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暗号解読 ロゼッタストーンから量子暗号まで みんなのレビュー
- サイモン・シン (著), 青木 薫 (訳)
- 税込価格:2,860円(26pt)
- 出版社:新潮社
- 発行年月:2001.7
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紙の本
まあ、何も言わず読んでみてください
2002/02/13 01:28
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たーさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はノンフィクションである。しかし、凡百のフィクションを寄せつけないほどドラマティックである。
解読不能とされた暗号も、いつしか解読される。数学的に不可能とされたものでさえ、である。完璧ではありえない人間が取り扱う限り、避けられないことなのだ。そこに、ドラマが生まれる。
暗号の物語は、「作成側」と「解読側」の応酬である。タイトルのとおり、本書のドラマは「解読側」を中心に進められる。ところが、終盤になると突然、「作成側」にドラマが移る。これが意味することは…あとは、まあ、読んでみてください。これ以上言うのは無粋というものです。
翻訳本であることを感じさせない日本語訳はお見事。暗号の実例説明は難しい部分もあるが、必ずわかりやすい「たとえ」でフォローされているところが心憎い。
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暗号作成者と暗号解読者の絶えざる闘い。
2003/06/19 23:09
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作の『フェルマーの最終定理』は、肝心要のフェルマーの最終定理はチンプンカンプンだったが、ピュタゴラスからガロア、オイラー、そして日本人の2人の数学者からワイルズによる解明にいたるまでの数奇な運命というのか、歴史ドラマがとても興味深く読むことができた。
内容は平易で知的エンタテインメントにあふれているが、決してレベルダウンしていない。このアンビヴァレントを本書でも作者は前作以上に遺憾無く発揮してくれる。
暗号というと、ミステリーや戦争の情報戦などをまっさきに思い浮かべるが、身近なところでもひじょうに重要な役割を果たしている。その一例が、インターネットショッピングである。クレジットカード決済の際に、SSLというセキュリティ技術を用い、暗号化することで送信時にカード情報の漏洩を防いでいるとか。
いかに暗号は作成され、いかに暗号は解読されたのか。それが「テクノロジーの発展を加速させた」。人間の叡智に感服させられると同時に、エンドレスで繰り広げられるイタチごっこに一抹のはかなさを感じてしまった。
あ、やっぱり、専門的なことはわかりせん。しかし、暗号の発達史には、作者の才が光っている。暗号が破られ、「エリザベス女王暗殺を企てたと告発され」断頭台に消えたスコットランド女王メアリーのエピソード。ここで作者は「弱い暗号を使うぐらいなら、最初から暗号など使わない方がましだ」と手厳しく述べている。
19世紀末、マルコーニが無線通信を発明したことにより、暗号の持つ軍事的価値が着目され、「より信頼性の高い暗号」が急務となった。そこで新たな暗号機が開発された。ドイツが開発したエニグマ暗号機をめぐる解読に至るまでの連合国の必死の取り組み(そういえば、インターネットも元はといえば軍用に開発されたものだった)。
第二次世界大戦、アメリカはナヴァホ族の言語を暗号に使用し、その通信の機密性を高めようとした。要するに、ナヴァホ語を話せる人間はきわめて少なく、解読されにくいと。「ナヴァホ暗号が難攻不落だったのは、ナヴァホ語がアジアやヨーロッパのどの言語ともつながりを持たない」からだ。
ご存知、シャンポリオンが解明したロゼッタストーンと、そこに刻まれたヒエログラフ。コンピュータの発展に伴う高度情報化社会の中での暗号。特にインターネット時代のバックボーンとも言うべき公開鍵暗号が生まれるまでのエピソード。いずれも「へぇ」と言うことばかり。でも、これがTVの特番になると、つまんなくなる、なぜ? 文字の方が映像よりも強くイマジネーションを刺激するからなのかな。
最後に、未来の暗号として量子暗号を取り上げている。作者曰く「量子コンピューターの巨大な力に対抗して、プライバシーを回復してくれる暗号システムを作ろうというのである」「それは永遠の安全を保証してくれる完全無欠の暗号システムなのだ」。だが、これまで「完全無欠の暗号システム」といわれたものは、すべて解読されてきた。さて、あなたは、どう思われるだろう。
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世界の裏には常に暗号がある
2001/11/07 19:52
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:某亜 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学・高校時代、世界史を学んだ人は多いだろう。私もその一人である。しかし、どうも各々の事項が断片的に感じてしまう。歴史の筋を実感できずに終わった人が多いのではないだろうか。
まさかこの問題が「暗号」という観点から解決されるとは思ってもみなかった。暗号の作成・解読抗争という視点から見ると、それまでバラバラだった歴史的事実がものの見事につながるのである。この感動は読んだ者にしかわからない。
もちろんここには歴史のすべてが書かれているわけではないが、すべての歴史に暗号ありということを悟るには十分である。暗号の歴史、現在、そして未来。世界をまた新たな視点から見させてくれる。
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文明としての暗号
2001/09/18 20:00
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投稿者:雲呼庵 - この投稿者のレビュー一覧を見る
Uボートの跳梁を可能たらしめたドイツ軍のエニグマ暗号に対し、連合国は解読に精力を注いだ。サイモン・シンは、「恐怖こそは暗号解読の主たる駆動力であり、逆境こそはそれを支える基盤なのかもしれない。」とし、「必要が発明の母だとすれば、逆境は暗号解読の母なのかもしれない。」と暗号解読に向かう人間の心情と境遇を示す。そしてこの時代に『暗号解読』に変化が起きた。「何世紀ものあいだ、暗号解読者としてもっとも有望なのは言語構造の専門家だとされていた。しかし、機械がつくるエニグマ暗号を解読できるのは、むしろ科学畑の人間ではないかと考えたのである。」数学者の登用であった。「独創的な暗号解読者は『頭脳の柔術という離れ業をやってのけるために、日々、闇の霊と親しく交わらざるをえない』のである。」と、数学の神秘をも説く。更にシンは、歴史家デイヴィッド・カーンの言を引いて「(エニグマの解読は)人命を救った。連合国の人命だけでなく、戦争終結が早まったおかげでドイツ、イタリア、日本の人命をも救ったのである。世界はこの点について暗号解読者たちに恩がある。」と暗号解読が果たした歴史への作用を確認している。もちろん歴史は現在も進行している。シンは「デジタル革命の遂行と、暗号の必要性を訴えることに」情熱を傾けたフィル・ジマーマンの著述を抜粋する。「かつて暗号は、日常生活にほとんど関わりのない、姿の見えない科学だった。しかし、情報化時代において暗号を語ることは、政治権力、とくに政府と人民との力関係を語ることなのだ。それはプライバシーの権利、言論の自由、政治結社の自由、出版の自由、理由なき取り調べや逮捕からの自由、他人に干渉されない自由に関わる問題なのである。」こうなると、懐古物語ではない。私たち自身の生活に関わる社会問題だ。既に様々な国家が、強力な暗号手段を国民が手にすることに圧力をかけている。公開鍵暗号RSAの発明者の一人であるロン・リヴェストの言が紹介される。「犯罪者が悪用するかもしれないからといって、特定のテクノロジーをすべての人に対して禁止するなどというのは実にお寒い政策だ。強盗は指紋を残さないように手袋をはめるかもしれないが、合衆国市民は自由に手袋を買うことができる。手袋が手を保護するテクノロジーであるように、暗号はデータを保護するテクノロジーなのだ。手袋がわれわれの手を、切り傷、ひっかき傷、火傷、凍傷、細菌感染から守ってくれるように、暗号はわれわれのデータを、ハッカー、企業スパイ、ペテン師から守ってくれる。手袋はFBIの指紋分析官を困らせ、暗号はFBIの盗聴を妨害するだろう。暗号と手袋はどちらも安価でどこででも入手できる。実際、ちゃんとした暗号ソフトをダウンロードする費用は、ちゃんとした手袋の値段よりも安いほどなのだ。」現在の強固なデジタル暗号の成果と課題だ。シンの考察は続く。ハイゼンベルクの不確定性原理から説きはじめ、量子暗号の確立に目を向ける。「考察下の対象のあらゆる側面を知ることは原理的にできない」とハイゼンベルクに言わしめた量子の不確定な振る舞いを、暗号技術に用いる研究が進められているという。つとに知られる思考実験『シュレーディンガーの猫』の逸話も披露し、「箱の中の猫は生死二つの状態を重ね合わせた状態にある」という量子論の概念を示す。難解だが興味深い『暗号』の世界だ。
「しかしシンの才能は、高度な内容をわかりやすく説き明かすだけにとどまらない。より素晴らしいのは『そこに感動がある』ことだ。暗号の歴史を描くにはいろいろなアプローチがありうるだろう。軍事にフォーカスすることも、数学にフォーカスすることもできよう。しかしサイモン・シンは、人間の営みということにぴたりと焦点を合わせた」(「訳者(青木薫)あとがき」)。
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知らない間に暗号社会で暮らしているあなたへ
2001/09/17 00:03
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投稿者:フォックス - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近、よく聞く「公開鍵暗号」。何度、丁寧に説明してもらっても「?」だったのに、この本を読んで完璧に理解できた。そのかわり、公開鍵暗号へ辿り着くのに古代ローマの暗号から暗号が進化してきた過程を知らなければならない。しかし、この過程もまた楽しく飽きさせないのがこの筆者の凄いところである。
本書は、コンピュータのデータセキュリティ技術と古代ローマの単純な暗号が基本となる考え方の上では変わっていないことを教えてくれている。
ちりばめられたエピソードはどれも興味深く、それぞれの暗号の説明はどれも分かりやすい。翻訳もすばらしいと思います。是非日本語版で楽しまれることをお勧めします。
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暗号の軍拡競争と前進進化−−その行方は?
2001/08/14 11:20
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投稿者:三中信宏 - この投稿者のレビュー一覧を見る
前著『フェルマーの最終定理』の序文の中で,著者サイモン・シンは「数学は実用上さまざまに応用されているが,こと数論に関するかぎり,私の聞いたなかでいちばん面白そうだったのは,暗号解読,音波の干渉を防ぐ障壁の設計,遠方の宇宙船との通信などへの応用だった」(p.13)と述べている.数学のなかでも,とりわけ数論は一般人には無縁の世界だが,シンの『フェルマーの最終定理』は,数論最大の「未登攀絶壁」が1993年にワイルズによって征服されるまでの道程をいきいきと描いてみせた.
さて,今回訳された新著『暗号解読』は,前著に比べると格段に「実生活」に密着している.とりわけ,インターネットでのセキュリティーとかメール暗号化が切迫した問題とみなされてきた現在では,本書のテーマである暗号をめぐる闘争の歴史−つまり暗号作成者と暗号解読者との凌ぎを削る競い合い−はタイムリーな話題となる.シンは,関係者とのインタビューを交えながら,政治・軍事・機密にかかわる表と裏の情報を駆使して,「暗号」をめぐる人間模様を読者に提供する.
著者は言う:「暗号の発展史には“進化”という言葉がぴったりとあてはまる.それというのも暗号の発展過程は,一種の生存競争と見ることができるからだ」(p.11).この「進化的観点」から,シンは暗号の作成者と解読者との間の軍拡競争の事例を,古くはローマ帝国の時代から,2度の世界大戦における暗号戦争,そして現代にいたるまで広範に収集する.そのお手並みの鮮やかさは前著『フェルマーの最終定理』に通じる.
本書では,随所に「暗号演習」とでもいうべき問題が置かれている.この実習を通じて読者はより深く「暗号の世界」を体感することができるというわけだ(「付録」の懸賞金付き暗号問題は私にはお手上げだが).単純な置き換えや無作為化による暗号化プロセスがどのようにしてより複雑にそしてより難解に「進化」していったのか−本書後半の章ではその極致を見ることができる.たとえば,第3〜4章で取り上げられる【エニグマ】という暗号作成機が第一次世界大戦後にドイツで考案され,それを解読することが長年にわたって連合軍側の軍事上の大問題となった.エニグマの内部構造とその機作の説明は実に詳細にわたる.また,第6章の数論にもとづく「公開鍵暗号」−RSA暗号−の開発までのエピソードは実に興味深い(「発想」こそ重要なのだと再認識する).
暗号をめぐる「軍拡競争」はこのまま果てしなく進むのだろうか−しかし「進化」のアナロジーはここで終わりとなる.最終章(第8章)で,読者は「暗号進化の終焉」を告げられる.来たるべき(もう来ているのかもしれないが)「量子暗号」の出現により,誰にも【原理的】−量子物理学の基本原理−に解明され得ない暗号が登場し,軍拡競争による暗号進化はそこで停止するというのだ.
暗号のもつパワーをどこまで発現させるかについては見解が分かれているようだ(第7章).完全に公開して誰もが自由に暗号を使えるようにすべきだという意見と軍事的・治安的見地からある程度の制限はすべきだという意見との対立である.オウム真理教の文書がすでにRSA暗号化されていること(p.404)を私は本書で初めて知った.
500頁を越える大著だが,充実した読書を楽しむことができるだろう.
【目次】
はじめに 10
第1章 スコットランド女王メアリーの暗号 17
第2章 解読不能の暗号 77
第3章 暗号機の誕生 146
第4章 エニグマの解読 198
第5章 言葉の壁 260
第6章 アリスとボブは鍵を公開する 324
第7章 プリティー・グッド・プライバシー 389
第8章 未来への量子ジャンプ 420
付録 暗号に挑戦−一万ポンドへの十段階 464
補遺 467
謝辞 486
訳者あとがき 490
[付録 暗号に挑戦 問題][i-xvi]