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物語はとても淡々とした口調で進んでいくのですが、ものすごく重いテーマと、過激な描写があります。正直読み進めていくのが辛かったです。
少女、少年たった一人の力ではどうすることもできない問題がこちらにものしかかってきました。
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「1941年の秋、マリゴールドはぜんぜん咲かなかった」という少女の独白でこの物語は始まる。でも、マリゴールドの鮮烈な黄色い花の色を思い描く間もなく、直後に「マリゴールドが育たないのはピコーラが父親の赤ん坊を宿していたからだと考えていた」と文章は続く。少女が播いた種はひとつも花を咲かせず、少女と同年代の女の子は父親の子をおなかに宿した。
何が正しくて、何が悪くて罪なのか。
少女である今はよくわからない。でも少しずつだけど、それはわかりはじめる。そのときに見た色彩をともなって・・
“弱い者が、より弱い者を虐げる”という差別や貧困の根源的課題は、当時の黒人社会でも根強く根を張り、虐げられた“弱者”としての黒人が、自分より弱い立場の同じ黒人を虐待するという内容で、DV、児童虐待、性的暴行が主要なテーマとして出てくる。私達はその痛々しく禍々しい内容に、時には生理的嫌悪も生じるかもしれない。
でも安心してほしい。作者は、黒人の悲惨な状況を並べて読者の同情を得ようというような、安っぽい作家ではない。女性として、黒人として、また新進作家として、自分の感性のアンテナをフル稼働し、少女を語り部とすることで無邪気な視点を交じえ、また、季節や田舎の風景描写を多くするなどで、人間たちの陰惨な行為だけで物語が染まらないように配慮されている。
冒頭に書いた花の色を想起させる描写もそのひとつだと思うし、昆虫の緑色、レモネードの黄色、そして黒や白といった肌の色の描写につながる豊かな色彩感覚が、最後に“The Bluest Eye”(誰よりも青い眼)という表現を、強烈に読者の心に写すようになっている。
もちろん非黒人である日本人の多くにも読んでほしい作品。10代の日本人の女の子も、この作品から多くの大切なことが得られるから。
(2009/8/31)
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他者に押し付けられた価値観や美的感覚ではなく、自分自身の美しさや価値を信じることができる社会にならないと、本書のピコーラのような悲しい若者が作り出されてしまう。日本人も、モンゴロイドの美しさよりも白人や黒人の体型や顔立ちになりたいと願う少女たちは少なくない。もっといろいろな美しさが並存して認められる社会であってほしいと思う。
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読了後に残る、いくつものどうすることもできなさ…。誰よりも青い眼をした少女を静かに見つめることしか出来ない。
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「秘密にしていたけれど、一九四一年の秋、マリーゴールドはぜんぜん咲かなかった。」
最初の一文にドキッとする。“秘密にしていたけれど”というなんとも仄暗い書き出し。その不吉な予感は正しく、明るい話とは決して言えない、心にズシンと重石を残してくるような物語だった。
人種差別が浮き彫りになる前のアメリカ。荒んだ家庭環境に身を置き、学校でもいじめにあう黒人の少女。青い眼があれば、「あんなにきれいな眼の前じゃ悪いことはできないね」と、周りも態度を変化させるのではないかと考え、毎日祈りを捧げるようになる。青い眼にしてくださいと。
そんな彼女に悲劇が襲いかかる。実の父から強姦され、父の子を身ごもるのである。
こんなことは許されない、決して許されないのだけど、その父の幼少時代まで丁寧に描くことで、一体何が悪で、価値基準とはなんなのかと、わたしの中の色んなものがぐにゃりと歪む。
美醜の判断は、いつからできるようになるんだろう。なんで幼い女の子はピンクを好み、おままごとをするのだろう。インターネットの普及で、太った女性が好まれていた地域でも欧米的な美を求められるようになったという話を聞いた。自分の好き嫌いは情報に操作されているのか。目に見えない「世間」に同調しているのか。幼い子どもも判断基準を「間違わない」なら、もはや洗脳ではないか。
物語の中で、黒人の男の子がピコーラに「黒んぼやーい 黒んぼやーい おまえのおやじは裸で眠る」といじめるシーンがある。「おまえのかあちゃんでべそ」並みに、どうしようもないいじめ方だ。そして、裕福で、かわいい黒人の女の子モーリーンが、ピコーラをいじめるシーンのなんと口惜しいことか。黒人間でも差別があることを、初めて知った。そして、知らなかった自分を恥ずかしいと思った。
「青い眼がほしい」という少女の切実な願いに怒りを感じる牧師(エセ)。結局は彼が彼女の精神を崩壊させる引き金になってしまうのだけど、彼の怒りはまっとうだと思う。
つらいけど読んでよかった本。
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誰よりも青い眼にしてください、と黒人の少女ピコーラは祈った。そうしたら、みんなが私を愛してくれるかもしれないから。
自らの価値に気づかず、無邪気にあこがれを抱くだけのピコーラに悲劇は起きた。
《本書裏表紙あらすじから抜粋》
たまたま本屋さんでタイトルに目がとまり、読んでおきたいと思い購入した。
トニ・モリスンという作家を知らなかったのだが、1993年にノーベル賞受賞したアメリカ生まれの作家だ。本書はデビュー作。
全編を通してピコーラを描いて進む物語なのだが、フリーダやクローディア姉妹など、章ごとに中心に描かれる人物が異なるため、読みにくさを感じることもあると思う。
黒人の少女の日常が綴られ、文章の端々から黒人の人々の貧しく、偏見と差別の伴う生活が窺える。
あからさまに暴力を受けるといったものではなく、黒人は白人とは異なり、同等に扱われないことが常態化され、誰も違和感がない。そこにアメリカの人種差別の根深さと、問題が深刻で完全に差別を無くすことの困難さを感じる。
ピコーラたち作品に登場する少女は、初潮を迎える頃の最も不安定で多感な年頃だ。
傷つきやすく、一度ついた傷を生涯背負ってしまいかねない年頃のピコーラに起きることが残酷すぎる。
読後、暫く胸が詰まり言葉も出なかった。
何がどう違っていたなら、ピコーラはこんなことにならなかったのだろう。
きっとその答えはないのだ。
ひとりの少女がどうにか出来ることではなかったのだ。
とても重い気持ちになるが、何も出来ないのなら、せめて読んで何かを考えたい。
何かを考えても何も変わらないけれど、また読み返し、また何かを考える。
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被差別者たちの中の差別や、目を背けたくなるようなコミュニティ内部の醜いやりとりを描きながらも、それを痛烈な言葉で告発するのではなく、「どうしてこの人はこうなってしまったのか」をきちんと描くことで物語に豊かさを持たせる事に成功している。
とても悲劇的な話には違いないのだが。
不思議と不快なだけでは終わらないのは、加虐者の生い立ちにまできちんと目配せを欠かさない作家の優しさ?丁寧さ?を感じるからだろうか。
実は、職場の女の子が「あーあたしも外人に生まれたかったな、足長くて金髪で鼻高くて」って言ってたのを聞いて衝撃を受け、読み始めたこの本(笑)。
得るものは大きかったです。
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黒人差別を描いた作品は何作か読んで来た。概ね、白人による
黒人差別を描き、壮絶なリンチの様子や家畜以下の扱いをされ
た時代と、公民権運動で権利を勝ち取る時代を綴った作品が
多かった。
本書も黒人差別を扱った作品である。しかし、これまで読んで来た
作品と趣を異にしている。白人から差別される黒人同士であっても、
より貧しき者、より弱い者が、同じ肌の色を持った人々から差別さ
れるのだ。
本書の主な語り手は黒人少女のクローディア。クローディアには理解
出来ないことがある。みなが欲しがる「可愛い人形」は、何故青い眼を
して、黄色の髪をしているのか。
美の基準。それは白人社会の価値観に他ならない。クローディアは
黒人の少女。だから、人形に自分を投影することが出来ないし、
可愛がることも出来ない。
しかし、クローディアの友人ピコーラは青い眼に憧れていた。「誰より
も青い眼を下さい」とピコーラは願う。そうすれば、誰も私をないがし
ろにしたり、苛めたりしないだろうから。
そんなピコーラに悲劇が訪れる。実父による暴行の末、ピコーラは
妊娠する。えぐられるように傷ついた心はますます浮遊する。
「もし自分に白い肌やブロンドの髪の毛、誰よりも青い眼があれば、
どんなに世界は素敵なものに変わるだろう」
ピコーラは現実の世界の境界を踏み出し、自分は誰よりも青い眼を
持っている世界へ行ってしまう。
みな、貧しさの中で生きている。ピコーラだけではなく、彼女を犯した
実父でさえも切ない過去を背負っている。
誰もピコーラを傷つけようとして傷つけた訳ではない。知らず知らずに
一番弱い者をどん底へ落としてしまう。
重層化した差別の構造を、小説で描き出した作品は人の心の弱さと
美の基準を考えさせてくれる。
多分、多くの日本人の美の基準も欧米基準なのだろうなと思う。私
自身もそうだから。そんな価値観を考え直す機会を本書から得た。
ただ、久し振りの小説だったので誰が誰を語っているのかを把握する
のに戸惑ったのと、原書の文章自体が私には合っていないかもしれ
ないが翻訳が読み難かったのが残念だ。
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深く考えさせられる本だった。あらゆる差別から起こる悲劇をひとつの事例を通して描いているように思った。アメリカを理解する助けになる小説。
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大学の授業のために読みました。
黒人の少女が白人に憧れ、その結果黒人の少女が狂ってしまう話。
読んでいてかなり辛い描写が多かったです。
アメリカ中西部が舞台になっているだけあって、
その当時のアメリカを色濃く映しているなと感じました。
今となっては、差別はダメだという考え方が一般的で常識になっていますが、
そうでなかった時代もある、今があるのはこういう差別を受けた方々の努力があってこそだということを理解できる作品だと思います。
本書の一文にある、
「白人の眼のなかに嫌悪でふちどられた空白を創りだしたもの、その原因となるものは、彼女が黒人だという事実だった。」
なんて悲しくて、恐ろしくて、辛い事実なんだろうと、
ただ肌の色が違うだけで存在も認められないなんて、
と。
この作品は、
黒人差別をした白人を責めるようなことはかいておらず、
ただ淡々と事実を述べる形式で進められます。
このことがより一層、どの差別反対を表現した作品よりも心に響いた理由かなと思いました。
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アメリカにおける白人から虐げられる黒人の生活及び黒人同士のヒエラルキーによる差別も書かれていて、物語の多くの部分の語り手は、まだ未熟な少女なので余計に人間の生々しさが際立つ。
ピコーラがなぜ青い目を欲しがったのかはよくわからなかった。
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作家の西加奈子さんが、影響を受けた一冊ということでご紹介されていたので読んでみました。
翻訳された文章ということも原因の1つかも知れませんが、
大きな話の流れはわかるものの、細かい描写みたいなところになると結構イメージを掴むのが難しく、自分の読解レベルではどっぷりとは入り込めませんでした。
また読み解くこともそうですが、読んで感じたことを言葉で掬い上げることも難しい作品といえるかもしれません。
「暗い話」「かわいそうな話」というような目の粗い言葉では、零れ落ちてしまうものが余りにも多過ぎる作品だと思います。
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青い眼になればもっと愛される。そう信じる少女ピコーラに理不尽で辛い事が起こります。最初から最後まで、その時代のアメリカの人種差別や人々の価値観について深く考えさせられる小説。
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ピコーラの少女時代は痛ましい。やりきれない気持ちになるが、周りの人間も皆やりきれない何かを持ってる。人種に関係なくこういう環境はあると想像できる分、他人事ではない気持ちになる。それでも時代は1962年。63年がキング牧師のワシントン大行進という大変革の真っただ中に書かれた作品。刷り込まれた価値観とひとりの少女。簡単に感想を持ってはいけないような気がするほど考えさせられる。多くの人に読み継がれていってほしい。
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青い眼がほしいー状況がリアルに描かれていて読みごたえがあります。
描写はとても伝わりやすくて、リアルに描かれている。