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すっきり勧善懲悪モノでありつつも、半七の人間に対する人情味あふれる人柄が魅力の第5巻。
江戸時代末が舞台だからこそか、現代人の感覚に非常にマッチしてながらも、半七が敵討ちの手伝いをするというような現代では考えられないストーリーも登場する。
この時代の人々の暮らしぶりや、考え方などが生き生きと描かれており、すっかり江戸が好きになる。いつも同じような形式で書かれているのに飽きがこずに読み続けさせるのがまたすごいところであろう。
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幕末って本当混沌とした世界だったんだろうなぁ。
「御宿かわせみ」でも不穏な雰囲気は伝わってくるけれども、やっぱりといっちゃ、悔しいけれども、あちらは女性が主なので、ちょっと雰囲気が柔らかいというか、桜色というか、全く違ってくるのよね。
半七老人の語り口調が好き。
丁寧で。
語る相手は若い人なのに、バカにしないし、さげすまないし、謙遜して、人間としても尊敬しちゃう。
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シリーズもいよいよ後半まっただなか。この本のシリーズでやっとおぼろげであった江戸の捕り物の上下関係が理解できた。おそまきながら。
江戸の捕り物話ながら、語られているのは明治。半七老人の昔語り。流れがいいです。
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半七捕物帳のレビューとなると毎回毎回、決まり文句のように書いてしまうのが「言葉が美しい」という一点。特に、各作品の冒頭で半七老人が江戸の昔を思い出しながら話す口調がとても流麗で、本筋に入るためのイントロであるにもかかわらず、その部分だけを何度か読み返したくなることもしばしばあります。役者の口上のようでもあり、落語家の枕のようでもあり。半七の、ひいては作者である岡本綺堂の知識の深さ、言葉の巧みさに魅了されてしまいます。
推理小説として読むにあたっては、一連の「半七捕物帳」シリーズの初期のものに比べて、かなり推理が難しくなってきています。初期の作品は、難しいながらも何とか推理の糸口を掴めることがあったのですが、この本に収められている作品については全くと言っていいほど推理ができませんでした。かと言って興が削がれるということはなく、半七の閃きや心意気に大いに魅せられる部分が多々あり、江戸の美しさや混沌とした様子、今は知る由もない習俗を楽しめることも合わせて、読んで損はない充実の作品となっています。
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芝居好きの半七親分……ということは著者がそうで、「河豚太鼓」で子分の弥助のことを、「千本桜」から鮓屋という綽名が付けられたと書いている。義太夫語りの落語に親しんでいなければ、何のことか判らなかったろう。「幽霊の観世物」では江戸の小屋掛けのルールが知れて面白い。当時はお化け屋敷で人間が脅かすのはダメだったなんて。「菊人形の昔」「蟹のお角」は連作短編となって、お角のやり手ぶりに慄然とした。しかし、白洲での取調べで写真が決め手になるのも幕末ならではのことだ。