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うたたね みんなのレビュー
- 川内 倫子 (写真・構成)
- 税込価格:3,300円(30pt)
- 出版社:リトル・モア
- 発行年月:2001.10
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紙の本
うたたね
2004/06/24 00:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:大阪の星 - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんでこんな写真が撮れるのだろう。
別の言い方をすれば、「この写真家は、なんて素敵な眼差しを持っているんだ!」。
いきなり三部昨と銘打って発表された、川内倫子の写真集のvol.1がこの『うたたね』である。ローライという中判カメラで撮影された真四角の画面、こうしかなかったのだと思わせられるような切り取りの妙。どの写真も唾を飲み込めなくなるくらい、見ている私の動きを止める。そこにはまるで瞬間が永遠に閉じ込められているようだ。
人であり、他の生物であり、或いは物ですらあったりするのだが、そのどれもが持てるエネルギーがはちきれんばかりに見える。どんなものにも、こんな風に猛々しく私達をハッとさせる瞬間がある。ある日のミシンの上下する動き、ある日の光に照らされ浮き出る手の血管、ある日の洗濯槽。
それらに固有の名前は無いが、だからこそ多くの人の周囲にも流れる物語であろう。川内倫子はそんな瞬間を丁寧に切り取っている。
命がはみ出た瞬間とでも言うべき光景とそれを包む柔らかい視線。
私は、初めて本屋でこの本を見た時しばらく放心し、そのままレジへ持っていった。ここに写された高まりは、同時に終わりの始まりを意味しているようにも思う。飲み込まれた水は誰かのエネルギーとなり、扇風機の吹いた風はやがて大気に溶けてゆくだろう。
日々私達は、様々な場所でそんな場面に出くわしているはずだ。
そこに、こんな美しさを見つけてみせた写真家の眼差しに、本を開く度に私は固まってしまうのだ。
紙の本
死んでしまうということ
2002/05/31 11:07
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投稿者:鼠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
帯の「死んでしまうということ」というコピーが印象的でした。しかし、同時に「生きているということ」も伝わってくる力強い写真集でした。やわらかく、ぼわぼわしていて、光をふんだんに取り入れた、白っぽい画面は、とても儚くて、これが生きているということなんだなあと感じました。
紙の本
現実と幻想のはざま
2002/03/05 09:56
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投稿者:初音いづみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
川内倫子の写真は朝の匂いがする。最初に見た写真がどんなモノを撮った写真だったのか、忘れてしまったのだけど、その印象は強く残っている。朝、太陽が完全に地上を照らす直前、夜と昼の間のようなほんの一瞬。澄んだ空気に薄く朝靄がかかって、空気が凛と張り詰めたようなそんな一瞬。これから一日が始まる予感がする。ひんやりとした空気の匂い。川内さんの写真を見ていると、そんな匂いを思い出す。
淡い色合いなのに甘くない。幻想的でありながらリアル。妙に生々しい。その生々しさが逆に作り物のような印象を見る人に与える。現実と幻想のはざまを印画紙に焼きつける。不思議な写真たち。
道ばたのたんぽぽ。死んだハト。夜空に広がる花火。死んだハチ。空中を乱舞する海鳥。水面に群がるコイ。写真家の視線はさまざまなものに向けられている。
植物や自然を写し取った作品には、なんとも言えない、自然の美しさ、凛々しさのようなものを感じる。みんな精一杯生きているんだ、というような。なぜそんな風に感じるのか不思議なのだけど。きっと、撮っている人が、被写体に、共鳴しながら撮影しているのかもしれない。
紙の本
2001/12/16朝刊
2002/01/28 18:16
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投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
97年からフリーで活動を始めた若手写真家の最初の写真集。エッセーと言おうか、写真日記と言おうか。日常生活の一こま一こまを、低く、優しい視線で切り取っている。何の変哲もないグラスと水が光り輝いてみえる。スプーンにすくいあげられたタピオカの粒も、目玉焼きも路傍の草花も、写真家の目を通過して確実に変化する。
一瞬の輝きの向こうにはかなさを、そして死を感じさせるところに、この写真家の特徴がある。うたたねのように平たんな時間の地続きに潜む死。ページをめくるにつれ、そんな物語が立ちのぼってくる。花火で夜景をとらえた『花火』、障害者の日々の暮らしを追った『花子』の2点も同時に刊行された。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001