ八十歳だ。カメラマン、なんてもんじゃない、まこと写真師の心意気で仕事してきた、これまたあたしのひそかに認定する巷の独立系民俗学者のひとり。『昭和色街美人帳』(自由国民社)は、そんな満州生まれの引き揚げ者がずっと世渡りしながら眺めてきた「玄人」のオンナたちの写真集だ。
 写真集だが、写真を観るな。まず文章だ。それからゆっくり写真を味わうがいい。視線の放埒に任せる前に、文字の鎮静効果に身をゆだねよう。かつて、長谷川伸が品川宿の女郎屋に裏口から出入りするような巷の若い衆だったように、この著者もまた吉原界隈の流しの写真屋として「赤線の人たちと内輪に近い生活を送った」。そのあたりのことが淡々と、活字本来の端正で刻まれてゆく。巻末の「戦後・性風俗年表」もマスターピースもんだぞ。
 昭和28年頃、とクレジットされている浅草ロック座での春川ますみに、あたしゃ泣きました。ああ、阿佐田哲也が生きてたら、ぜひとも書評してもらいたかったなあ。

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