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紙の本
日本人の志とは何か
2002/11/15 10:56
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投稿者:1975の男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
盆暮れ正月、家族で帰省するのは都会に暮らす日本人の常だろうが、祖父の代から東京に暮らす私には経験がなかった。幼いころ、夏休みになると極端に遊び仲間が減ることに、いささか退屈な気分だったと記憶している。にもかかわらず、「兎追いしかの山」ではじまる唱歌「ふるさと」はしっかりと脳裏に刻まれているから不思議だ。この唱歌の魔力と、その歌の誕生の謎に迫ったのが本書である。
本書によれば「ふるさと」は、信州を飛び出し国文学者となった高野辰之が歌詞を書き、岡山のキリスト教会で思春期を過ごした作曲家岡野貞一が曲を創った。国定教科書策定という国策を遂行するスタッフとして、ふたりは東京で無造作に出会い、「ふるさと」のほかにも「朧月夜」や「紅葉」を手がけていく。日本は近代国家として急激に離陸の速度をあげ、膨張を始めていた。共通の「国民意識教育」が必要だった。
たしかに唱歌は日本の近代国家形成の産物だったのだろう。だが、ふたりが匿名で残した作品群は彼らの生きざまを色濃く映しこんでいた。だからこそ「官製品」という制約をもちつつも、幾世代も歌い継がれる響きを持ちえたのだ、と筆者はみる。「志を果たして、いつの日にか帰らん」という歌詞と郷愁を誘うメロディーに、刻み込まれた思いを彼らの生涯から読み取るのである。
いま、先行きの見えないこの国の現状をみるにつけ、日本人の「志」とはどこへ向かうべきなのか。自らを省みるとき、「唱歌誕生」は多くのヒントを与えてくれるだろう。
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