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ぼくはエクセントリックじゃない グレン・グ−ルド対話集 みんなのレビュー

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ぼくはエクセントリックじゃないグレン・グールド対話集

2001/10/03 22:17

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:稲倉達 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ピアノ演奏から、演奏するという行為や楽器のもつ生理を排除し、音楽そのものを純粋に取り出そうとする特異な演奏家グレン・グールド。それは結局のところ不可能への挑戦であり、矛盾を孕まざるを得ない。

 彼の演奏はロマン主義的なものではなかったが、彼の音楽探究の姿勢は多分にロマンティックだった。そして、ロマンティックな冒険者であるグールドが、饒舌に自己を語ったのはごく自然なことだ。

 実は私は、そんな彼の語りを読みたくないという気持ちがある。彼のみずみずしい音楽を純粋に楽しむなら、騒々しい舞台裏は知らずに済ませた方がいいのだ。CDに耳を傾けていればそれで十分じゃないか!……無論、そんなこと出来るわけない。彼のCDにはグールドという人間の存在が見落としようもなく深く刻印されているからだ。彼の演奏に魅せられた私は、彼自身にも魅せられてしまっているのだ。

 本書は、『ゴルドベルク変奏曲』の演奏などを撮ったモンサンジョンによって編集されたインタビュー集だ。彼の3冊あるグールド本から最初の邦訳がついに出たことになる。巧みで魅力的な構成で編まれており、「語るグールド」に初めて接する読者にとって、様々なインタビューを一挙に読めるお得な一冊になる。「グールドの思想への序論を作りえたかも知れぬ」という編者の期待は、見事に達成されたと言える。

 同時に、すでに色々と読んできたグールド・ファンも、やっぱりやり過ごすことが出来ない本ではないか。まず目次の前に、ジョック・キャロルのフォト・ルポルタージュ。多くの写真が既刊の本で見られるにしても、心憎いばかりのイントロダクションである。中心部は、1980年に10人のジャーナリストによって行われたインタビューから抜粋して、テーマ別に再編集したテキスト。これを編者は「ヴィデオ座談会」と名付け、あたかも欧米各国からテレビ電話でよってたかって質問したかのような想定になっている。いかにもグールド好みの趣向ではないか。

(稲倉 達・雑誌編集、文筆業 2001.10.04)

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