紙の本
お得な一冊
2002/05/16 10:56
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投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
あんまり詳しく書けないので困ってしまうのですが、とても技巧的で凝った作品「花の旅 夜の旅」と、以前に一度読んでいて、強烈な内容なのであらすじもほとんど覚えていたのですが、それでも飽きることなく再読でき、結末での衝撃は弱まることのなかった「聖女の島」の二つの長編が収録されています。
妖しく怖く、美しく官能的な皆川博子の濃密な世界が広がり、ミステリとしても一級品の二作品が一度に楽しめる、とってもお得な一冊です。
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扶桑文庫で、「昭和ミステリ秘宝」と銘打ったシリーズを出しているものの1冊。いい作品なのに、絶版になってしまったものをなんとかしてくれるというありがたいシリーズ。
お陰で、「聖女の島」読めました<感涙
「花の旅夜の旅」と「聖女の島」との中編2本のミステリー。
どちらも技巧的な目くらましがあって、さすが皆川博子だ、上手いもんだと思う。「死の泉」からはいった読者にとっても、多分ミステリー色が強いと感じるだろし、他の推理小説からはいった読者にとっても、ファンタジー色が強すぎると感じるだろう。
と、かくと中途半端な印象を受けるかもしれないが、ミステリーとファンタジーのボーダーでしっかり立つというのは、皆川博子にしかできないことかもしれない。
ともあれ、「聖女の島」だ。
有栖川有栖川の「作家の犯行現場」で軍艦島を舞台にした小説と紹介され、絶版になっていると書かれていた時のショックときたら…。
でも、こうやって復刊(?)され読めるのだから、復刊ドッドコムなどの地道な活動の成果なのかもしれない。って、よくわかんないけど。
廃墟の島、軍艦島に女子矯正施設が作られ…という、この設定だけで薄ら寒い。
最初、これの舞台を軍艦島にしたのは無理があったのではないかと感じた。それほどあの島の荒廃はすさまじい。あれは他をまったく寄せ付けない、なにもかも拒否する島だ。
が、最後にはそのマイナスのエネルギーとも思える島の影を、包み込み昇華していくのだ。
全く、すごい。
軍艦島マニアなので、ちょろちょろ読んでますが、軍艦島舞台小説のベストは、
この「聖女の島」と恩田陸の「Puzzle」だと思う。
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「花の旅 夜の旅」と「聖女の島」というふたつの長編が収録されていたけれど、このふたつだったら花の旅~の方が好きだった。
完璧に好みの問題なのであれだけども、作中作が好きというのと終盤に向かうにつれて読み進める手の止まらなくなる感覚が強かったのは花の旅~。
作中作では人形の出てくる綺麗で歪んだ話だった第一話とモデルの少年を愛した画家の出てくる第五話が好きだった。
■概略
新人賞を受賞後、作家としては芽の出なかった鏡直弘のもとに、ある旅行雑誌の編集者から連続小説の依頼が舞い込んだ。花の名所を題材としたグラビア「花の旅」に小説を添えるというその企画に張り切って取り組んだ鏡は、撮影班の取材旅行に同行するのだが……。
作家自身の覚え書と作中作を交互に配置して驚愕の物語を紡ぎあげて見せる幻の初期傑作「花の旅 夜の旅」、皆川ミステリの再興策とも呼び声も高い、甘美且つトリッキーな恐怖小説「聖女の島」。
現代最高の語り部・皆川博子の、まさに完璧な二長篇を一挙に掲載。
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『花の旅 夜の旅』は、こんがらがってしまいそうなくらいに話の糸がたくさんあって、それがあるときに繋がって・・・という感じが楽しかった。
雑誌に掲載された文章なのか、実際の動きの描写なのか、混同してしまったりして、翻弄された。
『聖女の島』は、廃墟の密集した島で非行少女達を社会へ返すべく大人たちが四苦八苦している施設が舞台という非現実的な設定。
現実と切望と空想との境界線が曖昧になって、出られる筈の島から出られないように、出口のない話だった。
個人的には後者の方が好みで、自分と重なる部分があって、凹んだ。
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読み始めると間もなく…特有の幽閉される妖かしの世界空間へ、、。でも読み進めた時は流れていて、、"カチッ"とスイッチが入ったかの様に、完全無欠のミステリー謎解き仕上げの二編。お見事です♪。
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大傑作「死の泉」の、あの強烈な読書体験をもう一度求めて皆川博子沼に足を踏み入れんとする人が最初に手に取るべき書。
作中作、語り手が変わることで揺れる真実、幽玄と耽美、善意という名の悪意、少女の毒などなど、「死の泉」で外連味たっぷりに繰り広げられる皆川博子的要素が、ここに収められた2編でまた味わえます。
「死の泉」以降の作品は、風呂敷を広げてたまま終わってしまいますが、この2編は見事に畳んであります。背筋が凍るほど見事に。これこそ皆川博子を読む醍醐味。やめられません(笑)。