投稿元:
レビューを見る
待古庵を営む古物商の今川は、明慧寺の僧・小坂了稔より「世に出る事は有り得ぬ神品」を手放したいと書簡で伝えられ、箱根の仙石楼へ来ていた。そこで待ちぼうけを食らった今川は、久遠寺翁と出会い、宿の庭で『成長しない迷子』と噂される振袖を着た少女を一緒に目撃した。
中禅寺敦子は、飯窪、鳥口と共に明慧寺の取材する為に仙石楼を訪れる。
仙石楼に宿泊する彼ら一同は、宿の庭で、座ったままの状態で死んでいる僧を発見する。その死体は彼らの前に突如として現れたのだった。そして死んだ僧は今川が待ち続けていた了稔その人であった。
一方、関口は京極堂に誘われ、彼もまた箱根の富士見屋という名の宿に滞在することとなる。
埋没した蔵の中にある蔵書の鑑定仕事を引き受けた京極堂は宿には殆ど寄り付かず、関口は所在無さげに時を過ごす。そんな中、鳥口が来訪し事件を聞いた彼は仙石楼へと赴く。
仙石楼に宿泊する彼らに嫌疑がかけられる中、久遠寺翁によって呼び出された榎木津は事件のあらましを解決する。引き続き事件を依頼される榎木津。京極堂は事件に深入りするなと忠告を投げたまま、蔵の蔵書の鑑定に没頭し続けていた。
そして彼らは京極堂ですら知りえなかった寺、明慧寺へと足を踏み入れるのだった。
この小説を仮に一言で片付けるなら、物凄く勉強になります。という感じ(笑)
しかし、当然の如く一言で片付けられないのが京極著。
複雑なのは事件本体よりも、事件背景という感じかな。上手く言い表せないが、どういう手段で殺害したのかや、どうやってアリバイ工作したのかというダイレクトに見える部分では無く、その周りにある何か。それを追わされるので、犯人が誰なのかというところまで頭が走らない。むしろ犯人なんてどうでもいいやのノリ。(推理小説として読むのならこういう読み方は問題ですけど:笑)
で、その背景(若しくは何か)を出来るだけ熟知しないと事件の真相が見えないあるいは納得しない。まぁ、これは作者の常套手段(つまり、京極堂の薀蓄をある程度理解しないと面白みが無くなるという意)ですが、今回のそれは理解しずらいし、かなり難しい。
というのも、題材が禅だから。
判りやすく噛み砕いて説明してありますが、それでも難しいと感じた。禅に全く興味が沸かない人はこれを読むのはかなり苦痛かと。
私個人は、禅の成り立ちから今に至るまでの辺りは特に面白く読みましたし、全く知らない世界だったので興味深かったですけれどね。
凝った密室殺人がゴロゴロ出てくるのでもわけでも無いので、事件そのものは、かなりシンプル。
ターゲットを犯人探しにのみに絞って読むのならば、おそらく誰が犯人なのかは看破できるのでは。まぁ、私は全く判りませんでしたけど(笑)
今回はネタバレ書きたくても書けないというのが本音かな。
部分や要所を切り取っても、事件の真相に直結しないという感じがするから。
強いて言えば、姑獲鳥で登場したとある人が絡んでるという程度。
立て続けに読んで、記憶が鮮明に残っていたのでこの辺りのリンクは楽しかったです。「あの人がこんなところにぃぃぃ!!」と言う感じでかなり悦りました。
京極堂シリーズの人間関係の絡み方は良いですね。魍魎で伊佐間が土産を持ってくる程度で書かれてたのが、狂骨では事件関係者の1人になってゆくという絡み方ですね。これは読者サービスというかツボを付いているというか(笑)私の予想では、今川がこの後の作品のどこかに絡んでくるのでは、と思ってますが。むしろ絡めて欲しい。
タイトルと内容がばっちりなのは今までと同様。
檻も鼠も事件と絡めた使い方を色々してるという事ですね。
その中でも鼠を用いて事件解決後に一服の清涼剤的に和ませる使い方をした落とし方が私好みでした。(笑)
長いついでにもう一つ。
今回、後半のとあるシーンが物凄く心に残りました。自分でも良く判らないが、このシーンを読んだ瞬間にどういう訳かここが一番のおいしいところ(若しくは見せ場、若しくは京極堂がカコイイ所)と判断してしまった。
ある事柄が絡んでいるので前後は割愛しますが、
*******************************
「四大分離して何処へと去る?」
「何処へも行かず!」
京極堂がそう答えた。
*******************************
という場面。
別に京極堂が憑き物落としをしてる場面じゃないのですけれどね(笑)
1210p〜1213p(文庫本)にこの問いがどこから来てるのかが明記されてますが、
これは、兜率三關(関)<とうそつのさんかん>からの部分引用。
原文の書いてる意味が全くわからないから思わず調べました兜率三關を。ネットってありがたいです(笑)
兜率和尚が、学者に3つの質問をしたらしいです。(注:私個人の勝手な解釈なので鵜呑みにしないように)
1.色々なものの中で生きてゆく私達。その中であなたは何をして生きたいのか?
2.自分がしっかり判ったのなら、生死も迷わない。今この場でどうやって死ねる?
3.生死を越えればゆく先は知っている。じゃあ、どこに行く?
という感じかなぁ。
で、この三番目にあたる部分を京極堂は問われたわけですな。どこへ行くんだ?と。
で、間髪いれず答えたのが「何処へも行かず!」
ぼんやりと、判ったような判らないような感覚なんですが、この回答は凄いのではないかと。
まぁ、禅の問答なんてこれっぽっちも判らない無いので単なる勝手な思い込み&戯言ですけれど(笑)
何にしても今回の作品の中で一番心に残ったのはこの場面でした。
投稿元:
レビューを見る
「京極堂」シリーズでもっともお気に入りの1冊。事件解明に向かう前の、京極堂と榎木津の会話にしびれましたなぁ。
投稿元:
レビューを見る
京極シリーズに感じる、最大のネックは「出だしが単調」な所。それを最も感じてしまったのがこの作品。
始めの200頁位は本当に単調なので、読むのにとても時間が掛かります。
単調の儘「京極の独壇場」に入ってしまうと、益々読むペースは下がる一方。
しかしココも大部分がその後の「伏線」に成っているので、勿論読まない訳にはいかずに頑張り所な訳です。
辛い坂道の後には、吸い込まれるほどな下り坂が待っています。
ジェットコースター小説ってのは、京極作品の様な物を言うのだろう。
投稿元:
レビューを見る
あまりの分厚さから、『二度と読むことはないであろうから一度で熟読してやろう』と、固く決意をしてから読んだ記憶がある。
京極氏の取り上げるテーマは、いずれも取材や世界構築に多くの時間を費やしてあると推測され、作品を読みながらそれらテーマを理解したり考察したりすることが出来る。
この分厚さから、『ミステリの本質には関係ない部分で厚みを増しているのだろう』と考えた輩も少なからず存在すると思うが、本作の『無駄』は決して『蛇足』などではなく、『必要最小限』を『最大限』に盛り込んだ『結果』なのだろうと考えられる。
投稿元:
レビューを見る
京極堂シリーズ第四弾「鉄鼠の檻」シリーズ最大の難事件!
京極堂、結界に囚わる。
今度は禅が絡んできますよ!ちょっと難しいけど読み応えたっぷり。
投稿元:
レビューを見る
舞台が広範にわたり登場人物が奔走した魍魎の匣と違い、この作品ではお寺という世間的にも閉じたイメージの場所を舞台にしていて、会話が重要な位置を占めている。特に、「禅」という馴染みのないものを一般的に分かりやすく噛み砕いて説明しているので、これを読むと仏教が少し身近に感じられるはず。そして、その禅という概念を犯罪の一要素として物語に導入し成功している京極夏彦の手腕にまたうならされる。前回重要な役割で登場した木場は今回は登場しないものの、他のメンバーは軒並揃い、これ以後レギュラーメンバーとなる益田もこの作品で登場している
投稿元:
レビューを見る
めくってもめくっても坊主ばっかり小説。まさに日本屈指の坊主めくり小説。マンガならファンシーダンスが筆頭ですが。
投稿元:
レビューを見る
ここまで来ると、本の分厚さは鬼化してきます。
なのに頁数に反比例するかのように、
この、何とも言えず妖麗で繊美な世界は、飽く事無く私を魅了し続け、
読み終えてしまう事が、至極残念でならなかったことを憶えています。
音を立てること、呼吸をすることすら憚られる。
私を素晴らしい未知の世界に連れてゆくこの著者が、特別な存在と成り得る確信をしました。
投稿元:
レビューを見る
こんな分厚い本なのに・・・読み始めたら 抜け出したくても抜け出せないんですよね・・・京極作品は・・・
投稿元:
レビューを見る
単行本の方持ってるのに何故、文庫版も持ってるかと言うと。
如何やら、単行本と文庫本では多少、記述に違いが見られるそう。てなわけで買っちゃいました。装丁の限界に挑戦か?ってな程厚い。ブックカバーなんてはまるわけない。重い。面白い。坊さんラヴ。
投稿元:
レビューを見る
妖怪シリーズ第4弾。前回に続きこれも長かったです。が、これは導入部にすんなりは入れたので、すごく読みやすかったです。今回は敦子ちゃんが大活躍。また、京極堂と関口文士の奥さん達が出てきて、前回に比べると華やかな感じです。明慧寺の謎は最後のどんでん返しまですごくおもしろかったです。禅のお話もおもしろかった。前回の心理学の話はどうも受け付けませんでしたが……。犯人は怪しい人(たくさんいますが)が、犯人でした。けっこう、その人が犯人でいいんだ〜とか思ってしまいました(笑)京極堂の憑き物落としは相変わらず見事です。榎さんの神っぷりは相変わらずすごいです。大爆笑しますよ。
2003/1/18
投稿元:
レビューを見る
雪の降り積もる季節、京極堂と関口と2人の細君が行く旅先で起こる不思議な事件。
仏教関連の薀蓄が多くて読むのは大変ですが、普段余り触れることのない自分の宗教に触れるのは良い機会ではないでしょうか。
恋愛の形はやはり限りなく尊敬に近いものなのか?と坊さんたちの愛憎劇を見て思った。
投稿元:
レビューを見る
この作家は別格!!優れた人間心理描写・抜群の論理展開でかかれた推理小説。ただしページ数・文字数ともに激しく多いので時間に余裕があるときに是非☆全作繋がりがありその第4作。
投稿元:
レビューを見る
雪が降る”存在しない”寺院で起こる不可思議な事件。悟りの極地を京極堂が切り開く、京極シリーズ第四弾!
宗教に深い話で本当に難しかったのですが、一気に読んでしまいしました・・・(汗)犯人にマジ泣きしたのは、絶対に私だけではないはずっ・・!
投稿元:
レビューを見る
禅や悟りというものをミステリにもってきた作品。1300ページをほぼ一気に読ませる筆力と説得力はさすがですわ。独特の世界観と、にもかかわらず不思議なものなど何もないと言い切り、科学も肯定する。◆特に憑き物落としと呼ばれる謎解きのシーンが面白い。人が取り憑かれている妄想を論理立てて解説し、多くの人間が理解できるものにまで解体して落としてしまう。それはカウンセリングだったり、論破することだったりするので、読んでいる方も半分意味が分からずとも爽快である。見せ場として機能している上に、場にいる人間が無意識に発言するであろうことまで仕掛けとして利用するので、無駄なショーとしてのイメージは少ない。◆まったく、年に一度、神社に行く可能性のある正月に、京極堂シリーズは最適である。