紙の本
暴力臭が全くなくて、え、これって本当に花村萬月?って言いたくなる。おまけにバイクで日本一周するときはどういうルートをとれば景色がいいかも教えたりなんかして
2004/03/27 22:29
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
花村は1955年生まれ、中学卒業後、全国を放浪したという。芥川賞受賞『ゲルマニウムの夜』は随分話題になったようだし、その後に出版された本の数も芥川賞作家としては多い方だろう。ただし、読んでいる人の姿を見ない、という点では立松和平に似ている(誤解だったらごめん、でも二人の本が図書館の書架にいつまでも綺麗なままに置かれているのを見ると、つい言いたくなるんです、私って正直だから)。
花村が苦手で『ゲルマニウムの夜』の性表現の生臭さと暴力の匂いに辟易して、以来読んでこなかった。そんな作家が、オートバイについて書く。私は免許こそ持っているけれど、完全なペーパー、バイクなど乗ったこともなく、ただプーカプーカ夜の道を走っているガキどもを横目に眺めては、バーカと罵る口である。
嫌いなものが二つも重なっているのに、なぜ手にしたか。着実に出版される花村の本の存在が気になる、自動車自体は嫌いではない、そして立ち読みをしたとき、この本での花村の語り口が、意外なほど優しい、オートバイは危険である(どちらかというと、自動車事故は悲惨である、と正直にいう)と認める素直さに、あれ、面白そうな、と思ったのだ。
第一章は、おもに自動車の危険性や心得を丁寧に教えてくれる「オートバイとの出会い」。第二章は、北海道をオートバイではしる時のベストルートから、食べ物まで案内する「北海道への旅」。第三章は、テントで眠ることもいいけれど、路肩にバイクをおいてその横にただごろんと眠るのが自分流だという「基本は野宿」。第四章は、旅先の思い出、特に紀伊半島で出会った意地の悪い公園管理人のことなどを暴露する「本州〜九州」。第五章は、様々な旅のありかたから、環境論者への反発までを告白する「旅の心得」。
ともかく親切である。北海道のツーリングするときの名所紹介から、ヤクザにあわびを奢られたときの身の処し方、地元の人々の哀しい目に対する応対から、女子校生の嘲笑への対応、駅員さんに駅に泊めてもらうときのマナーから、キタキツネとうまく付き合っていく方法、これがあの花村萬月?と思う。
それは、野宿のルールに入ると、一段と目立つようになる。雨で路面が滑る、それを避けるには。雨が降っているなら、日没前でもためらわずに休む場所を決める、お昼ご飯は白米だけでもいいじゃないか、おいしいものを食べるのは一日一食、それもスーパーの惣菜売り場のおかずと、昼食の残りのご飯でも十分なんだぞ。どんなところに野宿できそうな場所があるかも、実名を上げなくてもヒントを教えてくれる。
ただし、その化けの皮が剥がれる、というか、自分で素顔を見せたのが第五章。環境問題への侮蔑的な感情を、優しいことばで書き連ねていく。未だに文学を、純文学、大衆小説と分類し、自分は前者であるとほのめかしたりするのを読むと、おいおいと言いたくなる。多分『ゲルマニウムの夜』以来、私がこの作家の小説を読まなくなったのは、彼の中にある恐ろしいほどの傲慢さ、マッチョに違和感を覚えたからだろう。
とはいうものの、オートバイ好きではない私が、それに憬れはしないものの、その旅の魅力・スピード感を楽しんだこと、海を見ながら北上するならば、日本海側を走り、そのまま太平洋岸を南下すればいつも左手に海を感じられるという当たり前のことを教えられたことは素直に認めたい。和歌山には、そんないやな人間が多いのかとか、やっぱり関西の人間は冷たいかとか、教えてもらったことも為になる。むしろ和歌山県人の反論を期待したいくらいだ。
ただし、20年前の写真しか掲載していないことについては、今の姿はきっと無様なまでに太ってしまい、絵にならないから古い写真を使ったのだろうと邪推してみたくなる。純文学がそんなに偉いなら、苦悩する痩せた姿を見せてみろ、と思わず乱暴な言葉をぶつけたくなるのは、私だけだろうか。
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何故、徒歩でなく、自動車でなく、オートバイで旅をするのか?
この本を読んでいると作者のオートバイに対する情熱がうかがえます。
オートバイは風を感じることが出来る。そして、その意味で著者は野宿を勧めています。
読み終えた後、自由奔放な旅に出たいと思わせてくれる一冊。
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私の「バイクに乗りたい」という気持ちの80%は花村萬月の小説からきています。それくらいこの人の本にはバイクへの愛情があふれている。そんな花村萬月が書いたバイクエッセイとなれば、読まない訳にはいかないでしょう!
読んだら旅に出たくなる事間違いなし。まぁ、野宿はしないけどね…。いつか沖縄を走りたいなぁ。
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うーん。もっと若いうちに(せめて学生時代とかまでに)自分もオートバイと出会えてたらよかったのになと思う。
なんのために、わざわざ雨に濡れに行ったりするのか?野宿なんかするのか?ということが書いてある。
自宅でごろごろしていたり、本ばかり読んでないで自分の方法で旅に出なさいと著者は言っています。
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[ 内容 ]
不自由な日常から、自由な世界へ。
オートバイを愛し、野宿旅を続けている人気作家が、その思想と実践について語る。
北海道から九州までのお薦めのポイント、野宿や運転技術の具体的なノウハウなど、役立つ情報も満載。
さらに、著者自身のユニークなエピソードも交えつつ、自然の呼吸を皮膚で感じる素晴らしさ、速度の持つ超越的な力など、自由な旅に出ることの本質を論じていく。
カラー口絵4ページをはじめ、著者秘蔵のツーリング写真も掲載。
[ 目次 ]
第1章 オートバイとの出会い
第2章 北海道への旅
第3章 基本は野宿
第4章 本州~九州
第5章 旅の心得
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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中には読んでいて楽しい部分もあるのだが、全体的に説教くさい。
しかも、文章が下手だとおもうのだが。。。。。
一応、作家さんですよね。
素人みたいでした。
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作者の花村さんはすこしやんちゃすぎるバイク乗りなので、おばさんライダーの私にはあまり参考にはならなかったが、バイクで旅をするのは、いろいろなしがらみから離れ、自由になれるというところには共感できた。
時刻表や宿泊地に縛られることなく、道があれば進み、興味があれば立ち止まり、夜になれば野宿する。
そこには新しい自分の発見や出会いがあり、また、一生忘れられない景色を見ることができる。
雨で体が半分地面にのめり込んだまま眠り続けるなんてことは私には到底できないしやりたくもないのだが、人間はどんな環境にでも慣れることができるそうである。
これからの人生で、もう駄目だ、というような状況に会ったときに、この言葉を思い出すだろうなと思った。
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バイクは危ない。自分にとっても、社会にとっても。車や原発なんかもそうだけど。
で、そこを分かって楽しめ!ってことなんだけど、まぁそりゃそうだって感じ。
筆者のようなリスクの負い方は好きじゃないけど。
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免許もないけれど、バイクに乗ってみたいーと思ってつい手を出してしまいました。上手く乗りこなせるかはさておきですが。花村さんの作品は初読み。かなり変わってるのかもしれませんが、私の旅のスタイルは近いものがあります。計画が目指すポイントだけ。最近は車だけではなく、バスや電車にのることも覚えて、それぞれの恩恵も感じています。公園の東屋で野宿はさすがにできそうもありませんが、精神論としてはお手本にしたいこともたくさん。自分の興味のあることを責任を伴う自由をもって楽しめばいいですよね。
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たしかFBのキャンプグループで勧めていた人がいて読んでみた一冊。
バイクやツーリングの楽しさ、野宿のノウハウなどを自分の体験を交えながら書いているのかなと思ったら、まったく関係ない原発の話や犯罪自慢?みたいなことも多く当初想像していた内容とかなり違ってた。出来の悪い学生時代を送っていて、バイクにも乗っている自分には理解や共感出来る内容も多いけど、普通の真面目な人が読んだら嫌悪感がわくだろうなと思ったエッセイでした。
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大変面白かった。
旅行記としての面白さや、オートバイについてのエッセイとしてではなく、何よりもやはり小説家の書く文章はさすが、というか、読み物としての面白さが、他の新書とは違う魅力を放っていた。
ただ、新書という形を取る以上は、ここには物語ではなく知や思想が何よりも染み出ていなければならないのだが、そこについても問題なし。
旅好きな私であるが、もっと旅をしたくなった。
愛車で、全国を走り回ろうかしら。
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バイクでの旅と言っても、バイク野宿旅(キャンプではないです)の話で、さらに言えば旅そのものの話はそれほどはありません。。非常にこだわりのある内容なので、100%賛同できる人はいないのではないかと思いますが、バイク乗りならばうなずける部分も結構あります。
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1955年生まれ、芥川賞作家、花村萬月さん、オートバイに魅了された人生。野宿・自炊を基本に(北海道10日間の旅を約4万円で)、北海道から本州、四国、九州と日本全国をオートバイで旅した(1日平均400km)記録。「自由に至る旅 オートバイの魅力・野宿の愉しみ」、2001.6発行。