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紙の本
数値流体力学の良い入門書
2001/09/01 18:38
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投稿者:橋本公太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在、コンピュータの発達により、計算科学が、実験、理論に続く方法として認められてきている。特に、水や空気のような流体の運動を扱う流体力学においては、数値流体力学と呼ばれる計算科学の役割が大きい。本書は、数値流体力学によって得られた最新の成果を、大変わかりやすく示している。
第1章は、数値流体力学をわかりやすく解説している。流体の運動は、連続の式(流体の質量保存を表す式)、ナビエ−ストーク方程式(流体に加わる力によって流体がどのような運動をするかを記述した式)、エネルギー保存の式の三つの式によって支配されている。このうち、ナビエ−ストーク方程式は、非線形性を持つ偏微分方程式であり、解析的には解くことができないとのことだ。そこで、ナビエ−ストーク方程式を連立一次方程式に近似し、これをコンピュータによって計算して求めるのが数値流体力学だと説明してある。
第2章以降は、数値流体力学を用いた研究の例が示されている。例えば、第3章では、カルマン渦による共振が示されている。カルマン渦とは、流れのなかにある円柱の周りにできる渦のことであり、強風で電線がピューと鳴るのもこれが原因だと言う。一秒間にできるカルマン渦の数は、流速と円柱の直径で決まるとのことだ。一方で、円柱は、ある周期で力を加えると振動が大きくなる、共振とという現象がおこる。従って、流れの中の円柱がカルマン渦によってある周期で力を受け、その周期が共振がおこる周期と一致すると、円柱の振動が大きくなってしまうのだ。1995年の高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故も、温度計を入れるためにナトリウムの流れの中に突き出された管が、カルマン渦によって共振(インライン振動)が起こり、破壊されたのが原因だと示してある。
本書には、CGムービーおよび簡単なプログラムが入ったCD−ROMが付してある。CGムービーは、スーパーコンピュータによる計算結果を視覚的に示しており、面白い。プログラムの方は、自分で数値を変えることにより、計算結果の変化が体験できるようになっている。CD−ROMはWindows 98, Me, 2000に対応しており、CPUはCeleron でもムービー、プログラムとも快適に動いた。
どの章もわかりやすく書かれており、また、「格子ボルツマン法」などの新しい計算手法も説明されている。バランスの取れた、数値流体力学の良い入門書である。
<目次>
第1章 数値流体力学とはなにか?
流れの科学と数値シミュレーションの基礎
第2章 飛行機はなぜ飛ぶことができるのか?
シミュレーションで学ぶ翼まわりの流れ
第3章 カルマン渦列の謎に迫る
円柱構造物のインライン振動
第4章 流れをリアルタイムで可視化する
正方キャビティ内部の非圧縮性流れ
第5章 流れを粒子で表現する
粒子法によるシミュレーション
第6章 洪水や津波の動きを予測する
水面変形の三次元解析
第7章 格子ボルツマン法による数値シミュレーション
新しい数値解析法の試み
第8章 5000万年間で地球の内部はどう動いたか?
マントル対流のシミュレーション
第9章 地下鉄駅構内を吹き抜ける風
有限要素法による大規模並列計算
<関連書>
『魔球を作る』(姫野龍太郎著、岩波書店、2000.7)
『身近な流体力学』(パリティ編集委員会編、丸善、2000.11)
『Excelで学ぶ流体力学』(森下悦生著、丸善、2000.3)
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