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紙の本

この機会に多くの人が、彼の小説や戯曲に関心を持ってくれればと思う

2001/10/02 22:17

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投稿者:安原顕 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ぼくは2000年7月、『畸人・怪人伝』(双葉社)という本を出した。雑誌『鳩よ!』に連載したもので、画家ダリ夫人ガラ、役者にして画家アントナン・アルトー、作家にして思想家ジョルジュ・バタイユ、大金持のホモ作家レイモン・ルーセルの4人まで書いてきたら雑誌がリニューアルとなり、打ち切られた。
 レーモン・ルーセル(1877〜1933)は13歳の時、国立音楽院のピアノ科に入るが、結局は作家の道を選び、詩、小説、戯曲などを書く。しかしそれらの単行本はすべて自費出版だった。彼はシュルレアリストらに高く評価されはしたが、自身は、この運動に何の興味も示さなかった。1920年、彼は世界旅行に出かけ、日本にも立ち寄るが、その印象記は何も残されていない。彼は芝居にも熱中し、自作の小説『アフリカの印象』『ロクス・ソルス』を劇化するが大失敗。しかし懲りずに小説『新アフリカの印象』の執筆を中断してまで戯曲『額の星』を書く。内容は観客のウケを狙ったジュール・ヴェルヌ風のプロット、前二作時のようなオブジェこそ使わなかったが、宝石や動物の剥製などを舞台に乗せもした。1924年5月の上演時、またしても罵声の嵐だったが、ロベール・デスノスのように絶賛した詩人もいた。『額の星』の失敗は舞台装置の貧弱さからだと考えたルーセルは、次の『無数の太陽』では装置を大掛かりなものにし、2年後の26年2月、マチネーは、劇場側に通常の倍額を支払い、役者にも破格の出演料を出したが、「著者はちとっとも気が狂っておらず、退屈すらさせてくれなかった」「あれじゃあ、ミュージック・ホールの演し物と、さして変わらないじゃないか」と、これまで支援し続けたシュルレアリストらにも酷評される。彼は同性愛を隠すためデュフレーヌと偽装結婚していたが、それやこれやの出費のために破産、それを苦にしてか、デュフレーヌを連れてパレルモのホテルに行き、そこで自殺する。享年56歳だった。1989年、偶然、倉庫から大量の草稿が見つかり、それらを含めた『新全集』がポーヴェール社から出た。この二つの芝居、当然、読みたいと思ったが、作品としても傑作とは言い難いらしく、売れる筈もないため、日本語で読めるとは考えもしなかった。ところが今回思いがけず人文書院が刊行してくれた。ルーセル・ファンのぼくはとても興味深く読んだが、この機会に多くの人が、彼の小説や戯曲に関心を持ってくれればと思う。全国の図書館は、是非購入して欲しい。

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2018/05/23 14:41

投稿元:ブクログ

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