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モーツァルト・ピアノソナタ 形式の分析による演奏の手引き みんなのレビュー
- ヨセフ・ブロッホ (共著), 中村 菊子 (共著), 木幡 律子 (共著)
- 税込価格:1,760円(16pt)
- 出版社:全音楽譜出版社
- 発行年月:2001.7
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紙の本
モーツァルトとの関わり方において
2005/08/31 15:59
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:RinMusic - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジュリアード音楽院のピアノ科主任教授ヨセフ・ブロッホによる楽曲分析シリーズの一冊。第一章はモーツァルトの生涯におけるピアノソナタの作曲過程、第二章は彼のピアノソナタにおける音楽形式、第三章は各ピアノソナタの分析に充てられている。本書を一読すれば、モーツァルトが「ソナタ」に開いた形式というのは、実に平易なものであることに気づく。著者は大きく九種類の形式に分類し、<ソナタ形式の原則は調性の関係に基づく>という見解も添えている。
しかし、形式の分析がモーツァルトの天才さを語る決定打にはまったくなり得ない。エドウィン・フィッシャーは<「こころで感じとる」…これこそモーツァルトの音楽世界の核心に通ずるかくれた扉をひらく合言葉だ。だが、「感じとる」こと、つまり体験というものは、一朝一夕にして成熟するものではない。だからわれわれは、われわれの誰でもがよく似た過程を繰りかえすところの或る種の成長の終結点に到達して、ようやくモーツァルトを真に理解しうるに至るのである>(『音楽を愛する友へ』p.42)と言っているが、では私たちのモーツァルト理解に至る過程での共通要素は何なのかを考える。モーツァルトの音楽は、聖書を読むこととプロセスが似ている。つまり、聖なる物としての物質を離れた反照、その「簡素美」(著者ブロッホの言うところの形式の簡素さ)が音楽の三要素(旋律、和声、拍節)の躍動の中に描き出されて、色合いや私たちの印象の変化を通して、精神的な論理の中で展開される。技術と機械化の発達を遂げた今日、モーツァルトを楽曲様式の展開で、その天才を説明してしまおうという嫌いがある(故に、あまりにも多くの書物が氾濫している)。学習者にとって形式の把握は絶対的だが、論理や形式が精神を先行するモーツァルト音楽は、翼をもがれた予言の天使に過ぎない。モーツァルトの簡素さの中には、実に説明できない多くの謎が潜んでいる。それを完全に解明することはできないし、無理な解明は悲惨な脱線を呼び起こす危険性も孕んでいる。そのことを肝に銘じて、モーツァルトとよい友人にならなければならないと思う。
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