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島村利正全集 第1巻 1940−1957 みんなのレビュー

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紙の本

未知谷の快挙

2001/10/02 22:17

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:安原顕 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 『結城信一全集』(全三巻)に続く、未知谷の快挙だ。いつだったか堀江敏幸に会った折、結城信一ファンの彼は、「三万円出して買いました」と言っていた。ぼくも、気になる作家ゆえ、一応買ったが、いまいち波長が合わず、まだ四、五編しか読んでいないが、いずれ本誌で紹介するつもりではいる。島村利正は多少知っている作家なので買う気でいたら、未知谷の社主飯島徹さんに『第一巻』を贈呈された。島村利正をなぜ知っているのか。担当ではなかったが1970年代、文芸誌『海』で定期的に短篇小説を依頼していたため、大日本印刷の出張校正室で挨拶をし、校正の必要上、『海』の短篇はすべて読んでいたからだ。『新潮日本文学辞典』によれば、島村利正(1912〜81)は長野県生まれ。少年の頃、家を出て奈良の古美術商兼写真出版社飛鳥園の小川晴暘(せいよう)のもとで美術写真を修行。その頃、志賀直哉と瀧井孝作も識って師事。処女作は、『第一巻』の巻頭に置かれた長篇、多摩川の砂利採掘の朝鮮人労働者をモチーフにした『高麗人』(こまびと)(昭和16年)で、芥川賞候補にもなる。この頃より繊維業界の統制団体に籍を置き、後に二冊目の短篇集『残菊抄』(これまた芥川賞候補)に収録された短篇を書き継ぎ、第三作はさらに15年後の『奈良登大路町』(昭和47年)である。本『全集』は、各巻に「小説」と「随想」が収録されているが、『第一巻』には、長篇『高麗人』と短篇集『残菊抄』(昭和32年)の全15篇と随想36篇が入っている。これで一万円とは実に安い! 随想の最後に、『残菊抄』の「あとがき」もあり、本短篇集は太宰治の処女作同様、浅見淵の薦めで世に出たようだ。浅見淵はぼくの高校時代の国語の教師、文芸部部長として親しくしてもらったが、授業中や部活で、こうした文壇裏話、出たことはなかった。『残菊抄』(三笠書房)は、志賀直哉の序、瀧井孝作の題字で上梓されたが、その序が『全集』の「栞」に再録されている。「(略)私は戦争中、島村君に色々と世話になつた。島村君の郷里、信州高遠の寺に十五畳の座敷を借りて貰ひ、東京の家が焼けたら行くつもりで、夏冬一ト通りの衣類と寝具を疎開させて置いた。又、狛江の島村君の住ひの方にも板倉の二階一杯に荷物を預かつて貰ひ、その他にも食料の事などで随分世話になつた。島村君はさういふ事を快くしてくれた。あの頃のとげ  した人情の中で、さういふ親切は私には心理的にも大きな慰めとなつた。(略)島村君のかういふ人柄は一貫して、どの作品にも恐らく出てゐると思ふ。戦後、度強い小説の多い中に島村君のしんみりとした静かな作品は、また、その特徴ゆゑに読者から喜ばれるのではないかと思つてゐる」。「残菊抄」は荷車に菊の花を乗せて売り歩く、おちかの物語、男に騙されて子までなす薄幸女の悲話である。そして時代背景は大震災と、昭和20年3月の東京大空襲を置いてもいる。つまり、この短篇に限っては、「しんみりとした静かな作品」とばかりは言いきれぬのだ。『結城信一全集』と『島村利正全集』、全国の図書館は、必ずや仕入れて欲しい。

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