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仕事のなかの曖昧な不安 揺れる若年の現在 みんなのレビュー
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紙の本
フリーターもパラサイトシングルも中高年が若者から仕事を奪っている結果
2004/08/09 11:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:金之助 - この投稿者のレビュー一覧を見る
超氷河期と言われた時代に就職活動をして、希望とは違う会社にようやく採用されたものの、その後、転職もフリーターもニートも経験した自分にとっては、「あなたが悪いわけではないんですよ」と言ってくれたようで、とても気が楽になりました。
「ずっと頑張っているのにどうして自分はこうダメ人間なんだ」と自信をなくしているので、私のような者には「頑張るな」というメッセージは、その意味がよく届いてきました。
ただ、「社会のシステムが悪い」と言っていても幸せにはなれない、ということにもしっかり目を向けさせられます。
著者が言うように「頑張る」と言ったり考えたりすることをやめてみようとすると途端に難しくなります。「〜をする」「〜をしよう」と具体的なことを考えなくてはいけなくなるので。
働くことについてのぼんやりとした不安感を、安易に「頑張る」という言葉を使って隠そうとしていた自分に気付きました。
現在の厳しい若年者の雇用状況や労働環境をなんとか打開させようという、著者の熱い気持ちもよく伝わる好著だと思います。
紙の本
生に迷いを感じている人やこれからの人生を真剣に考えたい人向けの本です。
2002/07/19 18:08
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投稿者:クリハ - この投稿者のレビュー一覧を見る
何故、現在若者に仕事がないのか? フリーター達はいったいどうすればいいのか? 独立して会社を起こすために重要なことは? 転職を成功させるために重要なこととは? 本当に現在の若者は働く気持ちがないという理由だけでフリーターになっているのだろうか?
現在の社会情勢と自分の関係を見つめ直し、これからの自分の進路を考えるのにうってつけの本。自分自身の人生戦略を立てるための資料として是非購入をお勧めします。人生に迷いを感じている人やこれからの人生を真剣に考えたい人向けの本です。
紙の本
貴重な示唆に富む論考。しかし、著者の提示する「処方箋」は有害かも。
2002/02/22 12:23
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投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、各種の書評やネット上で高い評価を受けている。これらの評では、評価のポイントとして、「自分のボスになる=独立」や「転職におけるつかず離れずの友の重要性」という若年失業問題への処方箋が挙げられている。
僕自身も本書自体は高く評価したいと思う。ただし、評価のポイントは全く違う。
僕が本書から読み取って、驚愕しているのは、この国の労働供給力が根っこから浸食されきているという事実の指摘の方だ。広義の失業者に占める比率の著しく低い中高年(大卒)ホワイトカラーの失業をどうこういっている間に、2050年には労働可能人口の半分が働かない(働けない)社会になってしまうというのである。それどころか、既にこの国には「働いていない=働く機会を与えられない」人が4000万人もいるというのである。
社会保障改革の議論が実を結ぶことなく「ウィーン会議」状態になっている昨今、このような明瞭なデータ及び分析例を突きつけられると、実はこんな改革論議は既に手遅れになっているのではないかいという気がしてしまう。良くここまで労働基盤が浸食されている国で社会保障制度が維持されているもんだと思う。
さて、本書で分析されているような深刻な事態に陥っているこの国の「若年失業問題」に対し、各般に評価されている本書後半部分の処方箋は有効なのだろうか。そうは思えない。
「自分のボスになる=独立」や「つかず離れずの友の確保」などという「甘言」は、屍の山だけを創り出し、そして今でも作り続けているベンチャー礼賛論を彷彿とさせ、本書の価値を下げているだけだ。心情的には理解できなくもないが、やはりこんな処方箋は、ことの本質を隠蔽し、問題解決への歩みを停止させてしまう欺瞞だ。
著者自身が第5章で分析しているように、問題の本質は「労働市場の二重構造」であり、その格差が近年拡大していることなのであれば、問題への対処法は自ずと明らかなはずだ。そして、著者は本書の中でこの点についても記述している。
「働く環境を改善し、ひいては生産性の向上を実現するには、中高年に対して手厚く与えられている既得権益を打破しなければ、ダメだろう。中高年の働き方を見直し、働く意識が弱くなったと、いつも片付けられてしまう若者にこそ、働く機会を確保すること。それが、本当の社会的公正なのである」(p.65)。
僕にとっての本書の評価ポイントは、この実は皆が漠然と気付いているはずの対処法を説得的に展開した点である。この点だけで、本書を繙く価値は十分である。かえって、先の「独立の進め」的な処方箋の提示により、この真っ当な対処法の効果がないように解されてしまうことが懸念され、本書にとっては有害なのではないだろうか。
紙の本
雇用の世代間格差を浮き彫りに
2002/02/21 21:21
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投稿者:基山健 - この投稿者のレビュー一覧を見る
…多くの中高年がリストラで解雇されている。再就職しようにも年齢制限にひっかかって就職先がない。住宅ローンや子どもの教育費は重くのしかかってくる。耐え切れず自殺してしまう人もいる。一方、若者は、卒業後フリーターになったり、正社員として就職した者でも、仕事で少しでもいやなことがあると簡単にやめてしまう。いつまでも親にパラサイトしていい生活を送っており、なかなか結婚もしない。…
大失業時代と言われる現在、世間の一般的な認識とはこんなところだろうか。総じて中高年はたいへんであり、若者はこのような時代にも関わらずふらふらしている、というイメージがあるように思われる。
本書はその常識が誤っていることを各種のデータを詳細に検証することによって明らかにし、現在の日本の労働が置かれている状況を鮮明に描いている。特に、若者の現状について、若者の意識のみにその原因をおく言説が蔓延する中で、本書の持つ意義は大変大きい。
失業率の上昇と言うが、実際には誰が失業しているのか。本書はまず、大卒の中高年の失業者はそれほど多くなく、25歳未満の中卒、高卒の失業者が多いことを統計から明らかにする。さらに著者は、若い人の中には、あまりに仕事が見つからないため、職探しをあきらめ、就職活動をしていない人も多いことを問題視している。このような人々は非労働力とみなされ、失業者にカウントされないのである。
また、フリーターの増加が喧伝されるが、若者は必ずしも好んでフリーターを選択しているわけではない。正社員として働きたいと思っている若者はむしろ増えつつあり、就職口がなかったからフリーターになる者が多いのだ。就職してもやめてしまう人が多いのは、就職機会が少ない中では、自分に適していない仕事に就かざるを得ないミスマッチが生じやすく、それが転職に追いやっている、と説明できる。「若者は個人の明確な意識にもとづきフリーターを選んでいるというよりも、本人が自覚していない社会や経済のシステムによって知らずしらずのうちに選択させられている」(73頁)のである。
では、若者を失業やフリーターの状態に追いやっている要因は何なのか。著者は中高年の雇用を最優先するさまざまなシステムであると指摘している。
若者の雇用機会が減っている仕組みはこうだ。企業は高度成長期に大量の若者を採用したため、今では過剰な中高年を抱えることになった。しかも彼らは年功賃金で現在非常に高い賃金水準にある。しかし解雇規制があるため彼らを解雇することはできない。となると人件費抑制のためには新規採用を手控えざるを得ず、若者の就業機会は奪われる。
また、「パラサイト・シングル」については、山田昌弘が「豊かな親という既得権に依存し、その既得権を手放そうとしない」(山田昌弘『パラサイト・シングルの時代』188頁)としていることに対して、「むしろ社会から『既得権』を与えられている中高年に、若者が『パラサイト』している」(63頁)と述べている。
最近では、定年を延長、廃止して高齢者の能力を活用しようとする動きがあるが、これによってますます若年失業率が上昇することを著者は懸念する。今のように解雇規制が厳しいまま、定年という雇用の自然減をなくし「定年延長だけを見切り発車することは、すでに雇われている人々の雇用確保にはつながるものの、若年を中心に新規採用の抑制をよりいっそう深刻化させる可能性がある」(112頁)ということである。
さて、雇用をめぐる状況がこのようなものであると理解した上で、この時代をどう生きたらよいのであろうか。著者はとりあえず「頑張る」「忙しい」「普通は」といった「仕事にまつわる曖昧な表現」を使うのをやめ、「自分たちの仕事を自分たちの言葉で語ってみ」よう、と提案している(154頁)。ぼんやりとした不安が渦巻く今の状況に流されないためには大切なことであろう。
紙の本
いつの時代も若者には可能性がある
2001/12/25 11:37
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投稿者:荻野勝彦 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在の若年労働を知り、考えるうえで、この本はまことに貴重である。それは何より、この本が若年に対する大いなるシンパシーのもとに、若年の視点に立っていることによる。こうした立場の上にこれだけの実証的な分析と主張が行われている本はこれまでなかっただろう。
この本の1章から4章までは、ごく荒っぽく言ってしまえば、現状の若年の失業や離職、あるいはフリーターの増加などは、景気の悪さと既存の雇用を維持しようとする(さらには60歳台前半の就労を進めようとする)社会構造のせいであって、若年が悪いのではない、ということを言うために費やされる。これは、人事担当の実務家としての実感にも良く一致している。実際、就職し定着している若年であっても、企業内がいわゆる「上がつかえている」状態になっているせいで、仕事がステップアップしないという問題に直面している。
そういう意味で、4章での「所得格差より仕事格差が問題」という洞察は正鵠を射ていると思う。ただし、仕事格差がもっぱら労働時間だけで論じられていることには不満もある。たしかに若年の長時間労働はそれ自体問題ではあろう。しかし、より問題なのは仕事の中身だからだ。重要性が高く、自分自身の成長にも資する仕事を与えられているのであれば、それは仮に労働時間が長くなったところでむしろ本人は好ましく思うだろう。「下が入ってこない」せいで、雑用のような仕事に忙殺されて長時間労働になるのが最悪である。一方で、中高年にしても、閑職に追いやられて労働時間が短くなっているのであれば、それは決して本人にとって喜ばしい事態ではあるまい。
4章から7章までは、必ずしも若年だけが対象となっている内容ではないが、若年が現状を打破するための方法につながる考察が行われ、8章が全体の結論になっている。一見、4章までの流れからは、最も効果的な解決策は「中高年の解雇や早期引退」ということになりそうだが、さすがにそうはならない。それでは著者の言う「漠然とした不安をどうとらえ、どう冷静にファイトするか」ということへの答にはならないからだ。そこで著者が提示した答は、これまたごく荒っぽく言ってしまえば、ひとつは「自分で自分のボスになる」という意識のもとの「新しいタイプの独立開業」であり、もうひとつはその成功の前提でもある、グラノヴェターらの言う「Weak Ties」の大切さである。
これはいずれも重要なポイントをついているだろう。確かに、著者が示しているように、開業を成功させるには20年以上の仕事の経験があることが望ましく、今の若年者が「新しいタイプの独立開業」に到達する道筋や、そもそも「新しいタイプの独立開業」とはなにか、ということも明らかではない。しかし、「自分で自分のボスになる」ために、自発的に能力開発に取り組むことは、フリーターであってもできる。
こうした「自分で自分のボスになる」若年が増えてくれば、20年後にはおそらく彼ら自身が「新しいタイプの独立開業」とそこへの道筋を見せてくれるだろうという予想には、私も賛同したい。私もまた、若年の力を信じるひとりであるからだ。
著者は、「頑張れ」とか「夢を持て」ということを若年に言いたくないという。同様に、私は「自立」とか「自己責任」とかいうことばをあまり使いたくないと思っている。それ自身はもちろん悪いことではないが、今日的な意味合いでそれを強調することは、健全な依存関係、ひいては(伝統的な共同体意識ではない)ゆるやかに支えあう連帯関係、一種の「Weak Ties」をも否定してしまいかねないからだ。今の社会で必要なことはむしろ、「Weak Ties」が縦横に張り巡らされた、新しい「社会的連帯」を構築することではないかと思う。
紙の本
少し前まで学生だった者の立場から
2004/08/01 00:46
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投稿者:ラミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
就職してまもなく、働くことや生きることについて考えさせられてこの本を読んだ。そういう時期もある。おなじ頃に読んだ本としては他にダニエル・ピンク『フリーエージェント社会の到来』、アルバート=ラズロ・バラバシ『新ネットワーク思考』。全体像などは他の方がすでに書かれているので、少し前まで学生だった者の立場から身近なフリーター問題と、あと“weak ties”という概念について。
著者の玄田有史さんはフリーター問題、若年就業について考える上で重要なことはなによりも「決めつけない」ことだといい、その上で本人の責任以上に社会がフリーターを生みだす仕組みになっているという。
「若者は個人の明確な意識にもとづきフリーターを選んでいるというよりも、本人が自覚していない社会や経済のシステムによって知らずしらずのうちに選択させられている。その根本にあるのが…中高年の雇用維持を最優先するさまざまなシステムである」(P.73・74)
一面的に「今の若者は…」などとはいわない、データの裏付けからくる説得力。その上で、僕個人としてはなぜフリーターなってしまうのか、という理由についてもう一点、一時期に集中しすぎる大企業の新卒採用があると思う。大学生の採用についていえば、業界にもよるけれど、多くは大学3年の2月から大学4年の5月くらいまでの4ヶ月間。これじゃ失敗する奴もいるよな。
(それにこの期間は授業にならないから、教員は「大学教育の崩壊」とかいって迷惑している。外国人の雇用問題とともに、本当に企業の経営者の方は考えてほしい。既卒をもっと採用したっていいじゃないか。大学生で本当に自分の将来や生き方まで考えられて就職している奴は少ないだろうし、そのことは誰よりも企業の経営者や人事担当者が分かっているはずだ)
僕自身の言いたいことを書いてしまったけれど、学歴などの問題を含めて社会の仕組みを大きく決めるものとして、大企業の採用があると思うので。あと、著者は中・高卒まで含めて論じている点を補足しておく。
さて、最初にダニエル・ピンク『フリーエージェント社会の到来』、アルバート=ラズロ・バラバシ『新ネットワーク思考』を同時期に読んだと書いたけれど、これに本書を加えた3冊の本に共通するキーワードは“weak ties”だろう。いつも会う親しい友人との“strong ties”強い紐帯)ではない、まれに会う人との“weak ties”弱い紐帯)。転職をするときなどにプラスに働くという。
「弱い紐帯の役割が強調されるのは、いつも会っている人々からはすでに知っている情報しか得られないが、たまに会う友人は新しい情報源となるからである」(本書P.184)
この3冊の本をよんでからなぜかこの言葉が頭をはなれない。少し大げさかも知れないけれど、僕が生きる上で一つのヒントをあたえられたような気もする。社会科学的に見ても正しい生き方、そんなものがあるとしたら、“weak ties”を多くもつことかもしれない。それが退屈な日常をはなれて新鮮な刺激をもたらし、なによりも生きる上でのセーフティーネットになる。
最後に、僕自身への喝の意味もふくめて、友達にもいるフリーターへ。独立を勧める、著者からのメッセージだ。
「若年雇用問題の将来は、若者が「自分で自分のボスになりたい」と思うかどうかにかかっている」(P.217)